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意味なき空騒ぎ





■讀賣新聞平成25(2013)年 5月27日付記事より


5万票開かれぬまま…小平市住民投票不成立

 「雑木林がなくなるのはさみしい」「いまさら中止にはできない」——。都道建設計画の是非を問う、小平市の住民投票が不成立に終わった26日、市民の間では様々な声が交錯した。投票者総数は 5万1010人で、このうち期日前投票が 1万 610人、不在者投票が 233人。約3000万円の費用をかけ、市民から投じられた投票用紙は、一定期間保管されるが、開票はされない。

(以下略)





■コメント

 近頃ではばかげた報道に接することが多いが、上記報道はその極致と評するしかない。ただし、本稿では都道建設計画じたいの是非については論じないし、そもそも論じる必要がない。手続があまりにも滅茶苦茶で、住民投票に諮る意義がまったくないからだ。

 この住民投票運動を主導したグループは、法的に無知であり、かつ行政的に無能である。あるいは、法的・行政的に正当な手続を踏んだ決定に対し、住民投票条例というもっともらしい旗印を掲げ、脱法的手法で覆そうとしている、順法精神のない集団である。

 したがって本件は、報道する視点はほんらい、住民投票運動の無知・無能さ、順法精神の無さに焦点が当てられなければならない。ところが、特にTVニュースを中心として、「民意が採り上げられない」と大袈裟に騒ぎ立てている。愚かしいにもほどがある。正論として「住民投票でなく法的に正当な手続を踏むべき」と諭す報道がまったく見られないのは、報道の偏向というものだ。



 話はごくごく単純である。

 当該道路計画は「小平都市計画道路3・2・8号線」である。即ちこれは都市計画道路であって、都市計画法に基づいて手続が進められる。東京都では環境影響評価手続もあるから、住民参画の機会は多い。

  パンフレット を見ればわかるとおり、住民の意見を反映させる機会は平成22年度に一度、平成23年度に三度あった。表面には出ない行政や議会への陳情を含めれば、期間も機会も充分あったはずだ。住民投票運動は、正当な行政手続に影響力を行使できなかった自らの無能さを前面に押し出しているという意味において、見苦しくかつ浅ましい。

 さらにいえば、正当な手続の結果決定された計画は尊重すべきである。ところが、自分らが納得できない計画だからといって、住民投票で覆そうという発想が決定的におかしい。まるで駄々っ子である。都市計画法には住民投票の規定がなく、住民投票結果の位置づけも曖昧であるゆえに、住民投票を実施する意義が不明という根本問題もある。「無知」と評する理由はここにある。いったい何を目的とする運動なのだろうか。

 ※本件を住民投票に付すと可決した小平市議会はさらに不見識である。行政の専門家でなければならない以上、おそらく確信犯であろうから、たちが悪いと評すべきか。小平市議会における 小平市長の意見 は、本件において最も正しいものだが、一連の報道では何故か正当に評価されていない。



 大衆感情に迎合しがちなTVニュースは、頑迷固陋な行政と闘う正義の味方の如く住民投票運動グループを描いているが、なんのことはない。行政に影響力を行使できず、法に順うこともなく住民投票を発起し、さらには小平市民の支持すら得られなかった、まさにアウトローの行動にすぎない。

 報じられる側も愚かだが、大々的に報じるマスメディアは更に愚かしい。公共放送までコーナーを特設して報じていたから、事態はかなり重篤である。しかも、報道の切り口が頓珍漢だから、救いがない。こういう無意味な報道があるから、マスメディア報道は油断できないのだ。

 ちなみに本件、事業主体は小平市ではなく実は東京都(都市整備局・建設局)であり、住民投票の結果がどのようになっても、法に定めがないアクションとして無視することは確実である。即ち、マスメディアは東京都が全く動かないと予め読みこんだうえで、住民投票運動グループに恩を売る形で空騒ぎしているに等しい。住民投票運動グループ・行政・視聴者の三者全てを侮る番組構成ではないか。

 筆者は本件のTVニュースに接して強い不快感を持った。最初は住民投票運動グループに対する不快感とも思われたが、それにしては強すぎるため、よくよく考え直してみると、TVニュースに侮られていると気づかざるをえなかった。面と向かってバカにされたようなものだから、不快になるのも道理である。もっとも、問題の根源がどこにあるか明確という意味において、貴重な事例になったとはいえるかもしれないが。





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