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公共交通利用による家族旅行で近畿に行ってみる





■旅行の全行程

 今年の五月連休は、家族で近畿旅行を敢行してみた。一昨年は北海道、三年前は那須と続いているから、わが家では恒例行事のようなものだ。もっとも、親の出資をあてにしている面もあるので、親孝行なのか親不孝なのか、心許なくはあるが(苦笑)。

 旅行の行程を詳細に記すと冗長になるので、概略を以下にまとめてみよう。なお、今回の旅行は、父・母(ともに七十代)、筆者・妻(ともに四十代)、甥・長男(ともに十代)、それに娘(六つになったばかり)の合計七名からなるメンバー構成であった。



初日

写真行程コメント
 東京−(定期 700系・のぞみ 117号)→新大阪航空の方が楽だが子供らの希望優先
 新大阪にて昼食 
新快速新大阪−(新快速 3461M)→姫路大阪で全員が着席(ただし分散してしまった)
姫路城姫路城大混雑で入口から天守閣まで約90分を要した
 姫路−(快速824T)→加古川−(新快速 3520M)→新大阪着席優先で快速に乗車→意外に空いていたので新快速に乗換
 新大阪−(御堂筋線)→難波ホテルにチェックイン




二日目

写真行程コメント
 難波−(御堂筋線)→淀屋橋 
京阪宇治線淀屋橋−(京阪本線・急行)→中書島−(京阪宇治線)→宇治淀に臨時停車する天皇賞特需で急行車内は殺伐
平等院平等院拝観券の購入行列あるも境内では分散
宇治川河原宇治川河原散策流れが速くなかなか怖い川
平等院門前仲見世平等院門前の仲見世甘味を補給するも席がある店少なし
 宇治−(京阪宇治線)→六地蔵父が六地蔵なる観光名所があると誤認し時間ロス(苦笑)
 六地蔵−(京都東西線)→山科始発駅から楽々着席
 山科にて昼食観光地ではない場所にて余裕を持って
 山科−(京都東西線)→二条城前やや利用者多かったものの全員着席
二条城二条城混んではいたもののすんなり流れた
京都市バス101系統二条城前−(京都市バス 101系統)→金閣寺道車内混雑に加え娘が眠ってしまい抱っこで大難儀(苦笑)
金閣寺金閣寺夕方なのに境内は混みあっていた
京都市バス59系統金閣寺前−(京都市バス59系統)→河原町今出川金閣寺前から乗車したため母と娘は着席できた
金閣寺道からの乗車では大混雑で難儀な目に遭うこと必至
鴨川河原鴨川で河原遊びせっかく京都に来たのに子供らはこういう場所を喜ぶ
 出町柳−(京阪本線・急行)→淀屋橋−(御堂筋線)→難波着席優先で急行に乗車
くいだおれ太郎道頓堀逍遙くいだおれ太郎の人気が凄かった!
 某居酒屋で夕食配膳があまりにも遅く苛々




三日目

写真行程コメント
 難波−(近鉄奈良線・快速急行)→近鉄奈良混むのは鶴橋からで始発駅難波では楽々着席
東大寺・大仏殿東大寺・大仏殿雨模様のせいか昨日までと比べ大混雑ではなかった
奈良公園の鹿鹿にエサやりせっかく奈良に来たのに子供らはこういうことを喜ぶ
二月堂二月堂行きそびれた清水寺のかわり(苦笑)
奈良公園の鹿続・鹿にエサやり鹿に足を踏まれる長男/鹿の群に溶けこむ娘
春日大社・神苑春日大社・神苑藤がたいそう美しかった/観て良し香り良し
興福寺興福寺広々としており混雑さらに分散
 近鉄奈良駅付近で昼食時間差がついていたので余裕を持って
近鉄奈良線近鉄奈良−(近鉄奈良線・急行)→鶴橋意外にも全区間空いていた
 鶴橋の商店街ウインドー・ショッピングのはずが父が豚足購入(苦笑)
 鶴橋−(千日前線)→阿波座−(中央線)→大阪港 
天保山天保山「日本一低い山」に家族全員無事に登頂!(笑)
海遊館のジンベイザメ海遊館入場で25分待ちの混雑も展示内容に感心
 海遊館近くで夕食昨夜に懲りて簡単に
 天保山−(大阪市バス60系統)→難波着席優先で地下鉄を回避




最終日

写真行程コメント
 ホテルをチェックアウト 
 難波−(御堂筋線)→心斎橋−(長堀鶴見緑地線)→森ノ宮御堂筋線を避けてみる
大阪城大阪城眺望よりも展示物よりもベタな撮影物件を喜ぶ子供ら
長堀鶴見緑地線森ノ宮−(長堀鶴見緑地線)→心斎橋−(御堂筋線)→難波やはり御堂筋線を避けてみる
 ホテルに預けた荷物引き取り 
御堂筋線難波−(御堂筋線)→新大阪 
 昼食・土産購入 
のぞみ238号新大阪−(臨時 300系・のぞみ 238号)→東京航空はチケットほぼ完売で必然的に新幹線を選択




■公共交通を利用して

 このたびの旅行では、家族旅行だというのに自家用車もレンタカーも利用せず、全行程を公共交通に頼ったという特色がある。それは専ら、渋滞と駐車場入場待ちを嫌ったことによる。ただし、どのような手段を選ぼうとも、メリットとデメリットの両方が存在するわけで、これらに関して思いつくまま概括してみよう。

 まず、時間を確実に読めるという多大なメリットがある。前述したとおり、渋滞を完全に回避できたうえに、駐車場入場待ち皆無だった点は大きい。鶴橋商店街のように自動車ではアクセスしにくい場所に行けたし、新快速乗車により圧倒的高速性を享受し、当初の構想外だった姫路城まで足を伸ばすこともできた。閑散期はともかくとして、五月連休のような最混雑期にこれだけの観光地を回れたのは、公共交通の利便性によると断じてよいだろう。また、ドライバーの疲労を考慮しない行程を組めるため、家族の中で事実上唯一のドライバーである筆者としては楽だった。

平等院付近
平等院門前付近での渋滞


 必要な運賃・料金についてはほぼ対等というところか。ガソリン代+駐車場料金だけであれば自動車の方が安いが、レンタカーを借りることを想定すると、逆転することも充分にありうる。

 デメリットは、食事処などに寄り道しにくく、行程の選択肢が限られる点を挙げられる。着席が保証されない点も、老人と子供を引率する身としては苦しい。大混雑に揉まれるとさらに厳しい。ただし、速達性を少々犠牲にすれば座れる場面があったことも事実である。着席できても家族の席が離散してしまい、会話できなくなる場面が繰り返しあったのは、デメリットというよりもむしろ、なんのための家族旅行かという根本問題につながる話だ。淀に臨時停車する京阪急行のような、好みから外れる雰囲気に囲まれる場面があったのも、決して面白くはない。

 娘が眠ると抱っこになるのは、ほとんど拷問のようなものだ。おかげで全身バリバリの筋肉痛になってしまった(苦笑)。もっとも、娘はいずれ成長する。その一方で母の衰え著しく、徒歩回遊に疲労していたのが大きな問題として残った。観光以前の段階として、地下鉄での上下移動で疲れているのは痛々しかった。母が旅行に参加する限りにおいて、今後は自動車利用が必須条件になりそうな気配である。その場合、最混雑期を如何にして避けるかが課題になるが……。

 旅行を終えた後の感想としていえば、メリット・デメリットの比較ではなく、制約条件で利用手段が決まったと総括できる。今回の旅行では行程確保(なるべく多数の観光地を周遊する)を制約条件として公共交通利用が決まり、今後の旅行では参加者の疲労最小化を制約条件として自動車利用になる、というところだろう。





■時期が悪すぎたか?

 行程全体を通し、混みすぎていた感がある。移動手段になにを利用しようが、行先での混雑は変わらないわけで、こちらの方がむしろ苦痛だった。

 観光地の混雑に関しては、行程立案段階で複数の方に「五月連休に近畿を旅行するものではない。混んでいて難儀だ」と助言されていた。しかし、筆者においてはまとめて休みを取れる時期が限られていたため、やむをえない選択だった。

平等院
平等院での拝観券購入待ち行列
一時間後には折返しがつきさらなる長蛇の列に


 実際のところ、姫路城や平等院などのように一箇所で二時間程度を要する行先もあった。これだけ時間を食ってしまうと行程確保どころではなく、変更に次ぐ変更を余儀なくされた。結果として事前に想定した以上にタイトな行程にならざるをえず、行くことを諦めた場所も多かった(飛鳥・清水寺・銀閣寺・嵐山など)のが心残りではある。欲張りすぎといわれればそれまでだが。





■雑感Ⅰ〜〜一日乗車券

 公共交通で移動するにあたり、一日乗車券(@京都)が大きな効用を発揮した。運賃の割引率は実は小幅なのだが、いちいち乗車券を購入する手間を省けるメリットは効いた。一日乗車券は自動改札機を通すだけだから、手間だけではなく、節約できた時間も決して少なくはない。特に大混雑のバスにおいて、財布から小銭を出さずにすんだのは、まさに効用最大の場面であった。

みやこ漫遊チケット
みやこ漫遊チケット(京都観光一日乗車券)
京阪・京都市交・京都バスで有効


 なお、この状況は事前に予見できたため、小人用の設定がないにもかかわらず、長男に大人用のものを持たせたほどである。家族全員で見ればそれでも元はとれているし、仮に多少食いこんだとしても、効用で相殺するから充分許容範囲内なのである。





■雑感Ⅱ〜〜奈良での交通アンケート

 偶然ながら、奈良で周遊バス社会実験に関するアンケート票を渡された。この種の交通アンケートに釣られるのは、合計で四度目。うち都市内交通では二度目。滅多にない機会なので、後日しっかり回答してみた(アンケート票を郵便にて返送する方式)。

「奈良公園内を周遊する小型バスの導入に関する調査」

 土地勘もないので論評は避けておくが、アンケート票に提示されていた周遊バスルート案は紹介しておこう。読者諸賢ならば、この周遊バスについてどのような利用意向を持つであろうか。





■雑感Ⅲ〜〜新幹線の貧弱な待合設備

 帰路において、新大阪には出発の70分前に到着した。余裕を持っていたわけではなく、 土産と車内昼食の買い出しに時間を要すると見たのである。実際のところ、この買い出しには約40分を要したから、存外タイトなものであった。

 その間、父や娘と中央待合室で待機していたが、座席数も少なく、空間としても貧弱で、空港とは天地の懸絶があると感じざるをえなかった。たまたま目の前にキヨスクがあり、こども用絵本等も販売していたため、娘は立ち読みに熱中できたものの、それがなければ退屈したのは確実なところであった。また、本来キヨスクの本は売り物なのだから、目的外使用となるのは問題事象でもあろう。

 筆者は日頃は新幹線を業務で利用しており、滞留せず流れていく行動に慣れているものの、家族旅行となると途端に貧弱さが目立つ部分だと痛感した。日本の大動脈として機能美に徹しているといえばそれまでだが、業務利用者が太宗を占める状況がいつまで続くか保証の限りではない。将来的には改善を要する部分である。





■終わりに

 率直にいって、この旅行に自動車を利用していれば、記事らしい記事にはならなかったであろう。どこが混んだ、そこも混んだ、うんざりだ、というような感情吐露的な文面に落ち着かざるをえなかったと思われる。

 公共交通「だけ」を使い、老若男女七名の家族旅行を敢行したがゆえに、ちょっとした記事にまとめることができたわけだ。つまり、行動の特殊性が基礎にあるからこそ、記事を書けたにすぎない。

 公共交通のみ利用する家族旅行とは、おそらくあまり一般的ではない行動形態であろう。老若男女が混在する家族単位での公共交通利用はハードルが高いのが実態で、五月連休のような最混雑期でなければ、選択肢にのぼったかどうか疑問である。モータリゼーションが深度化している現代社会において、公共交通が克服すべき課題はまだまだ多い。





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※本稿はリンク先「交通総合フォーラム」とのシェアコンテンツです。





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