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終わりの始まり〜〜高千穂鉄道廃止決定
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高千穂鉄道ホームページ
より
弊社取締役会では、今年 9月の台風14号により鉄道施設全般にわたり甚大な被害を受けたことから、今後の経営見通しや施設・設備投資の見込み等を詳細に検討し、全線復旧や部分運行の可能性など会社の今後のあり方について検討を行ってまいりましたが、今後の収支見通し等を総合的に考慮すると、現在の第三セクターという形態により経営を続行することは困難であるとの結論に至り、部分運行を含め経営を断念することを決定いたしました。
高千穂鉄道は、旧国鉄時代から通算して70年の間、株主の皆様や沿線の皆様をはじめ、多くの方に支えられ、親しまれて、今日まで営業を続けてまいりました。また、このたびの台風被災以来、全国からたくさんの方々に心あたたまる激励や御支援のお言葉を賜りました。この場をお借りいたしまして、改めて心からお礼申し上げますとともに、このような決断に至りましたことをお詫び申し上げます。
今後は、施設跡地の有効活用の方策や処理の仕方等について、沿線市町や県など関係機関で検討してまいります。
なお、高千穂町といたしましては、被害の軽微な区間について、民間資本による鉄道事業の可能性を模索してみたいと考えております。
代表取締役社長(高千穂町長) 黒木睦郎
■コメント
高千穂鉄道は、12月 9日及び20日の取締役会において営業継続断念を決定した。高千穂鉄道は、この 9月の台風14号により、第一五ヶ瀬川橋梁の河道部の桁三連が流出し、第二五ヶ瀬川橋梁では同じく河道部の桁四連流出に加えて、橋脚一基が転倒するなど、甚大な被害を受けていた。天災による被害が廃止の直接原因となる事例は、近年では例が少ない。筆者が思いつく最新の例は、近鉄八王子線西日野−伊勢八王子間(昭和49(1974)年被災/昭和51(1976)年廃止)までさかのぼる。
そのほかには山鹿温泉鉄道や南部鉄道などが典型例として挙げられ、いずれも需要零細なローカル鉄道であった。そのためか、被災即廃止という路線は、概ね昭和40年代までに整理されつくした観がある。近年では豊肥線や大糸線などが甚大な被害を受けているが、復旧が果たされている。大雑把にいって、昭和時代を乗り超えてきた鉄道は存続に社会的意義があると広く認知されていると考えてよいが、その潮流のなかにあって高千穂鉄道の廃止決定は、極めて示唆的である。
いうまでもなく、高千穂鉄道は国鉄特定地方交通線転換線である。このうち鉄道として存続したものを以下に挙げてみる(全区間が建設途上の路線を開業させたものを除く)。
○ちほく高原鉄道
●下北交通
●弘南鉄道黒石線
三陸鉄道
秋田内陸縦貫鉄道
由利高原鉄道
山形鉄道
阿武隈急行
会津鉄道
わたらせ渓谷鉄道
真岡鉄道
いすみ鉄道
天竜浜名湖鉄道
愛知環状鉄道
●のと鉄道
○神岡鉄道
樽見鉄道
明知鉄道
長良川鉄道
伊勢鉄道
信楽高原鉄道
北近畿タンゴ鉄道
北条鉄道
三木鉄道
若桜鉄道
錦川鉄道
土佐くろしお鉄道
平成筑豊鉄道
○高千穂鉄道
甘木鉄道
松浦鉄道
南阿蘇鉄道
くま川鉄道
表記のうち●は特定地方交通線区間が既に廃止された路線、○は廃止が決定された路線をさす。こうしてみると、全体の2割近くの路線が廃止もしくは廃止決定となっており、衰勢は覆いがたい。また、当面存続する路線も、いくつかの路線はもはや持ちこたえられないといわれており、廃止検討の噂もちらほら聞こえてくる。実際のところ、底堅い需要と収入源を持つのは阿武隈・愛知環状・伊勢・北近畿・土佐など少数に限られる状況では、ほんの数社も生き残れまい。
つまり、もし仮に高千穂鉄道が台風の被害に遭わなかったとしても、営業を継続できたかどうか、はなはだ疑問に考えざるをえないのである。それぞれの路線は転換以来20年前後の年月を経ており、車両の経年劣化が進んでいる。鉄道車両の単価は高く、一車一億円以上といわれている。営業黒字を計上できないほど経営基盤が脆弱な路線において、新車を導入する術はないに等しい。中古車を導入しようにも、良質な中古車(しかも気動車)を提供しうる鉄道事業者はたいそう少ない。JRローカル線の新車が置換対象としているのは国鉄時代の車両であり、特定地方交通線転換路線の車両より旧いとあっては話にならない。
高千穂鉄道の廃止決定は、台風被災による特殊事情のようにも見えるところだが、実際には特定地方交通線転換路線の一般的傾向を先取りしたにすぎないといえる。筆者は自称「鉄道ナショナリスト」なので、廃止決定は残念至極に感じられる。しかし、これは実は「終わりの始まり」にすぎず、今後も同じような事例が相次ぐと予感せざるをえないのがさらに辛いところだ。
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