このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





先「有」後「楽」





■当日の衝撃

 平成26(2014)年 1月 3日10時頃、録画のためTVのスイッチを入れたところ、有楽町での火災を報じており、おおいに驚いた。曰く、朝 6時半に通報があり、東海道新幹線が全線運休になったままで運行再開の見通しが立たないという。

 この時点で筆者は、オペレーターがおちいったであろう悪循環を想起した。

   ・火災による抑止はすぐ解除できると想定したのであろう。
   ・それゆえ、列車を駅間に抑止したのであろう。
   ・ところが、抑止が長時間に渡り、二進も三進もいかなくなったのであろう。
   ・品川で折り返そうにも後の祭り。手配が間に合わなくなったのであろう。
    (初動時点で品川折返を決断すれば状況が大幅に改善した可能性もある)

 東海道新幹線運行再開の速報が出たのは、正午直前時点だったと記憶する。五時間以上に渡る抑止のため、当日の輸送が大混乱したのはよく知られているとおりである。





■どこまで即時対応するか

 上記の筆者想起は、今更公表しても実はほとんど意味がない。というのは、ほぼ同内容の分析記事が 産経新聞(平成26年 1月 6日付) から既に提供されているからだ。先見の明を誇ったところで、実行が伴わなければ意味はない。既報記事の模倣とみなされてもやむをえない。だから筆者は、これを強く主張しない。

 当日オペレーターがおちいったであろう錯誤には同情すべき点がある。沿線火災による長時間抑止という経験は近年少なく、展開を読み違えたことを批判するのは酷な面がある。しかしながら、利用者にしてみれば、そんなことは言い訳にもならない。ましてJR東海が何のために品川駅を新設したか、その意図を認識している者にとっては、「こういう時のために品川駅があるはずなのに何故?」と強い不信が芽生えたのではないか。

 鉄道での不通事故においては「予定していないことは出来ない」傾向が、本件に限らず他の案件にも幅広く認められる。「予定していない事象への即時対応」に至っては、ほぼ百%出来ないと言い切ってよいのではないか。

 システムが高度化し、要員はかえって減り、そのなかで高密度・高頻度運行を実施している今日、鉄道という交通機関が具備可能な「即時対応」には限度があるのではないか。本件に即していえば、抑止が翌日まで波及するほどの事態となれば、翌朝には品川折返をスムースに実行できたはずだ。しかし、時間単位での即時対応は出来なかった。

 「即時対応」が日単位になることがどこまで許容されるのか。本件は境界領域であり、利用者には許容されていないと考えなければなるまい。その反面、常時予定するには発生頻度が極端に低い案件(理由の如何を問わず東京−品川間「だけ」不通になる状況は想定しにくい)であることは否めず、JR東海にとっては対応が悩ましいところであろう。

 本件は局所的災害にとどまったものの、今後数年のうちに、大型の天変地異が来襲するはずだ。地名に絡めていえば、本件が「先『有』後『楽』」の知見を残すことを、せめて期待せずにはいられない。





■在来線抑止

 本件に関しては、在来線抑止に関してほとんど論じられていない点が気になっている。当日、有楽町地上を通る東海道線・山手線・京浜東北線もまた抑止されている。消火活動に伴い有楽町駅が封鎖されたため、やむをえない措置と思われがちだが、影響の甚大さを鑑みれば(報道されていた横須賀地下線の混雑状況は酷かった。新宿・渋谷・池袋あたりも酷かったのではないかと推察できる)打てる手はあったはずだ。

 具体的にいえば、少なくとも山手線に関しては、有楽町駅通過扱いとすれば消火活動を阻害することなく運行可能だったのではないか。これが実現しなかったのは、抑止時間の長期化を読めなかったからと解釈したい。もし仮に、先行きの読み違いでなく、この種の即時対応を本当に出来なかったのであれば、鉄道システムの硬直・梗塞はかなり重篤な域まで達していると考えなければなるまい。





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