このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

 

一枚の乗車券が残す感動

 

 

 いささか旧聞になるが、昨秋に高尾山に登った。登ったとはいっても、ケーブルカーに乗っているから、歩いた距離はたいしたものではない。紅葉の盛りにはまだ早い時期で、ほんの何本かが燃えるように鮮やかな色づきを示していた。この様子では、紅葉の最盛期はおそらく次週以降だったはずで、惜しいことをした。

 盛りにはまだ遠く、しかも日没に近い時間帯だったとはいえ、山上はかなり混んでいた。それも日本人ばかりでなく、外国人観光客の姿も多かった。中国・台湾・韓国系だけではなく、インド系ほかアジア各国からの観光客も散見された。これもやや意外だったことで、今まで必ずしも著名とはいえなかった場所にまで外国人が赴くようになった状況に、国際化のしずかな深度化がうかがえた。

 

 

 さて、ケーブルカーに乗ろうとして、窓口で乗車券を求めた時の話。ただ単に往復乗車券を求めたつもりが、出てきたのは「高尾山ケーブルカー55周年記念乗車券」であった。パスネット等の磁気カードを一回り大きくしたサイズのプラスチック製で、角度を変えると異なる図柄が浮き出てくる。片や紅葉、片や新緑という好対照、うまいつくりだ(上の画像は紅葉の角度でスキャンした)。

 以前このケーブルに乗車した際には、薄っぺらで味気ない回数券のような乗車券が出てきた記憶があるだけに、乗客の心に届く演出だと感じた。勿論、55周年という時期に偶然あたっただけのことかもしれないが、日頃から活用すればさらに良いと思われた。観光にくる乗客は、なんらかの感動を求めているのだから、ほんのちょっとした気遣いと演出で、のちのちの心証まで違ってくるのではないか。

 モータリゼーションが進んだ今日、観光地にくる手段として公共交通を使う乗客は貴重である。まずは感謝ともてなしの心を持つことが大事であって、さらにそれを上手に表現するならば、あたたかい連鎖が育っていくような気がする。

 

 

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