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◇◆◇出題:この行間を埋めよ。◇◆◇

※このコーナは多分に「萌え」「クサレ」要素が含まれております。※
「チョット…(汗)」という方は即座にお引き返しになることをおすすめ致します。
また、ネタバレ要素を含みますので未読の方はご注意くださいませ。

第2回「萌えとハマリの狭間」は三浦しをん『月魚』角川書店を取りあげたいと思います。
とりあえず『水底の魚』に焦点を当てています。
趣向としては「萌えとクサレのツボ」という感じですが……(汗)


□まず初めにおさらいをしましょう。

◇あらすじ◇
古書店『無窮堂』の3代目・真志喜のもとに幼なじみで同業者の瀬名垣から買い付けの話が持ち込まれた。
山間の旧家の主人の遺品である書籍を買い取りに出かける瀬名垣と真志喜だが、売り払いたいという未亡人と図書館に寄付しろという親戚たちの間でもめた挙げ句、地元の古書店と異例の査定比べをすることに……

◆以下、萌えポイント及びネタバレを含むあらすじ紹介を。
腐女子の萌えゴコロを刺激する設定のひとつとして、瀬名垣と真志喜の間に横たわる「罪の意識」というものがある。その世界では名を馳せた祖父を持ち、自身も本を愛し愛されるという環境に恵まれた真志喜。『せどり屋』と呼ばれ蔑まれる古本漁りを生業にしていた父を持ちながら、本の目利きに関して非凡な才を持つ瀬名垣。幼い瀬名垣が無邪気に欲しがった1冊の本が、ふたりの間に罪の意識を植え付ける——この目眩がするほどの罪の薫りが、たまらなく淫靡である。お互いがお互いの間にあるものを「義務」と「罪悪感」だけだと思いこんでいるが故のすれ違いっぷり。このもどかしさには悶える!


◇登場人物紹介◇
・本田真志喜
24歳。古書店『無窮堂』3代目店主。
色素が薄く細身で美形v幼なじみのみすずちゃん曰く、『僕は薔薇のジャムを毎日食べます』みたいな顔らしい。しかし好物は干し芋に干し柿に干し杏らしい(笑)。ぱっと見、男か女か判断しかねるような中性的な面立ちのようである。本以外のことにはぼんやりとしていて浮世離れした感じ。
店にいるときの出で立ちは葡萄茶の着流し(粋だねェ!)。愛車は白い軽トラック(笑)。しかし車の運転はヘタなようだ。
いかにも王道な受けキャラなんですが、屈折した言動と裏腹にすぐに赤くなる様子がたまんねぇっス(涎)。意地っ張りなところもカワイイv

・瀬名垣太一
25歳。店舗を持たない卸専門の古本屋。事務所は神田にある。
がっちり型の体格に精悍な顔立ち。せどり屋と呼ばれる古本漁りを生業にしていた父について全国を転々とした後、東京に落ちつく。その後、真志喜の祖父に目を掛けられた父とともに『無窮堂』へ出入りするように。
服装のセンスが妙で(笑)、仏像柄のシャツなんかを着ては真志喜に呆れられている。
攻めキャラとしては少々押しが弱いかな?という気はしないでもないのですが、最高にクサレるのが真志喜の髪をやたらと触りたがるクセでしょうか(腐)!後、泊まっていくときなんかに執拗に布団の縁を重ねておくいじらしさは…(笑)。

・梅原
古本界の重鎮、『天壌堂』の店主。七十代のご老体だが気は若く(笑)瀬名垣と服の貸し借りをしたりもするらしい。翁も相当な着道楽(?)で、ジーンズに下駄にアロハというサイケな格好をしていたりする。真志喜と瀬名垣を可愛がってくれている、鷹揚で面白いじいさま。
梅原のじいさま、普通に好きですー!オヤジとしての射程距離はハズしているものの、精神年齢の若さと粋さでがっちりオヤジスキー碓氷のハートをゲット(笑)。

・後藤秀郎&みすず
真志喜と瀬名垣の幼なじみ。秀郎は現在は市役所の職員だが、学生時代は髪を赤くしてしょっちゅう授業をサボっては本を読んでいたらしい。成績は良く、いわゆる「不良」というヤツではなかったようだ。淡々、飄々としていて味のあるキャラである。現在は秀郎の妻となったみすずは少女時代からかなりエキセントリックな言動のキャラ。真志喜に対しては世焼きの姉的存在で、現在もその役割は続いている。
秀郎の方は瀬名垣と真志喜の微妙な関係をまったく自然なものとして受け止めている鷹揚な感じが凄く好きです。寡黙で、数少ない言動がどれもオイシイ(笑)。『水に沈んだ私の村』での存在感はナイス。同じく『水に〜』ではみすずちゃんは女の子だから男三人に囲まれてちょっと複雑だったんだろうなァ…などと感じましたが、『水底の魚』ではかなりいい味出してますね。彼女が秀郎を人生の伴侶として選ぶに至ったエピソードを読んでみたい(笑)



□ここからが本題です。行間を萌え腐れ視点で埋めてみましょう。

◇p9 煙草を咎められた瀬名垣が茶化しながらもちゃっかり真志喜の髪の毛を触っているシーン。
 
はい、いきなりこのシーンでクサレゲージがレッドゾーン振り切りました。もうクサレフィルタ発動は免れません。

◇p27 二組の布団の縁を重ねておいた瀬名垣に、怒りも露わに布団を引き離して寝る真志喜。
 
真志喜さん、今夜はNOみたいです(闇)。

◇p36 瀬名垣の声や腕を引く力の強さを思い出してひとり赤面する真志喜。
 
アレ??この間はおあずけで帰らせたのでは(笑)?もっと前のことを思い出して照れてらっしゃるのかしら?
 試しにここの行間を埋めてみるとしたらこんな感じはいかがでしょうか、お嬢さん。


 腕を引くその力の強さに、真志喜は目眩に似た動揺を押し隠せず顔をうつむかせる。
「ましき」
 低く呼ぶ声はたとえ瀬名垣がそれを意図していなかったとしても、真志喜の耳朶を朱に染めるのに充分な淫猥さをもって響く。
 だめだ、早くこの腕を振りほどかなくては——
 腕力的にも瀬名垣に対して抗えるはずもないと承知しつつ、真志喜の思考はそれのみに支配される。
 ぐずる子供のように身を捩らせた真志喜を、瀬名垣の残るもう一方の腕が決して強引ではない力で引き込む。
「ましき……」
 一刻も早くこの腕から逃れなければ。
 溺れてしまう。
 心地よさに。
 そこに、特別な感情があるかのような錯覚に。
 真志喜の後頭部に差し入れられた指が、その感触を味わうようにゆるゆると蠢いた。髪の房のように、真志喜の意識もその指に絡め取られていく。
 触れる瞬間、真志喜の方から唇を寄せた。
 熱に侵されていく思考の端に、跳ねる水音を聞いたような気がした。



◇p39 瀬名垣がちょっかいかけてくるのは別に私が好きだからってわけじゃないんだモン……。ば〜い・真志喜。(スミマセン、本文こんなじゃないです)
 
か、かわええんですけど(悦)!ヲトメなんですけど、真志喜ー!!

◇p65 車で移動中、うなされていた真志喜を気遣いつつセクハラし放題で触りまくりの瀬名垣(笑)。
 
運転中はちゃんと前を見ましょう、瀬名垣君。高速だからって推定マニュアルミッションの軽トラを運転中、左手をシフトノブから離しっぱなしは感心しません。……なんてのは建前で、本音はじゃんじゃんセクハラしてやってくれ瀬名垣!逐一赤くなる真志喜はカワイイぞvです(笑)。

◇p66 真志喜が瀬名垣を「太一」と名前で呼ばなくなったとみすずに指摘されたという会話。
 
瀬名垣は『呼んでるだろ、名前で』という意味深発言を致します。対する真志喜は耳を赤くしながら、普通の会話のときのことだと答えるのですが……それって、瀬名垣を名前で呼んでるのは普通じゃない会話のときってとこですか!?普通じゃない会話ってどんなときなんですか!?例えば、こんなときですかねぇ?↓


「も…、や……ぁっ…せな…がき…ぃ」
 組み敷いた細い躰がついに泣き声を漏らすこの瞬間は、いつも瀬名垣からなけなしの理性を奪った。優しくしてやりたいのに、この綺麗な幼なじみをもっと泣かせてみたくてたまらなくなる。
「つれないな、真志喜。『太一』って呼べよ……」
 わざと焦らすように動きを止め、こぼれた涙を舌ですくい取りながら瀬名垣は今、自分がどれだけ意地悪な笑みを浮かべているかを自覚していた。
 真志喜はというと、のぼりつめる途中で放り出されたからだろう。更に涙を溢れさせ、いやいやをする子供のように首を振りながら必死に瀬名垣の方へと腕を伸ばしてくる。
「ん?なに、ましき?」
 細い躰を優しく抱き寄せながらも、先を促すように軽く突きあげてやる。それだけで真志喜の白い喉が声にならない悲鳴をあげて仰け反り、瀬名垣の背を引き寄せる指先が震えた。
「……ッ、た、いち…、太一……ぃ」
 肩口に額を押しつけるようにして、真志喜のか細い声が繰り返し瀬名垣を呼ぶ。
 いつも、それだけで達してしまいそうなほどに昂ぶるのはなぜなんだろう。
「ましき……」
 そこから先の、言葉にならない、伝えることのできない想いをのみ込む代わりに瀬名垣は、真志喜の細い躰を強く強くかき抱く。
 ふたりで、水底に沈んでいくかのような感覚に瀬名垣は、それが快感なのか恐怖なのか区別のつかないまま身を震わせた。
 ただ、わかるのは真志喜とならどんな深淵に沈もうともかまわないということだけ——



◇p68 罪すらも自分と真志喜を結びつける要因であることに喜び、そして同時にふたりを隔てていることに軽い焦燥を感じる瀬名垣。
 
瀬名垣、おっとこまえ!思ったのが、なんの躊躇もなく真志喜に思いを告げるつもりでいるその心構え。『獄記』事件がなかったら、しれっと告白してたんだろうな〜と思うと……(ああでもそれじゃあ普通のBLだよ(笑)!)

◇p89 瀬名垣の風呂敷(手荷物)の中身を見て「最低だな」と評する真志喜。
 
スミマセン、正直に白状します。ここ周辺でクサレゲージは計測不能な数値を示しました(笑)!
 「最低だな」が煙草と札束のほかにコ○ドームでも入っていたんじゃなかろうかと妄想した碓氷の思考回路はクサレを通り越して腐乱してるね(痛)!だって、7時半と言った朝食の時間を8時に訂正したのも意味深だし、翌朝やたらあくびをかみ殺している真志喜(寝かせてもらえなかったのねv)、事後の戯れの如く真志喜の髪に触れる瀬名垣、決定打がp93の瀬名垣の台詞「熱いくらいでしたよ」!フンガー!!これはヤってないはずがない(断言すな)!!そんなこんな爆裂した妄想がこんなことに…(白目)!↓



「……まったく、なに考えてるんだ」
 瀬名垣の風呂敷から転がり出たラテックスゴム製品を見て、真志喜は心底呆れた声で呟いた。
「イヤ、まぁ……備えあれば憂いなし、って言うだろ」
 いい年をして思春期の高校生じゃあるまいし…と、真志喜は冷ややかな目で瀬名垣を見る。当の瀬名垣はいつの間にか畳をにじり寄り、真志喜の眼前でにやりと悪戯めいた笑みを漏らした。
「ここんとこおあずけ食らいっぱなしだったからな。それに……場所が変わると燃えるだろ」
 悪戯盛りのガキ大将のような表情で、そんな淫猥な台詞をさらっと吐く。動揺しまいと視線をそらす真志喜の首筋が、努力も虚しくうっすらと朱に染まった。
「……ッ、バカなことばかり言ってるんじゃない。風呂に行って来る…!」
 瀬名垣の視線を振り切るように廊下に逃げる。火照った頬は風呂に入るとおさまるどころかますます熱を持ち、のぼせ顔で戻ってきた真志喜を、瀬名垣が心配そうに覗き込む。
「大丈夫か、真志喜?」
「さ、触るな。……私は大丈夫だから、湯が冷める前に早く風呂に行ってこい」
 邪険に振り払った腕に微かに胸の痛みを感じ、瀬名垣を直視できないまま襖の閉まる音を背で聞いた。
 どうして瀬名垣の一挙一動にいちいち動揺しなければいけないんだ。
 憮然とした気分で、真志喜は火照った頬を冷ますため細く窓を開けた。流れ込む夜の冷気が心地よくうなじを撫でる。山間の田舎だからだろう、黒々と押し迫る山陰の間に驚くほどの星が瞬いている。
 ポピュラーな冬の星座を探すことにいつしか夢中になっていた真志喜は、背後から伸びた指に優しく髪をかきあげられるまで瀬名垣が戻ったことにすら気づかなかった。
「真志喜、髪冷え切ってるぞ」
 瀬名垣はもう一方の手で窓を閉め、夜気にさらされて冷たくなった真志喜の頭を腕のなかに抱き込んだ。
 気づかないうちに冷え切っていた躰は、瀬名垣の暖かい腕を心地よいと感じる。
「星を見てたら、つい……」
 消え入るような声で言い訳じみたことを呟き、瀬名垣の腕から逃れようと身を捩る。しかし、残酷な瀬名垣の腕はそれを許さない。
「暖まり直さないと風邪をひくな」
 無邪気なくすくす笑いが真志喜の耳朶をくすぐる。
 駄目だと、思っているのに瀬名垣の胸元に傾いでいく自分の躰を止められない。
 真志喜の重みを危なげなく受け止めた瀬名垣の胸に包まれるたび、宝物のように扱われることが居たたまれなくなる。
 いっそのこと、壊してくれればいいのに。
 この曖昧な関係ごと、なにもかもを。
 決して思い切ることなど出来もしないと知りつつ、真志喜はこちらを向かせようと頬に伸びた手をするりとかわす。
「……もう、充分暖まったから」
「嘘をつけ」
 せめてもの抵抗は、甘く耳朶をかすめる吐息に勢いを失う。どんなに虚勢を張ったところで、真志喜が臆面もなく瀬名垣を求められるのは今や閨のなかだけなのだ。
 ここが旅先であり依頼人宅であるという最後の理性も裾から滑り込んだ熱い指先に蕩け落ちる。
 後は、沸き上がる熱に翻弄されるだけ。



◇p103 汚れ役を買って出ようとする瀬名垣を怒鳴りつける真志喜。
 
おお〜あのぼんやり真志喜が瀬名垣のことだとこんなに熱くなるんですね!ここに愛を感じなくてどこで感じる!!しかし、この後ラヴラヴオーラまき散らしのふたりに奥さんはさぞかし身の置き所がなかっただろう……

◇p111 『(略)あの人のすべてを私だけのものにしてしまいたいのです。(中略)他の誰にも、あの人の脳みそを渡したりはしない(後略)』by.未亡人・岩沼美津子
 
この台詞、グッときますね〜!萌え腐れとはちょっと関係ないんですが、この奥さんの密やかに激しい愛に胸を打たれたので抜粋。

◇p132 突然のお父ちゃん再登場に動揺する真志喜を……
 
往来で堂々と抱き合う男ふたり(笑)。ご近所のオバちゃんどもに「ちょっと聞いてちょお、さっき岩沼さんちのお客さんらぁが門の辺りで抱き合っとるの見てまったがね!」「ええ?あの細っこい方も男だって仁さんが言っとったで、それじゃあホモだがね!」田舎はにわかに生ホモ目撃で大騒ぎ……になってたりして。

◇p144 回想シーン。瀬名垣父が亡くなる場面。
 
ここでの高校生の瀬名垣&真志喜、この短い文章のなかに少年独特の透明感があっていいですねv着ているTシャツの胸元で真志喜の涙を拭ってやる瀬名垣……男の子が男の子にする扱いじゃねぇよな(爆)!

◇p147 久しぶりに真志喜が瀬名垣を「太一」と呼び、査定勝負に対して腹をくくるシーン。
 
このシーン、こいつら絶対チューしてる!!と思いました(爆)。みなさんはどうですか?(←訊くな)

◇p159 真志喜の台詞『傷が傷として残っても、それでいいと態度で示してくれる人がいます(略)』
  
それって、なにげにノロケですか(ニヤリ)?

◇p174 いつものように突然訪ねてきた瀬名垣に不意打ちで『おまえに会いたくなったから来た』と言われ赤面する真志喜v
 
『ずっと来なかったくせに』とスネたような口振りの真志喜、可愛すぎるんですがー!!

◇p177 敷かれた二組の布団の縁が重ねられていてもなにも言わない真志喜。
 
真志喜さんん、今夜はOKらしいですぜ(闇)。

◇p177 開店祝いは何がいいと訊く真志喜に期待満々で伸ばした手をかわされる瀬名垣。
 
コイツは絶対に開店祝いは真志喜だと思っていたに違いない(腐)。

◇p181 ラストシーン『無窮堂』に訪れた穏やかな夜……
 
穏やかってのはまぁ、ふたりの関係が落ちついたってことで本当は激しい夜だったに違いない(ど腐れ)。



□同時収録の瀬名垣や真志喜の高校時代のエピソード『水に沈んだ私の村』も透明感のある青春小説、といった風情でとてもよろしいです。少年時代の方がわだかまりを持ちつつも仲良しさん度は高い感じなのもグゥv


■三浦しをんさんの別世界もオススメです。→ 『白蛇島』 なんてどうですか?こちらはかなり真面目(笑)なレビュウ。ネタバレはナシなので未読の方もどうぞ。

 

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