このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
決勝にも関わらずスタンドの埋り具合は8割程度。
自由席はさすがに満席だったが指定席は両端に空席が目立った。
前日の準決勝2試合は満員御礼だっただけに、よけいに寂しく感じた。
試合が始まってもスタンドは不気味なくらいの静寂に包まれている。
時折、両チーム応援団の鳴り物の音が思い出したかのように聞こえる程度。
歓声も拍手も野次も少なくとても日本一が決まる試合とは思えない
雰囲気の中で試合は2ピリまで進行していた。
しかしそんな雰囲気が3ピリに入ってレフェリーのミスをきっかけに一変した。
2ピリ終盤から3ピリ序盤にかけて両チームペナが相次いだためか
審判側も混乱?、氷上にだすべき人数を間違えたことに後から気づき、
時計を戻してプレーをやり直しさせるというアクシデントが発生した。
これが選手側のミスなのか審判側のミスが原因だったのかは不明だが、
時計が戻されたこと自体より観客に何の説明もなく5分近くもプレーが
中断され続けたことにスタンドのファンの不満が高まったようだ。
「説明しろ!」「山田(主審)マイク持て!」などの怒号が飛び交う 険悪な雰囲気がしばらく続いた。
しかし皮肉にもこの中断を境に氷上のプレーは一転してアグレッシブになり
それに呼応するかのようにスタンドのボルテージも一気に高まっていった。
3ピリは激しい点の取り合いになり、ようやく決勝にふさわしい光景が
展開されるようになり、いつしか同点のまま試合時間は残り1分を切っていた。
ここでタイムアウト。次のフェイスオフを取った方が最後の
ワンチャンスになるだろうという時間帯であった。
これを西武が期待どおりに取ることに成功。
クリスがゴール前まで巧く持ち込みラストチャンスとばかり渾身のシュート!
しかし無情にも岩崎の好ブロックに阻まれパックは右サイドに大きく流れた。
クリスは勢い余ってゴール前で崩れる。
「終わった〜、延長かー」スタンドの誰もが頭を抱えた。
しかし次の瞬間、アッタクゾーンから出そうな勢いで転がるパックを
必死に食い止めたライアンの姿があった。
そしてゴール前で再び態勢を立て直そうとしているクリスにラストパス。
スタンドの遠いところにいたのに、ネットの中で踊るパックの姿が この時は妙にハッキリと映った。
次に輝く鋭い赤ランプ、抱き合ってもつれるクリスとライアン、
1ピリの頃と違って大興奮に包まれた西武側スタンド・・・
この時、時計は残り30秒を切っていた。
熱狂醒めやらないうちにフェイスオフ。
コクドが6人攻撃を仕掛けていたのを気づかないうちに
西武がまたパックを取っていた。
ハーフライン付近でパックを持ったライアンの前にはGKはもちろん
ディフェンダーさえ残っていない。
無人のゴールにパックが収まった時、スタンドはもう半狂乱になっていた。
クリスの勝ち越し点が決まった時にようやく配られはじめた紙テープは、
このゴールで時計が止まっている間にかなり回った様子だった。
プレーオフの時と違って2点差ついたので、カウントダウンを唱える
声にも余裕があった。「3,2,1,0!!」
昨年春に繰り広げられた光景が凍てつく大地で見事に再現された。
この瞬間を迎えるまでに我々ファンが予想する以上の苦悩の日々が
あったことに気づいたのは、東京へ戻ってきて新聞記事を目にしてからだった。
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