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━━ 日暮里・舎人ライナー開業シリーズ そのⅦ ━━


深夜需要への異なる対応





■赤羽駅東口25時10分の壮観

 赤羽駅東口の深夜──より正確にいえば「未明」の時間帯──は実に壮観である。国際興業バスが、京浜東北線・埼京線の最終電車を受け四方向に向かう深夜バスを、25時10分の同時刻発車で運行しているからである。

 四方向の行先は、東川口駅・東浦和駅・南浦和駅・鳩ヶ谷公団住宅。平成17(2005)年 9月15日までは峯八幡宮・新井宿駅・南浦和駅・鳩ヶ谷公団住宅だったから、運行範囲が拡大されていることがわかる。しかも、埼玉高速鉄道(SR)の沿線をかなり広い範囲で網羅しており、SRの終電が24時13分(赤羽岩淵発時刻)と一時間も早いため、SR不振の理由に挙げられることもある事象だ。

国際興業深夜バス
赤羽駅東口に揃う四方向の深夜バス(平成16(2004)年撮影)


 とはいえ、冷静に考えてみれば、バス四台が満員になったところで、高々 400名の乗車にすぎない。曜日による変動も大きいだろうし、割増運賃がなければ旨味のある商売ではないかもしれない。また、鉄道とバスとでは経営主体が異なる点も効いていると思われる。





■深夜バスを置換する日暮里・舎人ライナー

 これとは逆に、深夜バスを廃止し、軌道系輸送に集約するのが日暮里・舎人ライナーである。現在設定されているのは深夜04系統で、23時02分皿沼二丁目行から、24時38分舎人二ツ橋行まで、平日 7本(金曜日 8本)が運行されている。

 日暮里・舎人ライナー開業後、深夜04系統は廃止となり、役目を終える。その後を襲う日暮里・舎人ライナーは、23時以降の運行本数こそバスより少なくなってしまうものの、終電の24時38分は変わらない。運行間隔がやや間延びして、輸送力は大幅に増強される。サービス水準は良くなった、と考えるべきであろうか。

 軌道系交通開業後もなお深夜バスが隆盛を誇るSR沿線、軌道系交通が深夜バスを置換する日暮里・舎人ライナー沿線。この差はいったい何に基づくのか。県都境を跨いでいるとはいえ、地域特性に大きな差があるとは考えにくい。ということは、交通機関の特性によるところが大きいのであろう。実際のところ、同じ軌道系とはいえ、両者はだいぶ違うのである。

 日暮里・舎人ライナーが無人運転可能なモードのため、増便してもコストにあまり影響が出ないうえに、増便が要員増に連動しない点が絶大に寄与しているのではないか。深夜時間帯の要員確保は、コスト以前の問題として、労働条件からして有資格者を押さえるのが難しくなりつつある。日暮里・舎人ライナーとバスは同じ東京都交通局の運行である。どうしても運転士を確保しなければならないバスを捨て、無人運転可能(ただしセンターや主要駅に少数の管理要員が必要)な軌道系を導入するのは、むしろ当然の選択なのかもしれない。

埼玉高速
埼玉高速鉄道は終電が早い(平成16(2004)年撮影)


 無人運転で身軽な運営を志向する東京都交通局、昔ながらの人海戦術で深夜にひと稼ぎする国際興業バス、多数の要員を必要とするがゆえに早仕舞せざるをえないSR。各者の選択は斑模様である。





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