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東海道新幹線N700Sの登場





■交通新聞平成28(2016)年 6月28日付記事より


新幹線に次世代車「N700S」


 JR東海の柘植康英社長は24日の定例会見で、N700系以来のフルモデルチェンジとなる東海道山陽新幹線用の次期車両 「N700S」を製造・投入すると発表した。駆動システムに次世代半導体の SiC(炭化ケイ素)などを採用し、小型・軽量化を徹底。床下危機配置の最適化で、さまざまな線区に各種編成長の車両を適用できる“標準車両”を実現する。……


(中略)
 コンバータ・インバータや変圧器などの小型・軽量化に伴う床下機器配置の最適化により、現在 8種ある号車種別を 4種へ最小化。基本設計を変更することなく、 8両や12両などさまざまな車両数の編成構成が可能になる。これにより他の新幹線線区や、海外高速鉄道への展開の可能性も広げる標準車両となる。



(中略)
 会見で、柘植社長は「車両メーカーが同形式の車両を継続的に製造することが可能となり、より高品質の車両を国内外に提供できる。標準車両の実現は画期的な新幹線の進化」と述べた。


(中略)
……広く国内外への展開を推進するには、柔軟な編成構成が可能な車両を低コストかつタイムリーに提供する必要がある。基本設計の変更なしで各種編成長を可能にした 「N700S」は、その命題をクリアするものだ。

(後略)






■コメント

 この報道に触れた時、如何なる理路で 4車種に集約するか、すぐには理解できなかった。 6月24日付のJR東海プレスリリース 別紙2を見てようやく納得。制御付随車・中間電動車各2タイプの計4種類、すなわち車両の機械配置による区分が4種類ということのようだ。グリーン車・普通車に代表される客室構造の違いによる区分もあるから、実際の形式区分はもっと多くなると思われるが、基礎となる機械部分がシンプルな構成になった意義は大きい。

 昔の電車といえば一両単位の組成が当然であったが、三桁形式の電車から電動車が二両単位になり、さらにいつの間にか交流電車では編成単位の組成が当然になってしまった。そのため、新幹線では編成の組み換えが容易でない状況となっている。 500系を16両編成から 8両編成に短縮するのは、意外な大改造となった事績もある。

 N700S が真の「標準車両」となるならば、日本の鉄道車両史の画期を刻む可能性もある。筆者は過去記事から一貫して 「鉄道車両においては、少数系列をつくることは可能な限り避け、標準車両・汎用車両を追求すべきである」 と主張しており、これが実現しないのは日本の鉄道が「井の中」にあることを示すと考えていた。

 もっとも、この批判はやや酷なものではある。車両メーカーにその意図があろうとも、目に見えない(日本的な)制約条件が介在してなかなか実現しなかったのだろう。新幹線で初めて「標準車両」を銘しうる車両が登場したことは、素直に喜ばしい。

 将来、JR東日本管内でも「標準車両」を基にした列車が走るようになれば、標準化の流れは本物だろう。障害は山ほどありそうだが、実現できれば面白い。(ごく個人的には、内装・乗り心地はともかく、高周波の騒音を撒き散らす某粗悪車両の置換を希望する)

 ただし、それでも尚、交通新聞の中見出しにある「海外展開飛躍の原動力」になるのは難しいと指摘しなければならない。米国テキサス州ダラス−ヒューストン間高速鉄道向けに多様な編成両数を組む必要性は順当でも、車両開発を鉄道会社が主導する手法そのものが世界的には異例で、理解・受容されるかどうか。そもそも、同高速鉄道がフィージブルな事業にならなければ、いくら良い技術があっても導入しようがない。

 ともあれ、継続した車両開発・新車投入、中央リニア新幹線建設、海外展開……。投資余力のある会社はやることが違う、と感嘆する。そして、投資余力のある会社の行動が、社会的風潮を醸成していく以上、良いことを蓄積してほしい、と念願するばかりである。





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