このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
ふるさとレポート番外編 秋田新幹線編
平成9年3月22日、秋田県民がまちに待った、「秋田新幹線」が開業した。この、「JR東日本の新幹線ネットワークの新しいなかま」(ジェイアール東日本企画『秋田新幹線こまち沿線ガイド』より)について、秋田県人の私が、独断と偏見に満ちたレポートをしたいと思う。
1.県議会は紛糾!?
「シートの向きはどうする?」
開業後も何かと話題に事欠かないこまちだが、開業前の笑えないエピソードとして、「シートの向き」の問題があった。
事の発端は大曲駅にあった。秋田駅をでた列車が奥羽線から田沢湖線に直通するには、大曲駅で進行方向を変えなければならないのである。従来の特急「たざわ」の場合、座席のむきは、秋田駅から大曲までは進行方向むき、大曲からは進行方向逆むきになっていた。
この、「スイッチバック」による座席の向きの変化に秋田新幹線はどのように対応するのかについては、開業前から関係者の頭を悩ます問題だったようである。対応策として、スイッチバック解消のための新駅・新線を、大曲駅の手前に設置する案があったようだが、これについては用地取得、工期の問題、また現大曲駅前商店街などの猛烈な反対運動によりこの案は見送られたらしい。
結局、具体的な解決策を見出せないまま、(というかホッぽっておかれた)開業を目前にしてこの問題が再浮上することになったのである。
なんと、開業を目前にした秋田県議会でこの議案が議論されたのである。
(それほど秋田県民は秋田新幹線の開業を待ちわびていたということか?)
結局、JRはこの問題に対して、大曲までは進行方向逆向き、そこから東京までは進行方向向きになるように座席を設定することで解決を図った。
でも、スイッチバックする「新幹線」はありなのだろうか.....
2.1位は「おばこ」。
それでも「こまち」に決めました。
秋田新幹線の愛称は公募によって決められた。はずなのだが、公募の結果では、1位は「おばこ」、以下「たざわ」「あきた」「たざわこ」「おが」「みのり」「みちのく」「やまどり」「はやて」、そして「こまち」の順だった(JTB『旅』1997年4月号より)。
秋田県民の間には、山形新幹線「つばさ」の愛称は、もともと秋田-上野間直通の特急の愛称だったのに、山形に「とられた」と思っている人が少なからずいるらしい。もともと山形県に対しては対抗意識が強いといわれているだけに、「つばさ」以上にインパクトのある愛称にしたいとの重いが強かったとも言われている。
そんなこんなで決まった愛称が「こまち」。決定当初には「スピード感がないといった反対意見が多く寄せられた」(JTB『旅』1997.4より)らしい。でもそんなこと言ったら「のぞみ」や「とき」はどうなるんだ?
反対意見をものともせず、秋田県産米の「あきたこまち」の知名度もてつだってか、思ったよりも早く、知れ渡ったみたいである。スピード感云々はさておき、車体デザインにはよく似合う名前だと思うのだが、皆さんはどのようにお感じだろうか。
車体デザイン、愛称の影響から、こまちに女性的な雰囲気を感じる人は少なくないのではないかと思う。最近の朝日新聞の見出しにも、
「やまびこにふられ?箱入り『こまち』みちのく一人旅」
というものがあった。今のJR、秋田県にとってはまさに「トラの子」ならぬ「箱入り娘」なのだろう。
3.それでもこまちにのりたくて
〜アホ学生のグリーン車試乗記〜
1.羽後本荘駅にて(切符を買うこと−まだこまちは現れない)
今年もサークル旅行に行くことになった。何と九州初上陸なのだ。が、しかし、旅行に行く前から九州のことなどどうでもよかった。それは何故かというと、帰りに
こまちのグリーン車に乗るからだ。3月22日の開業以来乗る機会を逃してきた秋田新幹線についに乗れるのだ。夏休みのバイト代を手に羽後本荘駅びゅうプラザへ。いかにも学生、といったいでたちで、
「8月22日のこまちのグリーン席ありますか。」 と聞く。一瞬の間があった後に窓口のお姉さんが、「グリーンでございますか?」と問いただす。バカ学生は、学割をおもむろに提示しながら、「高知−秋田乗車券と東京−秋田グリーン指定券おねがいします。」と言い直す。お姉さんが「ばーか」という表情でマルスにとりついた。そうして手に入れた指定券が下のものである。
2.「ひかり」車内にて
(東京駅にたどり着くこと−やっぱりこまちは現れない)
こまちに乗るために、京都からひかり100号で東京駅へ。「新幹線はおれの時刻表に乗っていない!」と豪語していたくせに、このかわりようは何なのだろうか。でも目的のためには手段を選んではいられない。ひかりの車内はビジネスマンでいっぱいだった。うわさには聞いていたが、これ程までとは思わなかった。車内でアホ学生は完全に浮いている。仕方ないので車窓に目をやる。昼間の東海道を移動するのははじめてだったので、富士山はどこかと目を凝らしていたが、曇り空のためか富士山は見えなかった。前日までの疲れからか、まもなくねてしまった。
10:00東京駅到着。これからどうしようかと迷ったすえ、まず東北山形 秋田 上越新幹線ホームを確認する。何を馬鹿なことを、とお思いになられるかもしれないが、「時刻表に新幹線は載っていない」ものだから、いちいち確認しなければならないのである。東海改札をいったんでて、改札を確認する。その後アホ学生は山手線で新橋までゆき、台場方面へと行方をくらましたのであった。
3.東京駅20番線ホームにて(こまち現る!)
14:00、ふたたび東京駅に舞い戻り、本格的に旅支度を始める。グリーン車に乗るにはそれなりの準備が必要なのだ。
まず、丸の内口にある書店で鉄道ジャーナルを購入。その後、駅弁屋で弁当を購入する。さんざん迷ったあげく普通の幕の内弁当にする。でもグリーン車には幕の内が似合う。(とおもう)
14:30、いよいよ20番ホームにむかうことにする。指定席
(しかもグリーン)なのだから、こんなに早くホームに向かう必要はないのだけれど、普通列車で旅をしている習性からか、早めにホームに立ってしまう。しかし今回はそれだけではないような気がする。とにかく早くこまちを見たいという気持ちが歩を速めているようだ。「こまち」およびピンク色の案内をめがけてホームをあるく。東海道とは違い、カジュアルないでたちの人が多い。東海道よりは気が楽だ。
「11号車」の案内の下にならんでみると、
やはりアホ学生は場違いだった。まわりは「フルムーン」組のような2人連れが多く、少し気後れした。しかしここでひるんではならない。おれはグリーン車に乗るのだ。14:44、いよいよこまちが入線してきた。他の電車を待っている人も、こちらに注目している。それと同時に、「きれいだね」「かわいい」といった声がちらほらときこえる。こまちに女性を感じる人が多いというのはどうやら本当のようだ。車内清掃に続きいよいよ乗車。荷物を棚に上げ、
グリーン席にすわる。すげーきぶんいい。気が付くと東京駅は後ろに流れていった。
4.「こまち」車内にて(あきたこまち(たぶん)に出会う!)
程なく車内回札の車掌さんがくる。名札を見ると
「秋田運輸区」。モロ秋田弁で案内をしている。車内はもう秋田である。改札の際に、乗車券に印を押し、返してくれるまでに一瞬の間があった。なんかあきれ半分感心半分
の目線をなげかけてきた。きっと、乗車券が高知−秋田(学割)だったのと、学生がグリーンなんかにのりやがってということなんだろう。きっとアホ学生が、と思ったにちがいない。おそい昼ごはん(駅弁)をたべ終えたころ、車内販売のお姉さんが、「おしぼりのサービス、コーヒーとお茶のサービスがございますが」といってきた。アホ学生は座席を思いっきり倒し、足のせに足を乗せ、「トランヴェール」(JRの広報誌。グリーン席一つづつに付いている。)を読む、といった
アホ学生度1200%ぐらいの格好で、「ウーロン茶下さい」という。きっとアホ。と思ったに違いない。ウーロン茶を持ってきてもらった際にお姉さんを見ると、
めっちゃかわいい。きっとあきたこまちにちがいない。
と発作的に思う。調子に乗って「こまち車内限定販売ボールペン」(1500円)を購入してしまった。
「こまち51号」は、いわゆる速達型(停車駅:仙台・盛岡・大曲)ではなく、準速達型なので、仙台までは最高240Km/hしかでない。こまちの本来の性能は発揮されないわけだ。そう思うと気抜けがして、グリーン車ののりごこちのよいシートでねてしまった。
目が覚めると郡山。しばらくぼーっとしてると見覚えのある風景が。そう、福島である。思わず降りようか、などとおもったが、降りるはずもなく、福島発車。
仙台であしでまといの「やまびこ」をきりはなし、身軽になったこまちは一路盛岡へ。ここからはノンストップである。駅を通過するたびに電光掲示板に「ただいま○○駅を通過中です。」とでるのが気持ちいい。自動ドアが開くたびにデッキに立つ人々がこちらをうらめしそうにながめる。
本当はすわらしてあげたいのだけれど(うそ)、
ばーか、くやしかったらかねはらえと言った態度まるだしで通路を通りトイレに行った。そうこうしているうちに、盛岡到着。いままでなら、ここで乗り換えの手間があったのだけれど、そんなことおかまいなしに田沢湖線に直通。やっぱりいいですねー新在直通などと思っているうちに雫石通過。やはり新幹線内にくらべて速度ががくんと落ちる。これでは「こまちはおそい」といわれてもしかたないかも、と少し弱気になるが、
ええいだまれだまれ。たざわよりはやいのっ。
と自分を納得させる。(こうなるともう親バカの領域に突入している.....)ここから先は各駅停車。開業と同時に新しい建物になった駅をホーム側からながめつつ、大曲到着。
大曲からは進行方向が逆向きになる。前の席に誰も座っていなかったので、回転させて対面座席にし、4人分を一人で選挙。すごく贅沢な気分にひたる。
辺りはすっかり暗くなった19:19、新しくなった秋田駅に無事到着。
グリーン車に後ろ髪を引かれながらもこまちをあとにしたのだった。
やっぱ旅は新幹線グリーンでしょう。
ふるさとレポート秋田編(本編)は次回掲載の予定です。おたのしみに。
(米の秋田は酒の国・美人を育てる秋田米:板垣 渉 記)
プラットフォーム第15号所蔵 1997年11月
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |