このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





平成20年度利用状況分析





■里48からは完全に飛躍

 日暮里・舎人ライナーの開業日は平成20(2008)年 3月30日。開業初年度は、厳密には平成19(2007)年度ということになるが、年度内の営業日がわずか 2日しかなく、しかも開業直後の熱狂に包まれた 2日である。日暮里・舎人ライナーの実質的な開業初年度は、平成20(2008)年度とみなして差し支えあるまい。

 既に紹介したとおり、日暮里・舎人ライナー平成20(2008)年度実績は48,943人/日と報じられている。これは事前の需要予測59,000人/日に対して83%に達しており、まずは立派な数字を叩き出したものだと高く評価できる。

 筆者は事前には、里48が平行路線として存続する限り、日暮里・舎人ライナーの利用者数は低迷するものと予測していた。なぜなら、里48は 200円均一料金で乗車できるため、遠距離区間になればなるほど割安感が増すからである。日暮里・舎人ライナーの高速性に利用者が効用を認め、高速性への対価を利用者が負担する、という理論が実際に成立するのかどうか。東京23区における足立区の位置づけからして微妙なものがある、というのが筆者の読みであった。

里48
バスベイに進入する里48(日暮里駅前にて)


 現実はどうなったか。里48の利用者は相当部分が日暮里・舎人ライナーにシフトしたと見てよいだろう。筆者は実見から、日暮里・舎人ライナー開業前の里48利用者数を20,000〜30,000名/日程度と推測している。

 里48の利用状況は、日暮里方で全席が埋まるかどうか、という線にまで落ちこんでいる。かつての寿司詰め混雑は遠い昔話となった。運行本数も大幅減となっているから、利用者数の減少はきわめて大きい。開業後一年半が経った今日、里48に乗車する利用者数は高々3,000〜5,000名/日程度になったと推測できる。

 即ち、里48利用者のうち約八割が日暮里・舎人ライナー利用にシフトしたのではないか。そればかりでなく、王40や王47といった近接するバス路線からも、日暮里・舎人ライナーは利用者を吸い上げているように思われる。

マップ
はるかぜ第Ⅹ弾を中心としたバス路線図


 以上の意味において、日暮里・舎人ライナーは成功をおさめたといえる。また、高速性の効用に対し高水準の運賃を負担する、という理論どおりの行動を利用者が採っている点についても、理論と実際の典型例として特筆に値するだろう。通勤定期の場合、真に運賃を支払っているのは雇用者かもしれないが、便利な交通機関には対価を払うという原理が顕現していることは間違いない。





■各駅の利用状況

 それでは、各駅の利用状況についても分析してみよう。

乗降実績表
各駅の一日あたり乗降実績表


 日暮里(第 1位)・西日暮里(第 2位)の乗降客数が突出して多いのは、山手線・京浜東北線・千代田線などと接続する以上、当然すぎるほど当然であろう。熊野前も第 5位と上位に食いこんでおり、荒川線との結節機能の意義が端的に示されている。

 路線中間には西新井大師西にピークがあり、以北では綺麗な漸減線を描いている。ここで注目に値するのは、見沼代親水公園の乗降客数が意外にも第 3位につけ、わずかながら西新井大師西を超えている点である。駅近傍の人口分布からすれば、舎人に近い値となるはずだが、舎人の倍近い乗降客数があるわけで、いささか語弊はあっても「意外」と形容するほかない。

 見沼代親水公園の乗降客数が多い理由を合理的に分析するならば、おそらく、草加市内から幅広く利用者を集めているのであろう。接続するバス路線の運行本数が少ないことを鑑みれば、アクセス手段は自転車・バイクが中心と想定される。あるいは、草加駅に行くには国道 4号を横断せねばならず、かといって川口駅に行くには遠すぎる、という地理的状況から、K&Rが発達しているのかもしれない。

 また、降車>乗車となる駅がわずか 4駅(西日暮里・西新井大師西・舎人公園・見沼代親水公園)しかない点も、実に興味深い。東京都心で深夜まで過ごし、伊勢崎線との接続をとりそこない(あるいはさらに接続するバスが終車となっているため)、日暮里・舎人ライナーに乗り沿線各駅までやってくる、という行動形態が目に浮かぶようだ。もっともこれは想像の域を出ないので、機会あらば実見・実測したいところである。





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