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ちょっとした情報
建設進む新幹線:施設の概要
次に11月下旬、博多駅で行なわれた九州新幹線関連の展示イベントでも 紹介があった九州新幹線の基本的なデータについて掲載したいと思います。 平成3年に八代‐西鹿児島の工事に着手した九州新幹線は、平成10年3月に 船小屋‐新八代、平成13年4月に博多‐船小屋の工事に着手して順調に 工事が推移しています。2002年5月9日には、新八代以南の用地買収手続きを 全て完了し、路盤工事はもとより、レール敷設、架線工事も行なわれております。 なお、これより今回新たに開通する新八代‐西鹿児島(鹿児島中央)を 南区間(2004年春開業予定)と呼称し、対する博多‐新八代を北区間と呼称して区別します。
駅名と距離
いかがでしょうか。
駅名 博多起点の距離 上駅よりの距離 新八代起点の距離 (既設)博多 0km000m 0km000m - 北区間工事始点 8km233m - (新併)新鳥栖(仮称) 26km260m 26km260m - (併)久留米 32km020m 5km760m - 新大牟田(仮称) 59km750m 27km730m - 新玉名(仮称) 76km270m 16km520m - (併)熊本 98km180m 21km910m - 南区間工事始点 129km315m 0km655m (新併)新八代(仮称) 129km970m 31km790m 0km000m (新併)新水俣(仮称) 172km820m 42km850m 42km850m (併)出水 188km820m 16km000m 58km850m (併)川内 221km550m 32km730m 91km580m (併)西鹿児島(鹿児島中央) 256km820m 35km270m 126km850m 工事終点 256km932m - (南始点)127km617m 駅名の”新”は新設駅、併は在来線との乗り換え駅。無印は単独駅。
個人的には新鳥栖、久留米はどちらかにならないものか、と思いますが どちらも譲らなかったのでしょうなぁ(苦笑)。
(仮称)とあるのは、2002年11月現在、駅名が未定のものです。 新水俣駅のように、広域合併を検討する地域においては”新市名の足かせになりかねない” とのことで、決定がずれ込むこともあるようです。なお、単独駅の新大牟田、新玉名を除き、 在来線(鹿児島本線・肥薩おれんじ鉄道)との乗換駅となりますが、新鳥栖駅だけは 長崎本線との乗換駅です。工事起点が博多から8キロも南下しているのは、 博多南線や博多総合車両所があるからでして、南区間が新八代から655m北へ寄っているのは、 当初フリーゲージトレインの導入を見込んでいたために、在来線からのアプローチ線 (高速道路でいうところのインターチェンジみたいなもの)を作るためです。 フリーゲージトレインの実用化の目処がつかなかったために、在来線特急を新幹線新八代駅に 乗り入れさせることになっており、ホームの両側に新幹線と在来線特急(787系)を 停車させて乗り換え可能な構造としています。新幹線新八代駅に乗り入れるのは787系だけで、 他の在来線車両は在来線に新設される駅に停車し、新幹線ホームとは連絡通路で結ばれます。
車両基地は熊本駅の南約9km地点と、川内駅南1.5km地点に設置されます。
インフラ設備
区間 博多-新八代 新八代-西鹿児島 工事延長 121.1km 127.6km 経過地 福岡市・春日市・那珂川町・鳥栖市
久留米市・ 三猪町・筑後市・瀬高町
高田町・大牟田市・南関町・玉名市
玉東町・ 植木町・熊本市・富合町
宇土市・不知火町・松橋町・小川町
竜北町・鏡町・千丁町・八代市八代市・坂本町・芦北町・津奈木町
水俣市・出水市・高尾野町・野田町
阿久根市・東郷町・川内市・串木野市
市来町・東市来町・伊集院町・松元町
鹿児島市建設基準 最高設計速度260km/h 最小曲線半径基本4000m 最急勾配35パーミル・軌道中心間隔4.3m 25KV交流 主なトンネル 筑紫トンネル11,865m 三池トンネル 5,415m
玉名トンネル 6,760m 新田原坂トンネル3,005m第2今泉トンネル4,680m 田上トンネル6,988m
吉尾トンネル6,040m 新津奈木トンネル 5,160m
第3柴尾山トンネル9,987m 塩鶴トンネル 4,175m主な橋りょう 筑後川橋りょう455m 松原線路橋740m
菊池川橋りょう400m 緑川橋りょう 260m
境目線路橋 282m 大野川橋りょう265m
氷川橋りょう 385m球磨川橋りょう 307m 米ノ津川橋りょう260m
川内川橋りょう338m構造物の種類と延長
博多-新八代
切取・
盛土13km橋梁11km 高架橋61km トンネル37km
新八代-西鹿児島
切取・
盛土15km橋梁9km 高架橋16km トンネル88km 新幹線電車
九州新幹線に投入される車両は800系と呼称されています。某都知事が”乗る人なんていない”と のたまったそうですが、それでも(笑)6両編成で390席が用意されています。 さて、390人という数字は6両編成の新幹線にしては少ない(単純計算で1両65人)ですが、 通常3+2の5人掛けのところを、1列4人掛けとするためです。 その分、一人当たりの座席幅を広げ、肘掛も各自独立したものにして、 座席のグレードを上げるものと思われます。また、新八代‐博多の接続特急となる322名が定員のつばめ号用787系の ビュッフェ撤去作業は2002年12月になると終盤を迎え、空いたスペースに座席を設置し、 定員を800系に近づけています。
技術面ではJR東海との提携をしており、700系を基本とした性能を有しています。 ただし、カモノハシともよばれる700系前頭部の頬の部分は削り落とされたシャープな形状と なっています。電気方式としては、長野行き新幹線よりもさらに勾配のきつい35パーミルで 建設されるため(北区間では筑紫トンネル、南区間では第3柴尾山トンネルや西鹿児島付近で 急勾配がある)、全電動車方式を採用しています。保安システムは実用化に向けた試験が 行なわれているデジタルATCを採用します。これは、従来、減速時に270、220、160、110、70、30と 段階的に速度を指示して減速していたのをスムースな曲線で減速していくもので、 運転間隔を詰めることが出来る、時間ロスを減少させスピードアップできる、などの長所がある、とのことです。 この保安装置の採用で、新八代‐西鹿児島の所要時間はノンストップ列車が34分、 各駅停車便でも47分前後で走ることが出来るようです。
経済効果と問題点
九州新幹線部分開業に向けて問題なのは、熱意に南北九州、そして福岡県内でも温度差が見られることです。 鹿児島地区では、新幹線受け入れに向けて大いに盛り上がっていますが、 熊本県では低調のようです。また、福岡県でも既に新幹線がある北部では 全くといって良いほど関心が薄いほか、南部でもいまいち盛り上がりに欠けている部分があるようです。経済的な波及効果や利用者などに関して色々な試算が 出ています。高速バスは言うまでもないです。特に県内中央部溝辺町にある鹿児島空港は年間利用者数600万人 (名古屋空港に次いで全国7位。8位は宮崎)の1割(65万人)を占める福岡空港とを往来する便に 大きく影響が出ると考えられています。空いた分をうまく振り分けられると 良いと思いますが、もともと鹿児島空港のターミナルは90年代前半に、将来の 利用者数が800万人に増加することを見込んで拡張されたばかりで、 一歩間違えば宝の持ち腐れになる可能性もあります。しかし、特に影響が大きいのはやはり、元来閉鎖的であった鹿児島県であり、人の流動が大きくなる ことによって企業の進出が多くなることでしょう。”鹿児島県への進出を 以って全国展開を達成する”という企業も数多いようで、人々の生活に 直接見える企業を挙げれば、セブンイレブンや紀伊国屋書店などが考えられます (両社とも県内に店舗がなく、特に紀伊国屋書店は鹿児島に一度進出しようとして 失敗した経験がある、らしい)。これらの全国展開している企業と 地元企業との競争も激しさを増すものと思われます。
一方、新幹線通勤で鹿児島から博多へ向かう客が増える、という予測は どうも首を傾げざるを得ません。新幹線の運賃・料金にもよりますが、 鹿児島の地価は平地が少ないこともあって、それほど安くないのが現状です。 そこに家を建てて新幹線で通勤、というのはまったくないとは言えませんが、 かと言って、それほどたくさんあるようにも思えません。もちろんそれを当てこんでか、 鹿児島市内でもニュータウンの造成などがいまだに行われているので確実とはいえませんが。このあたりは 未知数なのでフタがあくまで待つしかありません。
参考文献:リーフレット九州新幹線=日本鉄道建設公団
ラ・サール学園鉄道研究会会誌 TSUBAME
ふくおか経済(ふくおか経済社)2002年2月号特集ほか
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