このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

 

青函トンネル開業から14年〜〜ようやくJR北海道が本格対応へ

 

 

■平成13(2001)年 9月26日付JR北海道プレスリリースより■

 函館〜八戸間に新型特急電車を投入

 JR北海道では、平成14年末の東北新幹線の八戸延伸に合わせ、快速「海峡号」にかえて新型電車特急車両を函館〜八戸間に投入します。・・・・・・

 函館〜八戸を直通で運転し、青森駅での乗り換えを解消すると共に八戸まで延伸する東北新幹線と接続する計画です。・・・・・・

 

 

■コメント■

 試運転列車のうち1本(ED79+50系)に乗り、開業1番列車(上り「はつかり」)にも乗り、さらに旅行・移動の手段として何回となく利用した身にとっては、この変遷に感慨を覚える。開業から、14年も経ったのか。

ドラえもんで身を飾ってみても、列車としてのグレードは知れていた。〜〜吉岡海底にて

 

 開業当時から今に至るまで思うのは、青函旅客輸送には力が入っていないなあ、ということだ。特に50系はひどすぎる。幹線系列車に充てるには、あまりにも質が劣る車両ではなかったか。原型車を乗り比べてみれば、その違いは明らかだ。改造を施したとはいえ、弥縫的対応であることは明瞭にわかる。遅い、揺れる、しかもうるさい。リクライニングしないシートは、乗り心地が固い。

 その初動を批判したい気分は、筆者において多分にある。しかしJR北海道にしても、苦しい選択を迫られていたこともまた理解できる。手持ちの余剰車両は50系しかなかったし、機関車を共通運用できるというメリットもあった。なにより、「金をかけても利用者がつかない」という最悪のリスクを冒すことだけは、できなかっただろう。

 「海峡」を優等列車でなく「快速」としたことは、JR北海道の良心を示しているとはいえる。あるいは、それは単なる「引け目」なのかもしれないが。

カーペット車の導入とて、決定打にはならなかった。〜〜「海峡」車内にて

 

 力を入れようにも金をかけられなかったという、厳しい制約条件があったものと、推察する。開業直後の繁忙期でさえ、「海峡」に充てられる車両はいわば「寄せ集め」だった。塗装が剥げて外板がベコベコになった14系(おそらくは波動輸送用車両の借入)が走っている姿も、見たことがある。

 青函間輸送の現実として、利用者数の推移は下り坂をたどっている。その原因を「車両が寄せ集めだった」点に求めるのは、おそらく適切でない。それは車両に対する過大評価であろう。現状の鉄道ネットワークにおいて、青函間の改善だけでは局地的に過ぎた、という現実を鑑みる必要がある。

 羽田空港の沖合展開にともない、千歳便・函館便はかなり増えている。この利便性向上により、潜在的需要もかなりの部分顕在化してきたであろう。シェアが航空側に傾けば、その利用がデファクト・スタンダードとなり、鉄道が選択肢として有力でなくなったことも、理解できる。

 その一方で「海峡」は、東北新幹線沿線の利用者から見て、利用するには遠くにすぎた。時間的距離の隔たりは、利用を疎遠なものとしていた。

 結果として「海峡」は、幹線系の広域的な流動を吸着しきれず、ローカルな都市間連絡列車にとどまっていた。青函間だけでも 2時間40分を要するとは、さらなる遠距離流動の一部を担う列車としては、実力不足は明らかだった。

「スーパー北斗」は函館まで。「はつかり」の多くは青森まで。その不連続性が全てを決していた観がある。〜〜札幌にて

 

 東北新幹線の八戸延伸は、青森そして函館を、新幹線沿線から見て指呼のうちとする、交通の革新である。その革新の朝を迎えるにあたり、現在の「海峡」が器として充分かと問えば、答は否であろう。車両の質を云々する以前に、青森で乗換を要する点にまず問題があるし、足が遅すぎる点も列車としての魅力に欠ける。

 あるいは、またも「金をかけられない」制約から、JR東日本からの 485系移籍もありかと思っていただけ(正直にいえば半ば覚悟していた)に、新車投入は嘉すべきであろう。あるいはひょっとすると、50系もED79も老朽化が進み、置換の必要に迫られたという背景があるだけなのかもしれないが。

 ともかく、JR北海道は青函間輸送に初めて「力を入れる」ことになる。積極策を打つことは、積極的な意志をかたちで示すことでもある。それは、青函間がようやくにして、鉄道ネットワークのデファクト・スタンダードに組みこまれることをも意味する。

 八戸延伸なおもて革新たり、いわんや青森延伸をや、というところか。東北新幹線完工後の発展が、さらに期待できる。

 

 

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