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体質改善進むJR北海道特急群





■平成21(2009)年 7月 8日付JR北海道発表より抜粋


平成21年10月ダイヤ改正について

◆特急「とかち」が全て「スーパーとかち」になります

◆特急「スーパー宗谷 1号」とL特急「スーパーカムイ 3号」の時刻を入れ替え、朝の下り特急が全て美唄駅・砂川駅に停車します





■183系の置換進む

 JR北海道の特急群に関しては過去に何度か記事にしたことがある。うち 183系 0番台は昭和55(1980)年に試作車(900番台) が、昭和56(1981)年に量産車がそれぞれ投入されており、既に車齢30年に近づきつつある。(※のちエンジン換装等により派生番台が発生しているがオリジナルの 0番台として扱う)

183系0番台
臨時運用に投入される183系0番台原色車
函館にて 平成19(2007)年撮影


  183系 0番台は投入時点でこそ新鮮な車両であったが、今となってはすっかり色褪せている。性能面では明らかに劣っているし、接客設備の古めかしさはさらに明白。今日ではこの車両に乗ると、特急料金を徴されるのがばかばかしくなるほどだ。

 これだけの古参になってくるとさすがに定期運用は限られており、平成21(2009)年夏現在では「オホーツク」 8本に充てられているにすぎない。「とかち」には以前、帯広側先頭車などに 0番台が組みこまれていたものだが、平成19(2007)年10月のダイヤ改正において置換されている。さらに冒頭に記したとおり、平成21(2009)年10月のダイヤ改正では、「とかち」運用そのものが全て新型車に置換されることになった。

183系0番台
堂々たる7両編成にて札幌への入線を待つ183系0番台
苗穂にて 平成19(2007)年撮影


 「まりも」「利尻」などで、寝台車をはさんで夜行列車の運用に就いていた姿も、今となっては昔話になってしまった。北海道を縦横に駆けめぐっていた 183系 0番台は、その存在感を急速に薄めつつある。

183系0番台
夜行「オホーツク」運用に就く183系0番台
札幌にて 平成18(2006)年撮影


 ダイヤ改正後、「おおぞら」「とかち」系統は「北斗」系統に先んじて車両性能の均質化を達成する。単線区間が長いゆえ、強いニーズが存在したということか。参考までに、別の記事におけるJR北海道の見解を引用しておこう。高速道路との競合を強く意識している様子がうかがえる。

「平成21年は、道東方面において高速道路の延伸が予定されていることもあり、帯広方面の輸送改善を実施することとします。……(中略)……帯広までの到達時分を最大18分、平均で 5分の短縮が可能となり、利便性・快適性の向上を図ることにより道東方面の鉄道の競争力を強化します」(鉄道新報平成21(2009)年 7月25日付記事より)

183系0番台
「とかち」運用に就く183系0番台
平和にて 平成19(2007)年撮影


 今後の焦点は「北斗」系統での 183系 500番台置換となってくる。「とかち」とは状況が異なり、必要車両数が多くなるから、いつ手がけられることになるだろうか。

 「オホーツク」系統では当面 183系 0番台の定期運用が残るとはいえ、「とかち」置換により玉突き配転が行われるのは必至である。さらに「北斗」置換にまで段階が進めば、定期運用消滅はもはや時間の問題にすぎまい。

183系0番台
「オホーツク」運用に就く183系0番台
白石にて 平成19(2007)年撮影


 「とかち」置換は 183系 500番台運用範囲の大幅縮小をも意味することになり、 183系という形式そのものの退潮が進んでいると考えるべきだろう。おそらく「北斗」での活躍が最後の華になるのではないか。

 北海道の鉄道史に画期を刻んだ 183系 0番台は活躍の場を狭めつつあり、ようやく長い旅路を終えようとしている。そして、 500番台もその後に続いていく。





■旭山動物園観光客が選択しうる列車の整頓

 「スーパー宗谷 1号」札幌発時刻は42分も繰り上がり、 7時48分となる。JR北海道の表現をそのまま使えば「『スーパー宗谷 1号』と『スーパーカムイ 3号』の運転時刻を入れ替え、稚内の滞在時間を約40分拡大し、日帰り所用にもさらに便利にご利用いただけ」る措置ではある。さりながら、この売り文句を真に受けていいものか、どうか。

スーパー宗谷
交換する「スーパー宗谷」
(左:稚内行 1号 右:札幌行 2号)
和寒にて 平成19(2007)年撮影


 なにしろ、繰り上がった札幌発時刻が実に「妙」なのである。それは「絶妙」とも形容できるし、「微妙」ともいえる。ダイヤ改正前後の時刻表を見比べてみれば、その「妙」さ加減がよくわかるというものだ。

時刻表
平成21年10月ダイヤ改正前後の時刻表(札幌−旭川間・朝)


 ダイヤ改正前の「スーパー宗谷 1号」は、札幌駅近くのホテルに宿泊する際、 7時からの朝食をとり、身繕いをして、タクシーで札幌駅に向かうと、まさにちょうど良い頃合の出発時刻となっている。ところが、ダイヤ改正後の札幌発時刻では、ホテルでの朝時間帯が厳しくなる。 6時半からレストランが開くホテルに泊まるか、あるいは身繕いを整えて 7時から簡単に素早く食べるか、どちらをとっても窮屈な選択になる。

 これは即ち、札幌泊の旭山動物園観光客に対して、「スーパー宗谷 1号」利用を選択肢として狭める措置と考えられる。実際のところ、「スーパー宗谷 1号」は所定 4両編成が 6両に増結される日も多く、指定席車に外国からの観光客が多数乗車し、しかも稚内まで乗り通すわけでなく、はるか手前の旭川でぞろぞろと降車していく光景も見られるのだ。これは「スーパー宗谷」ほんらいの使命からすれば面白からぬ状況であって、JR北海道はとうとう是正に動いたと考えられる。

 札幌泊の旭山動物園観光客のうち、ツアー客は指定席を確保するチケットになっているだろうから、ダイヤ改正後は「旭山動物園号」に集中すると思われる。これを「スーパーカムイ 5号」が補完する形になるはずだ。地味な改正点ながら、利用者が選択しうる列車を整頓したという意味において、巧妙なやり方と評することができる。

旭山動物園号
「旭山動物園号」運用に就く183系0番台
平和にて 平成19(2007)年撮影


 「旭山動物園号」は運行を開始した平成19(2007)年 4月時点で、ホッキョクグマ号−ライオン号−チンパンジー号−ペンギン号の 4両編成だった。今ではオオカミ号が加わり 5両編成になっている。「旭山動物園号」への利用者の集中が進めばさらなる増結の可能性もある。「旭山動物園号」は運行開始からわずか二年余(平成21(2009)年 7月下旬頃)にして利用者数が10万人に達するというから、定員や運行日数から逆算すると、ほとんど満員に近い乗車率であって、臨時列車とは思えぬ驚異的な成功をおさめている。さらなる増結は充分にありうるところだ。

 ひょっとすると 183系末期の輝きは、この「旭山動物園号」になるのかもしれない。





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