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ダイヤ改正の効果あらたかならず





■伸びたのは「すずらん」だけ

 平成20(2008)年 9月22日付交通新聞が伝えるところによると、平成19(2007)年10月 1日にJR北海道が行ったダイヤ改正の成果は、「すずらん」において顕著だったそうだ。

789系
789系「スーパーカムイ」の二編成並び
岩見沢にて 平成19(2007)年撮影

 その一方、ダイヤ改正の目玉「スーパーカムイ」は従前の「スーパーホワイトアロー」に比べ、札幌付近でほぼ横ばい、旭川付近では微減となっている。石勝・根室本線では、帯広以東が微増しているのに対して、帯広以西では概ね同じ幅で減少している。ただし、母集団が異なるため、帯広以西の絶対値の落ちこみが目立たざるをえない。

 以下に同記事の概要をまとめてみよう。

列車名一日あたり利用者数

平成20年 8月末現在
増減改正前との比
スーパーカムイ(札幌−岩見沢間)9,731名※+10名+0.1%
スーパーカムイ(滝川−旭川間)−1.3%
すずらん972名※+77名+8.6%
すずらんuシート車+40%
スーパーおおぞら(帯広−釧路間)2,178名※+34名+1.6%
スーパーおおぞら(新得−帯広間)※3,166名+266名+8.4%
スーパーとかち (新得−帯広間)※579名+223名+38.5%
とかち     (新得−帯広間)※346名−550名−61.4%
新得−帯広間計※4,091名−61名※−1.5%

※を付した数字は他の数字からの推測値


 「すずらん」の伸びは、 785系転入による時間短縮、uシート定員の増加、沼ノ端停車などの要因が効いたと分析されている。uシート利用者の40%増とは実に驚異的な伸びで、今まで需要をつかめていなかったと評さねばなるまい。また、沼ノ端付近では人口増加があり、同駅だけで一日あたり40名の「すずらん」利用者がいるというから、全体の底上げ効果は決して侮れない。

781系
現役当時の 781系「すずらん」
南千歳にて 平成17(2005)年撮影

 鳴り物入りで登場した「スーパーカムイ」伸び悩みの原因については言及されていない。詰まるところ、 781系を 789系1000番台に置換したことでサービス水準のボトムアップが図られただけ、という実質が利用者に冷静かつ的確に評価された観がある。在来線ゆえにこれ以上のサービス水準向上は難しく、伸び悩むのも無理からぬところか。

 同記事には、ダイヤ改正における車両新造コストとして、 789系35両に70億円、 261系13両に32.5億円を要したと記されている。JR北海道としては思い切った投資をしたわけで、その効果が出ていないとなれば、今後の展開には苦しさが伴う。





■伸び率だけでは喜べない

 以上までのデータを用いて、いささか数字遊び的な試みになるが、各特急の一両あたり利用者数を試算してみよう。

列車名一日あたり
利用者数
基本編成列車定員
(基本編成)
一日あたり
運行本数
一両あたり
利用者数
スーパーカムイ(札幌−岩見沢間)9,731名5両283〜293名56本34.8名
すずらん972名5両293名10本19.4名
スーパーおおぞら(帯広−釧路間)2,178名7両353名14本22.2名
スーパーおおぞら(新得−帯広間)3,166名7両353名14本32.3名
スーパーとかち (新得−帯広間)579名5両250〜353名6本17.0名
とかち     (新得−帯広間)346名5両280名4本17.3名


 全体に目を疑いたくなるような数字が並んでおり、常識的な数字は「スーパーカムイ」くらいだ。「スーパーおおぞら」でも帯広−釧路間になると乗車率は五割を切っている。新得−帯広間では一見良好な水準に達しているとはいえ、多客期の増結を考慮すれば割り引く必要がある。

 「すずらん」は区間不詳ながら乗車率33.2%で、野球の世界ならば高打率だが、特急としては低い数字といわざるをえない。 781系時代から 1両増結したため、乗車率がむしろ悪化したのは、痛し痒しというところか。いくら利用者数の伸び率が高くとも、乗車率がかなり低いため、経営改善に寄与したかどうかは疑問である。「スーパー北斗」「北斗」との競合も気になる。

2611系
就役前留置中の「スーパーとかち」向け 261系
苗穂工場にて 平成19(2007)年撮影

 「スーパーとかち」乗車率は33.9%と「すずらん」同様に低く、「とかち」の乗車率は30.9%とさらに低水準になる。

 あるいは、この程度の数字でもJR北海道としては充分ペイしている、ということかもしれない。記事の意図は別のところにあるとしても、JR北海道をめぐる環境が端なくも示された格好といえよう。行間ににじむとは、まさにこのことだ。





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