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名古屋鉄道4線区の廃止がほぼ確定
■平成12(2000)年 9月28日付交通新聞記事より■
この記事によれば、名古屋鉄道は27日に下記の4線区の廃止届出書を、運輸大臣に提出した。4線区とも来年10月 1日を期して廃止される。なお、各線区の営業成績は以下の表のとおりである。
路線・区間名 | 距離 | 輸送密度 | 営業係数 | 赤字額 |
km | 人/日km | 百万円 | ||
揖斐線(黒野−本揖斐間) | 5.6 | 604 | 495 | 89 |
谷汲線(黒野−谷汲間) | 11.2 | 323 | 723 | 168 |
八百津線(明智−八百津間) | 7.3 | 1,307 | 367 | 110 |
竹鼻線(江吉良−大須間) | 6.7 | 1,081 | 439 | 136 |
計(もしくは平均) | 30.8 | 772 | 485 | 503 |
同様に廃止が検討されていた三河線(猿投−西中金間及び碧南−吉良吉田間)については、沿線自治体が赤字の全額を補填することを条件として、最長3年間の期限つきで名鉄の営業が継続されることになった。
上記線区の事前協議では、赤字補填・第3セクター化・バス転換などが営業を継続する条件として名鉄から自治体側に提示されていた。だが、三河線以外ではまとまらなかった。廃止となる4線区はバス転換されるものと想定される。
■コメント■
4線区とも営業成績は極めて悪く、廃止じたいはやむをえないとの観がある。特に谷汲線をとりまく状況は厳しく、輸送密度が3桁にとどまっているのが信じがたいほどである。筆者が見聞した限りにおいて、谷汲線の日中の利用者は極微であり、現在まで営業を継続できたことがむしろ奇跡に近い。営業廃止の決断は、名鉄にとってはごく当然である。
それでも、この4線区廃止にはいくつかの問題が伴う。
第一点は、各線区の現況や将来展望に関する議論の場がなかったことである。利用者数の減少や赤字額の増加は、おそらく、最近になって顕著になったことではない。これらの線区をどのように維持していくか、あるいは営業継続を諦めなければならないのか、真剣に考える機会があってもよかった。
各線区の情報を広く開示しなかった名鉄にも責任はあるが、一義的には自治体側により重い責任があると考えられる。名鉄は、これら路線を廃止したいというサインを今までに出してはいた。ところが、自治体側の対応は極めて敵対的なものだったといわれている。真偽を確認できない不確定な情報だが、自治体側は名鉄株を取得して、株主として圧力をかけようとしたとの報道さえあった。
事前協議においても、名鉄側は決して廃止ありきではなく、いくつかの条件を提示していた。しかし、自治体側はその全てを諾としなかった。この事実は、自治体側に公共交通を維持するにあたっての当事者意識がないことを示唆している。
モータリゼーションが高度化した今日においては、民間事業者の努力のみで公共交通を維持するのはより難しくなりつつある。この事実に対する認識と理解(さらに加えて財源)があれば、自治体側は名鉄になんらかの協力ができたはずである。だが、それはまったくなかった。4線区は、自治体側に見離されたと形容してもいい。
第二の問題は、4線区の廃止が公共交通の衰微を加速する懸念である。現在の揖斐線・谷汲線には並行するバス路線がない。沿線にとって、鉄道は唯一の公共機関なのである。これがバス転換されるとなると、運賃水準はおそらく上がり、ただでさえ少ない利用者数はさらに減少するであろう。そうなると、バス路線でさえ維持できるという保証はない。
現状では、かような展望を持っている方がどれほどいるか、疑問である。特に自治体側の対応には、歯痒いものさえ感じる。4線区の廃止はやむをえないとしても、公共交通の全てが廃止される事態にまで至っていいのか、衆議が尽くされたのだろうか。公共交通を維持するにしても、どのような手法を採るべきか、検討されたのだろうか。
4線区の廃止はもはや確実であり、これは受容するしかない段階にきている。しかし、公共交通の将来を考えるうえでは、これでいいのかと考えさせられる一件といえる。名鉄の対応は当然すぎるほど当然で、しかも相応の誠意を見せている。これに比べ、自治体側の反応はごく鈍い。この点に問題の根本を見出すのは、決して筆者だけではあるまい。
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