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未然に防げたはずなのに





■交通新聞平成25(2013)年8月5日付記事より


  4月 8日にJR函館線で特急「北斗20号」の床下から出火したトラブルで、JR北海道は 1日、引き金となった燃料調整部品「スライジングブロック」の破損原因が金属疲労だったことを明らかにした。
 スライジングブロックの破損により燃料が過度に供給され、エンジンが過回転状態となって連接棒の折損などにつながった。当初は当該のスライジングブロックが不良品と見て、新しい部品に交換する(2)などしていた。
 同様の発煙、出火事故は同じ特急「北斗」で昨年 9月18日と今年 7月 6日にも発生(1)。昨年 9月に破損したスライジングブロックは社内で紛失、 7月の運輸安全委員会が調査しているが、同社はいずれの破損も金属疲労が原因とみている(1)



 また、先月22日に根室線で特急「スーパーとかち 1号」のエンジン付近から白煙が出たトラブルでは、ナットの締め付け不足が要因で周辺の部品が次々に壊れた、と判断した。
 同車両ではエンジンからの油漏れがあって 4月に当該気筒を一式交換しており、その際の整備ミスの可能性(2)が高まった。



 ※「北斗」事故と「スーパーとかち」事故を分離するため、同じ記事内の文章を抜粋のうえ、前後を入れ換える編集をしている。なお、下線と番号は引用者が付した。





■コメント

 何をかいわんや、と絶句したくなるような記事である。事故は続けて起こる傾向があるとはいえ、(1)原因把握・(2)対策の両断面においてJR北海道の当事者能力は相当低い、と批判せざるをえない。

  183系「北斗」事故に関していえば、一年ほど前から同種事故が三件発生していながら、今頃ようやく原因を突き止められたという経緯がそもそもおかしい。あまりにも遅すぎる。破損部品紛失という大失態以前の問題で、的確な原因分析を速やかにできなかった事実は、どのように批判しても酷評にあたるまい。その結果、的確な対策が出来なかったのもまた、当然すぎるほど当然であろう。

  261系「スーパーとかち」事故は更に虚無感を覚えるものだ。トラブルが起こり、その対策を的確に実施できなかったのだから、救いがない。高い技術力・現場力が日本社会の特色であったはずだが、どうやら今日のJR北海道には当てはまらないようだ。

 JR北海道の優等車両中 183系が最古という事実は客観的に明らか。そのエンジン回りの老朽劣化をJR北海道はどのようにとらえていたのだろうか。ちなみに、 281系は経年十年程度でエンジン換装しているのだから、「走らせれば走らせるほどエンジンは傷む」という単純な因果律を認識できなかったとは思えない。

 未然に防ぎえた事故であるはずなのに防げなかった、JR北海道の病巣はかなり根深い。……と思っていたところ、更なる続報があった。





■北海道新聞平成25(2013)年8月8日付記事より


JR北海道 迅速な事故対応学ぶ JR東と初の意見交換

(前略)
 JR北海道は本社の安全推進部が一元的に事故、トラブルの調査と再発防止策を担当しているため、業務負担が重く、対応にも時間を要している。意見交換会終了後、森部長は報道陣に「JR東日本のやり方は、スピード感が全然違う。われわれは対策をとる際に、部門間の調整に時間をかけすぎていた」と話した。





■コメント(その2)

 国土交通大臣のきわめて異例な指導により、JR北海道はJR東日本の指導を仰ぐこととなった。その最初の会合後のJR北海道幹部発言が上記記事である。ごく率直にいって、感度があまりに低すぎるといわざるをえない。「部門間の調整に時間をかけすぎていた」とはほとんど寝言に等しい。そもそも「調整に時間がかかりすぎる」組織であるとの自覚がなかったあたり、JR北海道は安全意識以前に、経営マインドが低すぎたのではないか。

 JRグループのなかでは、JR北海道は相対的に弱小であるとは一応いえる。しかし、平成23年度中に 2件の気動車列車インシデント発生があったJR四国において、その後も事故頻発とはなっていない事実と比べれば、なんらか固有の問題があると見るのが妥当であろう。JR北海道が越えなければならない山は、険しさを増していると筆者は見る。





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