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STORY.2

ロイエ達は魔王を倒すため、そしてメーサを助けるためレビンを離れ魔王城へ向かった。 魔王城は北の小島にある。 この小島は不思議な魔力に覆われており、船でいくと海に呑み込まれ、飛行船で行くと墜落するという。 したがって、ここに行くには小島に住んでいた人を探し、ムーブロケ(場所移動の魔法)で行くしかない。 ちなみにロイエ達の中に小島に住んでいた者、ムーブロケの使える者はいない… ロイエ達はとりあえず小島に住んでいた者を捜すことにした。 …が、なかなかそう簡単に見つかるものでもなかった。 とりあえずレビンの村に泊まることにした。 「いないものやなあ。」 ギフが疲れきった声で言った。 「まあ、魔王城のあるところだもんね。」 「…ごめんなさい、私のせいで。」 部屋の端でミナが言った。 「そうや、みーんなおまえのせいや。おまえがちゃーんとメーサを守っとかへんからや。」 ギフがソファーに座り、責めるようにミナに言った。 「…ごめんなさい……」 ミナはそう言って宿から出ていった。 「ミナ!」 ロイエはミナを追いかけて行った。 「さっきのはひどいんじゃないか。」 「あー?だってそうやないか。メーサは戦い慣れてなかったんやで。 ミナが守りながら戦うのが当然やろ。 なんでもミナは一部隊をメーサにまかしたそうやないか。」 そう言ったギフの目が座っていた。 「むう、しかし…」 エイベスは下を向いて言った。 「ロイエが一番そう思ってるで 恋人を捕られたんやからな。」 ミナは山の上の一本杉のところにいた。 悔しそうに泣きながら杉を叩いていた。 「ミナ…」 ロイエの声を聞いてミナははっと振り返った。 ミナの泣き顔が月の光に照らされて、とても趣き深く(?)、美しかった。 「本当にごめんなさい…わたしのせいで」 ミナは俯きながら言った。 「いや、いいんだよ。こればっかしは誰のせいでもないんだよ…」 ロイエはほとんど泣きそうな声で言った。 「でもわたしが注意していたら、メーサさんはさらわれずにすんだわ。」 ミナは自己嫌悪に陥っていた。 「…」 「そうよ、私が悪いのよ。」 「もういい…これ以上言うな。」 「わたしはどうなってもよかったのよ。あの時、私が盾になって逃げれば良かったのよ。」 「やめろ…」 「私なんか死んでもよかった。とにかくメーサさんを…」 パシーン ロイエはミナの頬を叩いた。 そして、ミナの両頬を持って恐い顔で言った。 「自分が死んでもいいなんて二度と言うなよ。 メーサがさらわれても助かる可能性はあるが、ミナ、お前が死んだらもう帰ってこんのだぞ。 二度と俺達に会えないんだ。 そうなったら、俺達の気持ちはどうなる? 仲間の俺達の気持ちはどうなる? いいか、二度とそんなこと言うなよ。言ったら本気で殴るぞ!」 「私が死んでも誰も悲しまないわ…」 ミナは泣き顔をそらした。 ロイエはミナの顔を再度自分のほうに向けて言った。 「そばにいるよ。俺達が…。ミナ、頼むからこれ以上俺を悲しませないでくれ。いいか、絶対死ぬなよ…」 「……うん」 翌夜 今日は月が出てなく、空には星が輝いている。満天の夜空だ。 その星の光でうっすらと明るい。 しかし、ロイエ達はそんなものは関係なく暗かった。 ギフが頭を手でぐしゃぐしゃにして言った。 「あーもー腹立つのう。おい、エイベス!お前の知り合いにムーブロケ使える奴はおらんのかいな。」 ギフは座っているベットに手を叩きつけてエイベスのほうを向いた。 「…まあ、いるにはいるんだが…」 エイベスは少し嫌そうに言った。 「なんやおるんかいな、おるんやったらはよ言えや。よっしゃ、明日早速行くで。」 ギフは元気よく立ち上がった。 「ええー!?」 エイベスすごく嫌そう。 「なんや、文句あんのか。」 ギフはエイベスを睨み付けた。 「…ないです。」 エイベスはしかたなさそうに寝室に向かった。 ロイエとミナはただ黙ってギフに従うだけだった。 「よーし、これであとは小島に住んどったもんを捜すだけやな、なあロイエ。」 「…はあ」 「ミナも、な。」 「…ええ」 「なんや、二人ともなんか変やぞ。」 それはお前のせいだと言いたくても言えないロイエとミナだった。 ギフは寝室に向かった。 部屋は二部屋とっており、エイベスとギフ、ロイエとミナの部屋のペアで部屋に入った。 翌日、ムーブロケを使えるというエイベスの知り合いに会いにインベンションの街に向かった。 インベンションの街… レビンの村のちょうど北にある発明の街。 数々の兵器はここで発明された。 そう、人殺しの道具である兵器を… また、ここには海に面しており、漁業が盛んである。 鮭、鮪、鯨、蟹などいろいろな魚介類がとれ、ここらへんの魚料理屋はどこもおいしいと評判である。 ただ、たまに漁師が帰って来ない時があるらしい。 噂では人魚や幽霊船のせいだとか… 「さーて、そのムーブロケを使えるってーのはどこにおるんや、んー?」 ギフは恐い目でエイベスを睨み付けている。 ロイエやミナも早くしろーっていう目で見ている。 「…こっちだよ」 エイベスの言う通りに向かった。 通りにはいろんな魚屋さんが並んでいて店の人はうるさく叫んでいる。 「ここだ」 そこには立派な教会が建っていた。 中に入ると大きな銅像があった。 それを見ているとなんだか不思議な気分になってくる… 「あっ、エイベス様」 見ると美しい女性が立っていた。 「会いたかった…」 美しい女性はエイベスにそっと寄り添った。 エイベスはちょっと嫌そう。 「おいエイベス、だれやねん、このきれいな姉ちゃんは。」 ギフが半分キレそうな声で言った。 「紹介しよう、こいつがムーブロケの使えるシスター、レイラだ。 俺達は昔からのしきたりで許婚となっていたんだ。 まあそんなの嫌だったから、俺は逃げてきたんだがな。」 「へー」 一同みんな本当かよって感じでエイベスとレイラを見た。 「エイベス様、ムーブロケでどこへ行かれるのですか?」 レイラがエイベスの顔を見て言った。 「その敬語やめろ、俺はそんなに偉くない。」 エイベスがちょっと照れながら言った。 レイラはエイベスから離れた。 「ごめんなさい、つい…」 レイラはいまにも泣きそうだった。 「まあいい…北の島だ、誰か行ったことある奴知らないか?」 エイベスは少し焦りながら言った。 「ええー!またなんであんな所まで行くの!?」 レイラは涙が乾くほど仰天した。 まあ、魔王城のある所ですから無理もないでしょうけど… 「実はな…」 エイベスは今まで起こったことをすべてレイラに話した。 そしてレイラは哀しく、そして淋しい表情で言った。 「そう……。大変ね、ロイエ。 それじゃあ行きましょう。 私行ったことありますから…」 ムーブロケ
ここは北の島。 当然のことながら人は住んでいない。 暗黒の風が吹き荒れる。 はるか向こうに魔王城が見える。 少し恐怖が体中を走ったがそれを乗り越えて行かなければメーサは助けられない。 そうロイエは自分の中に言い聞かせて魔王城に向かった。 「レイラ、お前はもう帰れ。ここからは危険だ。帰りはなんとかする。」 エイベスはレイラのことを気遣って言った。 「わかった、気をつけてね。」 レイラはまたムーブロケを使って帰った。 どこまで歩いても同じような道だった。 しかし、魔王城が近づいていることは確かだった。 「ようこそ魔王城へ…」 聞いたことのある声がした。 「え?!」 「まさか!?」 「そんな…」 そこにいた4人は4人とも目を疑った。 そう、そこに立っていたのはあのメーサだった。 しかし、どこか違和感があった。 耳だ。 メーサの耳が尖っていた。 魔族の象徴であるとがり耳になっていた。 「ひさしぶりね」 紛れもなくメーサの声だった。 「メーサ、お前その耳どうしたんだ!?」 ロイエは震える手で指差して言った。 「これ?」 メーサはそっと耳に手を当てた。 そしてロイエ達の方向いて言った。 「わかってるんじゃないの?私魔族になったのよ。」 4人は驚愕した。 「ど、どうして…」 ロイエは震えた声で言った。 「あら、当然のことをしたまでよ。 私に言わせれば、あなたたちが魔族にならなかったのが不思議で仕方ないわ。」 それを聞いたロイエの体の中で恐怖が走った。 「なんだと、こら! お前ロイエが今までどんな思いをしてここまできたかわかっているのか!!」 怒鳴るギフの肩をロイエがポンと叩いた。 「もういいよ、ギフ。 俺が…俺が間違っていた…」 ロイエの目はもう尋常でなかった。 メーサと同じ悪魔になったようだった。 「ロイエ…」 ミナがロイエを正常に戻すような声で言った。 しかし、ロイエはもう誰の声も聞こえなかった。 「メーサはこの手で倒す!」 ロイエは形見の剣を手に取った。 「へー、ずいぶんと強気ね。 そう簡単に私を倒せるかしら?」 メーサはそう言うと手を前に出した。 するとメーサの手から金色の光線が出てきた。 鋭い気で出来た剣だ。 「私の家に代々伝わる最強の必殺技をくらうがいい!」 メーサは天高く飛びあがった。 ロイエはメーサのほうを見上げた。 次の瞬間ロイエの頭上に現れ、目にもとまらぬ速さでロイエを斬りつけた。 仁衝烈斬! 一瞬だった。 しかし、無数のメーサがロイエを何十回も斬りつけてるようにも見えた。 「ぐはっ!!」 ロイエは血を吐き出した。 「ロイエ!」 ギフ達はロイエのほうへ寄ってきた。 「だ、大丈夫だ…」 ロイエはふらつきながら立ち上がった。 「これは僕とメーサの戦いだ、邪魔しないでくれ…」 「しかし…」 ギフ達はそう言いながらただ見守るだけだった。 「へ、へえ… 私の仁衝烈斬をくらって、立ち上がるなんてさすがね。 (ちっ、やっぱりまだ未完成だったわ)」 ロイエはゆらゆらと揺れていた。 立っているのがやっとという感じだった。 メーサはにやりと笑った。 「ふっ、次はどうかしら!」 メーサは再度高く飛びあがり、ロイエに斬りつけようとした。 その時、ロイエの動きが止まり、メーサを睨み付け、メーサのほうへ剣を向けた。 ズバ! メーサがロイエと接触する瞬間、ロイエの剣がメーサの胸に突き刺さった。 同時にメーサの首飾りの鎖が切れ、地面に落ちた。 メーサがいつも付けていた“仁”の文字のある首飾り。 代々伝わっている由緒正しき人物のみが付けている首飾り。 それはメーサ同様だった。 それが今…切れた… 「うっ…うう…」 ロイエは倒れたメーサを抱きかかえ泣き崩れていた。 「こうするしか…こうするしかなかったんだ…メーサ…」 「ロイエ…」 ミナがロイエのことを気遣う。 「ロイエ、お前は悪くない。 悪いのは魔王だ。 だからもう泣くな!」 口ベタのギフが精一杯慰めた。 とは言ったもののギフも口惜しがっていた。 自分のことを反省し、責めていた。 「エイベス…」 ロイエが泣きながらボソッと言った。 「俺は…俺は間違っていたのか…?間違っていたのか?!」 ロイエはエイベスの服を引っ張り言った。 「誰も悪くない… そう誰も…」 エイベスはロイエの肩を持ち言った。 「さあ行こう!魔王に会えば、すべてがわかるはずだ。」 「そうだな、すべては魔王に会ってからだ。 行くぞ!みんな!」

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