このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

娘よ

娘よ、なぜ微笑んでくれる? 娘よ、なぜ優しくしてくれる? 娘よ、あなたは… 突然彼女はやってきた。 「すみません、居候という形で住まさせてもらいませんか。」 彼女は25歳ぐらいで、勤め先が大阪になり、寮もなく、 生活が苦しいのでアパートなどを借りる金がないそうだ。 しかし、なぜここなんだ? 他にもあるだろうに… 「うわあ、きれいな部屋ですね。」 「いや、ちらかってるよ。」 「料理とかはされるんですか?」 「いや、いつもインスタントかコンビニで…。」 「それではだめですよぉー。栄養が偏ります。 これから毎日作ります。私、料理は好きなんです。」 そう言うと、彼女はスーパーに行った。 なんなんだあの子は… その夜 「あ…まだ名前言ってませんでしたね。 すみません、おっちょこちょいで。 私、城戸麻里と言います。」 「俺は佐々木真之介だ。」 「あの…失礼なことを聞くようですけど、独身ですか…?」 「あ…ああ。昔はいたんだが…。 事故で死んでしまってな。」 「あ…ごめんなさい。知らなかったもので…。」 「いいよ…。 そうか…今日でもう20年か…。 早いものだな…。」 「奥さんが亡くなってから…ですか?」 「ん…ああ…。 結婚してすぐだったな。」 「…」 「あ、これはうまい!」 「そうでしょう?私、肉じゃがだけは誰にも負けない自信があります。」 「お、すごいなあ。 妻も確か肉じゃがだけは誰にも負けないって言ってたな。」 「どんな奥さんだったんですか? あ、いや、言いたくなければいいです。」 「とても明るい人だった。 どんなことがあっても笑って励ましてくれて…。」 「まるで、天使みたい…だったとか?うふふ。」 「ははは、まあそこまではいかんけど、 俺にとってとても大切な人だった。」 「どういう事故だったんですか?」 「道路を無理に渡ろうとして…。 俺の目の前で…車にひかれて…。」 「…」 「いや、暗い話になってしまったな。 なんか明るい話をしよう。」 「…あ、そ、そうですね。 何か聞きたいことでもあります?」 「そうだな…誰か好きな人とかいるかい?」 「ふふ、定番ですね。 いますよ。 彼、すごい真面目で、私のためになんでもしてくれるんですよ。 時には一緒に喜んでくれたり、 時には励ましてくれたり…。 まあ、そういうところが好きなんですけどね。」 「へえ。俺みたいなやつだな。」 「あら、それは自分で言ってはだめですよ。」 「はは、そうだな。これじゃ、俺はかっこつけてるみたいだ。」 「あ、味噌汁が冷めますよ。 早く食べましょう。」 「おう、すっかり話してしまって…。 …ん、うまい。」 「ありがとうございます。」 「そういえば、久しぶりだな、手料理というものを食べるのは。」 その夜、二人は遅くまで話していた。 二人はそれからどんどん仲が深まり、 お互いかけがえのない存在となっていった。 そして、真之介は再婚を決意し始めた。 「こんなに年が離れていてもいいものだろうか。」 真之介はそう考えていた。 ある日、真之介が朝起きると、 横で寝ているはずの麻里の姿がなかった。 真之介は不安がとてつもなく湧き上がってきた。 「もう、会えないのではないか。」 真之介は家の中を捜し回っても麻里の姿がないので、 町中を捜し回った。 寒い雪の日だった。 「麻里!!麻里!!」 真之介は叫んだ。 結局夜まで見つからず、家に帰ることにした。 家の近くまで来ると、家に明りが点いているのが見えた。 真之介は麻里が帰ってると思い、走った。 家のドアを開けると、そこには麻里の姿があった。 ハァ…ハァ… 走ったので真之介の息が荒かった。 「おかえりなさい ずっと待っていましたよ。」 「ただいま… 美香…」 数日後、家の前で凍死している真之介の姿を近くの人が見つけた。
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