このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





平成28(2016)年・鉄道の論点





■平成28(2016)年最大の話題

 平成28(2016)年における鉄道の話題のうち最大のものといえば、北陸新幹線大成功の顰に倣っていえば、北海道新幹線新函館北斗開業でなければなるまい。しかし、そこそこの成功はおさめられるとしても、北陸新幹線なみの大成功を期待するのは難しい、と考えざるをえない。

東北新幹線
三編成ならんだE5系編成
新青森にて 平成24(2012)年撮影


 なによりも痛いのは、運行本数の少なさである。新「はやぶさ」の運行本数は、現行の「(スーパー)白鳥」と変わらず11往復。新・区間「はやて」の 2往復は、「はまなす」「カシオペア」「北斗星」の代替と考えれば純減と評することさえできる。

 筆者の認識では、新幹線最大の強みとは、速達性が伴う運行本数にある。「のぞみ」が10分毎に運行される東海道新幹線は、言葉どおりの「待たずに乗れる」高速列車であり、時刻表を持つどころか、覚える必要さえない。直近の記事に記した北陸新幹線の大成功も、長くとも一時間待てば列車がやってくる点が航空と比べ優位、と利用者に思われたことが効いたのではないか。

 これらに対し、北海道新幹線は運行本数に関する限り、従前と比較してサービス水準がほとんど変わらない。新幹線開業のアナウンス効果があるから、利用者数が伸びることは間違いなくとも、飛躍的に伸びるとまでは期待できない。

青函トンネル
青函トンネル本州側出口(当時は「スーパー白鳥」前面貫通扉から撮影可能)
平成17(2005)年撮影


 発表された時刻表は、筆者にとって期待はずれどころではない。失望さえ覚える。

 諸々ひっくるめて、ダイヤ編成権をJR東日本が握っておりJR北海道の利益があまり顧慮されていない、と見受けられる。例えば、新「はやぶさ 1号」の東京発時刻は6:32と如何にも遅いが、これは東京→仙台間の需要を考えれば妥当な線で、JR東日本にとっては動かしがたいところだろう。6:00発臨時「はやぶさ」が予定されていると透けて見えるのは救いとしても、大宮・宇都宮発の需要をとりこむことまで考慮されているのかどうか。

 現状で、東京・大宮−宇都宮間の需要がかなり多く、かつJR東日本が利用者層の遠近分離策を採っている(例えば「かがやき」全列車高崎通過)以上、「はやぶさ」の宇都宮停車は期待薄である。そして、この点は北海道新幹線の需要喚起の妨げになることは確実である。「やまびこ41号」→「はやぶさ 1号」の乗継で充分、と割り切っているのだろうが、利用者はこの種の乗継を好感することなどありえない。不安要素である。

 上り列車についても同様のことがいえる。新「はやぶさ10号」新函館北斗発時刻が6:35とは、現「はやぶさ10号」のダイヤを動かさないからこその設定といえる。いま少し時刻を繰り上げるという発想は、まったく見えない。

 運賃の高さに関しては、既存新幹線からの内部補助を得られないJR北海道としては、不利と承知でも「初乗り加算」をせざるをえない、ということと理解する。苦しい決断というしかないが、あまたの第三セクター都市鉄道(北総・東葉など)と同じ轍を踏むことになりはしまいか。国鉄分割民営化による弊害の一断面である。

 期待よりも不安が先に立つ新線開業事例など、近年稀といわなければなるまい。今年は申年、ところが筆者の念頭からは不安が去らない。





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