このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

back

HUMANOID〜過去の記憶〜

記憶が無いんだ 小学校の… 僕の記憶は中学からなんだ 僕の名前は斎藤悟史。 追手門学院大学一回生。 ごく普通の大学生… 「おはよう!」 彼女の名前は奥田ますみ。 幼馴染で昔から付き合っている恋人だ。 「どうしたの?」 「今日のレポート徹夜したけど結局終わんなくて。」 眠そうな顔で悟史は言った。 「ははは、わたしは前からやってあったもんねー。よ・ゆ・うー。」 ますみは無邪気に言った。 「ところで、今日の4限終わった後、ひま?」 「ああ。なんで?」 「じゃあ、学友会センターの屋上で待ってて、大事な話があるから。」 「へい、わかりやした。」 「じゃねー☆」 ますみは元気に走っていった。 (元気やなー、あいつは。でも大事な話ってなんだろ) 4限終了後… 「なんじゃい、大事な話って。」 悟史の言葉を聞いてますみはうつむいた。 「えっとね…あのね…その…」 ますみはうつむいたまま、言いづらそうにしていた。 悟史は徹夜明けで眠気最高調でいらついていた。 「早く言えよ、俺はねみーんだよ。もう帰るぞ。」 「…」 悟史が帰ろうとした瞬間ますみの口からかすかに声がした。 「今、なんて…?」 「別れてほしいの。」 悟史の耳にはっきりと入ってきた。 「な、なんで?おれ、なんかしたのか!?なんかしたなら言ってくれよ!!」 悟史はもう壊れていた。 「悟史は悪くないの。わたしの…わたしのせいなの…。 さよなら…。」 ますみは泣きながらその場を去っていった。 悟史はその場に呆然と立っていった。 気がつくと悟史は家の近くのビルの屋上に立っていた。 「ますみがいなくなった。もう俺は生きていてもしかたない。 何のとりえも無い俺だった。唯一の支えがますみだった。 そのますみが俺から離れていった。もう生きる意味など無い…。」 ビルの先に悟史は近づいていった。 「いっそこのまま…」 その瞬間、悟史の頭の中に今の状態と似た映像が浮かんだ。 (この場所は昔見たことがある) 「俺はこの場所に一度も来たことが無い。 けど、この場所!この柵!この高さ!この風景!! すべて見たことがある。 そしてここから飛び降りたことが……ある! なぜだ…?!」 悟史は頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。 「頭が痛い…俺はここに来たことが無いんだ。 でもこの場所は知っている! なぜだーーー!?」 次の瞬間、悟史は暗闇から開放されたかのように全ての記憶が戻った。 「そうだ。俺は死んだんだ。」 悟史は立ち上がった。 「俺が小学6年の時だ。 俺はいじめに耐えられなくて、この場所に来て そして… 飛び降りたんだ…」 悟史はフェンスをつかんだ。 「じゃあこの体はなんなんだ!? 確かに俺の体だ。 俺はあの時生きていたのか。 いや、そんなはずはない。 俺は死んだはずだ。 じゃあ俺はいったい…。」 「とうとう気づいてしまったね。」 悟史が後ろを振り向くとそこには父、母、ますみ、そして科学者らしき人が5名いた。 「わたしは人造人間の研究をしていたのだよ。」 科学者の一人が言った。 「私たちに発明は完璧だった。」 「いや…完璧すぎたのだよ。」 「数々の実験を行った。」 「その実験台として斎藤悟史君、君が候補にあがったのだよ。」 「君は実にいいタイミングで自殺してくれたよ。」 「私たちは君の脳を使い、人造人間に組み込み、実験を行った。」 「動作はこれまでの実験で完全に成功していた。」 「だが、一つだけ今まで成し得なかったものがあったのだよ。」 「そう、感情だよ。」 「喜び、怒り、哀しみ、それが私たちの難題だった。」 「しかし、実験は成功だ。」 「君の親、親友、そして偽りの恋人に協力してもらい、褒められた時の 喜び、貶された時の怒り、ふられたときの哀しみの実験を行った。」 「実験は成功だ。わたしらの造った人造人間は人間そのものだ。」 「私らは神となったのだ。」 科学者はこう言った。 「ちょっと待てよ、俺のどこが人造人間だっていうんだよ。 俺は人間だーーー!!!」 悟史は狂った様に怒り、言った。 「ほう、まだ気づかぬか。お前のその右腕、触わってみろ。」 言われた通り悟史は触わった。 「よし、じゃあ、おもいっきりひっぱるんだ。」 パカッ 腕の皮膚がとれ、中に機械類が…。 「そ、そんな…う、うわーーーーー!!!!」 悟史は発狂した。 「だが、完璧すぎた…。」 「我らは神になってはならんのだ…。」 「悟史君、すまんが停止させてくれ…。」 科学者全員がナイフを持って悟史に近づいて来た。 「い、いやだぁーー、俺はまだ死にたくない!!」 悟史は屋上の柵に背をつけ怯えている。 「悟史、お願い、これ以上母さん達を苦しめないで…。」 両親もナイフを持ち、近づいてきた。そしてますみも…。 「うわーーーー!!」 悟史は泣き叫んだ。 「はい、お疲れさーん。 町内ドッキリでーす。」 見ると後ろにカメラを持った八百屋さんと、ドッキリの立て札を持った町内会長さんがいた。 「?????」 聡史は泣きながら自分に今何が起こっているか分らない顔をしていた。 「ごめんね悟史、町内会長さんがどうしてもっていうから。」 ますみが笑顔で言った。 「ますみ…」 「別れるっていうのも嘘よ…。もう、私が別れるわけ無いじゃない。」 「…」 「悟史君、君の腕をよく見なさい。ほら、シールになっちょるだろ。」 科学者の一人が言った。 「だいたい人造人間なんて私らが造れるわけないだろ。」 「あっかっか、しかし、悟史のあの顔面白かったー。」 父は言った。 「明日さっそくみんなに見せなくっちゃ☆」 ますみが笑って言った。 「わあー、やめてーーー」 悟史は慌てふためいた。 ワッハッハッハ その場は笑いでいっぱいだった。 悟史はなにもかも忘れてその場を楽しんだ。 そう…“じゃあなぜ行ったことの無いあのビルから飛び降りたことが記憶の中にあったのか”ということを…。 「教授、なぜあのようなことを?」 「まだ時は満ちておらぬ…。それまでは静かにしてもらわねば…。」
back

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください