このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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関西空港発深夜便にアクセスしてみる
■さらなる一念発起
前回は早朝便にアクセスしたため、関西空港じたいは通過しただけという憾みが残った。また、夜には別の貌もあるだろう、という判断も働いた。そこで、アクセスを「はるか」に変更したうえで、夜遅い便の搭乗を企画してみた。
筆者が搭乗した日本航空 194便(ボーイング737-400・JTA運行便)
もっとも、いくら夜遅い便といっても、帰宅の足を考えればせめて 192便には搭乗したかったのが本音だ。残念ながら 192便以前の便は既に予約が一杯で、最終の 194便を選択せざるをえなかった。接続が悪ければタクシー帰宅になる、と内心危惧しつつ、再び関西空港を目指したのであった。
■「はるか」の意外
筆者が乗車したのは新大阪20時15分発「はるか57号」である。最終「はるか59号」でも充分間に合うのだが、関西空港の内部を見る時間がほしかったので、早めの出発とした。仮に「はるか59号」乗車であれば、新大阪発は20時45分。これに近い東海道新幹線の列車は臨時「のぞみ 268号」で、新大阪20時47分発、東京23時19分着。定期列車では「のぞみ52号」の新大阪21時ちょうど発、東京23時32分着。筆者はまたしても合理的でない選択をしたことになる。
新大阪に停車中の「はるか」
(写真は米原行50号)
「はるか」乗車にあたり、新大阪発車時点ではガラガラに空いていて、西九条か天王寺で混んでくる、というのが事前の予想だった。ところが、列車を待つ列が長くなってきたのに驚く。実際に乗りこんでみると、先頭車で席数が少ないこともあり、ほぼ四分の三が埋まった。 2号車でも似たような混雑状況である。利用者は明らかに業務系が中心であり、航空搭乗の雰囲気をまとった方も多く、関空深夜便需要には旺盛なものがある、と感じた。しかし、これはまったくの錯誤にすぎないことが、後ほど判明する。
新大阪出発直後の「はるか57号」車内
左:先頭自由席 6号車 右:自由席 5号車
梅田貨物駅の脇を通過、踏切を渡り、大阪環状線に合流する。西九条ではほとんど動きがない。天王寺では、京都から乗車してきた水商売風の女性が 1名降車したほか、大勢が乗車してきてほぼ満席となった。これだけ乗車がありながら、なぜ最終便は定員の少ないB737-400なのかと、この時点で疑いを持つべきだったかもしれない。
大部分の「はるか」は天王寺−関西空港間無停車だが、朝の関西空港発と夕〜夜の関西空港行は和泉府中と日根野にも停車する。前に列車が詰まっているのであろう、特急とは思えぬ鈍足ぶりを発揮しつつ、まず和泉府中に停車。ここで若干名の降車があり、筆者の胸にようやく疑問が湧いてきた。続く日根野では驚くほど大量の降車となり、車内に残るは四分の一ほどと、一気に閑散とした状況になった。
「はるか」のチケット・ホルダー
他席のチケット・ホルダーには、特急券が残されているものがいくつかあった。これらを集めてみて、合点がいった。残されていたのは「南大阪自由席回数特急券」、 6枚綴の企画もの回数券である(有効期間一箇月)。筆者が確認できたのは、新大阪−和泉府中間が 1枚、新大阪−日根野間が 2枚、天王寺−日根野間が 1枚。勿論母数はもっと多いはずで、おそらく日根野までに降車した利用者の大部分は「南大阪自由席回数特急券」を常用しているものと思われる。新大阪は副都心・業務核としてはかなり弱いため、ニッチ需要に属すると考えるのが妥当としても、大阪(+天王寺)での乗換がなく着席できる確率が高いから、それなりに固定客を獲得していると見受ける。
要するに、和泉府中・日根野停車の「はるか」は、関西空港アクセス列車というよりもむしろ、いわゆる通勤ライナー的な列車とみなすべきなのである。「成田エクスプレス」にも同じような傾向が認められるから、朝夜における空港アクセス列車の弱点というべきなのだろうか。ただ、そうはいっても、関西空港は数少ない24時間稼動の国際空港であるから、いま少し太い需要があってもいいように思える。
関西空港到着直後の「はるか57号」
「はるか57号」はダイヤどおり関西空港に到着した。折返しの京都行「はるか58号」を待つ列は相応に長く、いささかの安堵を覚えた。空港アクセス列車に限らず、求められている機能を存分に発揮する景色は、好ましいものである。
■関西空港の夜
前回は早足で通り抜けただけなので、今回はゆっくりと観察してみよう。エントランスには提灯が並んでおり、如何にも日本情緒、という雰囲気を演出している。これで賑わいがあれば祭のような高揚感が伴うところであろう。行き交う人が少ない今の時間帯では、むしろ「お化け屋敷」の寂寥感すら与える。国内線窓口には特段記すべき点を見出せない。これから出発する便が一便のみだから、窓口は大部分がクローズされていて、特記しようがないのが実状だ。
関西空港寸景
左:エントランス 右:国際線窓口
国際線窓口は、暗くなっていたものの、人の動きがまだあった。本日中から未明にかけ、仁川(チャーター)・シドニー・グアム(JAL 定期)・ホノルル・仁川(定期)・グアム(JAL 臨時)・グアム(ANA 定期)・ドバイ・ドーハ・バンコクと、実に10便もの出発を余しており、これから海外に向かう人々の熱気が伝わってくる。24時間眠らぬ空港の面目躍如というところか。
外貨両替窓口に並ぶ行列は、まさにその熱気の象徴であろう。国際線出発ロビーでは、如何にもアジア風にしつらえたカフェがあり、離陸前のひととき歓談にもまったく違った趣がひそんでいる。いずれも国内線ではありえない雰囲気で、見ているだけでも心の躍動が伝わってくるかのようだ。顧みれば、筆者は平成13(2001)年以降、海外に出たことがない。自らの渇望が、憧憬を呼び起こしたものか。
関西空港寸景
左:外貨両替(紀陽銀行) 右:国際線出発ロビー
国際線に比べると、丑三つ時に入りつつある国内線まわりはさびしい。飲食店は大部分が閉店時刻を回っている。コンビニが開いていても、寒色系のサインでは活気からは遠く、寒々しい印象を与えるばかりだ。ラウンジとは、要するにインターネットカフェにすぎず、日中はともかく、この時間帯では仮宿として機能しているのだろう。
関西空港寸景
左:ローソンとドトール 右:ラウンジ
早朝・深夜という極端な時間帯に利用しているから、まだまだ実相が見えないだけなのかもしれない。今度は繁忙時間帯にも利用しなければなるまい。
■海外ではなく東京に飛ぶ
本日搭乗するのは日本航空 194便である。ただしとも様によれば、日本航空直轄の運行ではなく、JTA(ジャパン・トランスオーシャン・エア)運行便との由である。筆者の目にそれが見分けられるか、どうか。
正直なところ、教えてもらわなければ違いに気づかなかっただろう。制服もサービスも日本航空標準で、機体の塗装にしてもロゴ以外は全て同じだから、ぼんやり搭乗していればJTAとは認識しようがない。オリオンビールの提供(有料)、パンフレットの内容、機内放送BGMの選曲などに沖縄らしさを発見することはいちおう可能だとしても、ただ乗るだけでは見過ごしてしまう。
JTA独特といえるシーサー柄のスカーフ
片鱗ながらの自己主張は、このシーサー柄のスカーフにつきる。遠目にはただの紋様にすぎずとも、実は最も強烈な沖縄らしさの主張である。
モデルになって頂いたのはI嬢。近年如何にもパートタイマー然としたアテンダントが増えるなか(しかも年齢層が確実に高くなっている)、実に貴重なキュートさではないか。これもまた沖縄らしさの一部であるならば、端倪すべからざるものが沖縄にはあるといえよう。
シーサー柄のスカーフをまとったI嬢
194便はほぼ満席。定員が少ないB737-400とはいえ、時間帯を考えれば、席が埋まるとはたいしたものだ。フライトはいつも以上に淡泊で、降下が予想外に早まり、飲料の二杯目をもらえなかったほど。羽田空港での渋滞もなく、若干の早着とあいなった。
日本航空 194便に接続した東京モノレール区間快速
左:羽田空港第一ビル 右:浜松町での折返し
おかげで、終電に接続できるかどうか、焦る必要がなくなった。想定より一本早い区間快速に間に合い、楽になった。浜松町を出たあたりで「日付変更線」を超えてしまうものの、余裕を持って乗り換えられたうえに、日暮里・舎人ライナーの終電一本前に乗ることができたのは大きかった。この乗り継ぎ行程は、上り最終「のぞみ54号」に近似している。「のぞみ54号」は新大阪21時20分発、東京23時45分着。日本航空 194便は関西空港22時10分発、羽田空港23時20分着。
即ち、関西空港へのアクセス条件によっては、「その日のうちに首都圏到着可能で関西圏出発時刻が最も遅い」選択肢になりうる。筆者のように新大阪出発では合理性に欠ける選択になるが、大阪市中心部からの出発では新幹線といい勝負であろう。アクセスに自動車を使える層であれば、確実に航空優位となる断面といえる。
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