このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





起死回生か?それとも?〜〜阪堺電軌ダイヤ改正





■平成21(2009)年 6月22日付阪堺電気軌道株式会社発表より


天王寺駅前〜浜寺駅前間の直通運転を開始します

 阪堺電気軌道株式会社(社長:山本拓郎)では、堺の中心部から天王寺・阿倍野町・谷町線方面への利便性を向上させるため、 7月 4日(土)にダイヤ改正を実施し、上町線天王寺駅前と阪堺線浜寺駅前間の直通運転を開始します。

 これにより、天王寺駅前〜浜寺駅前間を約45分、天王寺駅前〜大小路間を約30分で結びます。

 また、昼間時には浜寺駅前発着の電車は、すべて天王寺駅前との直通とし、12分間隔で運転します。

 (以下略)





■阪堺電軌の天王寺シフト

 上に引用したとおり、阪堺電軌は天王寺を拠点に据えるダイヤ改正を行うと発表した。新聞報道等によれば、天王寺駅前−浜寺駅前間の直通運転は36年ぶりだという。これだけ長期間直通運転がなかったというのは、いささか意外なところである。

天王寺駅前
夜の天王寺駅前(平成20(2008)年撮影)


 公式発表には表現されていないものの、新聞報道では、利用者の減少傾向が続く恵比寿町方面から、再開発が進み今後もさらなる発展が期待できる天王寺方面に重点をシフトし、利用者数の増加を期待していると伝えられている。

恵比寿町
夕刻の恵比寿町(平成19(2007)年撮影)


 もともと阪堺電軌は親会社の南海電鉄と競合しているから、天王寺方面に重点を置いて競合を避け、競争力の強い区間に力を入れるという発想は正しい。しかし、36年ぶり直通運転というあたり、今更何故?という疑念を、どうしても感じてしまう。

住吉公園
古稀をも超えた最古参の車両(住吉公園にて・平成19(2007)年撮影)


 さらにいえば、大和川を越える、即ち大阪・堺の市境を越える流動が多いとはいえないことは、データによらずとも何度か乗車すればはっきりわかることである。特に堺市内では、センターリザベーションにより交通機関としての環境が充実している一方で、沿線の人口密度が相対的に薄いため、利用促進を図るには苦しい面が多い。

大小路
センターリザベーション区間を快走する(大小路にて・平成19(2007)年撮影)


 現状は我孫子町での乗換を要するとはいえ、同一ホームの乗換ゆえ抵抗感は少ないはずだし、両方向とも着席できる可能性は高い。利用者の反応は現時点では読みきれないものの、劇的な変化があるとまでは考えにくい。

安立町
専用軌道区間を快走する(安立町にて・平成19(2007)年撮影)






■阪堺電軌の真の意図は?

 以上の疑念から、必ずしも積極的な意味あいを持たないダイヤ改正か、という視点でも考えてみることにする。

 客観的事実として、恵比寿町−住吉間より天王寺駅前−住吉間は、ほんの僅かながら、具体的には 0.3kmほど短い。現状のダイヤを基本とし直通区間を変えるだけならば変化はなんら起こらないはずだが、増発時間帯のダイヤ設定によっては若干なりとも車キロ短縮が可能となる(ただしミクロな絶対値にとどまると想定される)。

看板 看板
初代阪堺電軌時代(?)の旧い不動産広告看板(沿線某所にて・平成19(2007)年撮影)


 裏読み・深読みは避けるべきかもしれないが、反転攻勢を意図した積極的ダイヤ改正と見せかけながら、コストダウンを狙ったしたたかさも垣間見えるわけだ。勿論、阪堺電軌の真の意図に関わらず、直通区間の変更により利用者が伸びる可能性もあれば、逸走するおそれもある。成否のほどは注目に値する。





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