このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





超高齢化社会の恐怖





■まずは事実関係

 新年早々の嫌な見聞を、敢えて書き留めておく。

 土曜日朝 8時頃、筆者は江北橋通りを西進していた。「はるかぜⅥ・ⅩⅠ」扇小学校北停留所を過ぎ、Ⅵ・ⅩⅠが別れる交差点でちょうど赤信号となり停車した。筆者車の停車位置から横断歩道までの間に他車はなかった。

 北側からの道路に青信号がともる。大型トラックが交差点に進入し、左折しようとする。交差点角には扇小学校に登校すると思われる小学生の一団があり、地域ボランティアの方が横断旗を差し出し、横断歩道上に小学生の進路を確保しようとした。

 ところが、大型トラックは止まらずに左折を続け、低速度のままとはいえ、横断歩道に入りこんできた。地域ボランティアの方は慌てて旗を引っ込め、全身で小学生らの歩みを押しとどめた。トラックはそのまま東へと進み、その場を去った。

はるかぜⅥ
鹿浜五丁目団地で出発待機中の「はるかぜⅥ」
平成16(2004)年撮影





■考えられる原因

 交通事故寸前の危険な状況である。地域ボランティアの方が退かなければ、確実に事故に至っていた。原因は二つ考えられ、どちらにせよたちが悪いと指摘しなければならない。

 右ハンドル車の左折だから、確かに最も見えにくい場所に小学生の一団はいた。しかし、赤信号で停車し、手前側から低速度で進行してきた以上、視野に全く入らなかった可能性は低い。地域ボランティアの方が体ごと横断旗を差し出していたから、見えなかったわけがなかろう。もし本当に見えていなかったならば、当該トラック運転手の認識能力は極端に低い、といわねばならない。

 もう一つ考えられる原因は、見えていながら故意に止まらなかった、悪意に基づく判断である。小学生の集団登校は統率力に欠け、動作が素早いとは決していえない。期待する速さで動き横断歩道に入らないならば先行してしまえ、と意図的に踏みこんできた可能性がある。確かめようもないが、もしトラック運転手が本当にそう考えていたならば、相当に悪質、と厳しく指弾しなければなるまい。

 断定は危険と重々承知のうえ、「彼」は敢えて横断歩道進入し、小学生らの先を越そうとしたと、筆者は見る。荒っぽい運転、という域ではない。とんでもない危険人物である。地域ボランティアの方を轢く勢いで横断歩道進入したからには「こいつらトロくさい!」という類の本音——憤懣ともいえる——を抱えていたと解釈することもできる。

 青信号で横断しようとする歩行者は、優先的に保護されるべき対象である。道路交通法第38条を持ち出すまでもなく、教習所や免許更新時に口酸っぱく説かれる事柄で、これを認知していないドライバーがいるとは考えられない。さりながら、当該トラック運転手が故意に横断歩道進入したならば、話はまた別である。

 そして、当該トラック運転手の風貌は、筆者が見る限り、還暦を超えていた。おそらくは高齢者と呼ばれる年齢に達していると思われる外見だった。

はるかぜⅥ
まさに当該現場(扇小学校北→江北一丁目)を走行中の「はるかぜⅥ」
平成16(2004)年撮影





■超高齢化社会の恐怖

 近年、高齢者による交通事故が増加しているという。それじたいは、高齢者人口増加に連動している話にすぎず、奇異とするに足りない。その一方で、高齢者特有の要因による増加がありうるならば、なんとも怖ろしい。前述した認識能力低下はよく指摘される要因の一つであろう。そして「故意犯」の存在がありうるならば、さらに恐怖である。自動車という生身の人間には抵抗できない強力な「武器」を操る人間の心理がまともでないとは、「何とかに刃物」なる喩えそのものではないか。

 「 キレるお年寄りにどう向き合う 増える暴言・暴力トラブル 」は和田秀樹のコメントとして「高齢者は……もともと『キレやすい』『怒り出すとコントロールが利かない』という理解で接するべき」と述べている。先行記事の「 『横暴すぎる老人』のなんとも呆れ果てる実態 」にも同主旨の記述がある。すなわち、それが高齢者の特性ということだ。

 科学・医学の見解が上の如しであれば、尚更暗澹とせざるをえない。本稿で紹介した例に見られるように、交通事故の危険は(対高齢ドライバーという観点において)増す一方であるように懸念されてならない。交通事故による死亡者数が年々減少している状況とは真逆のベクトルが局地的に働いている……のかもしれない。さらに自尊感情や承認欲求が高齢ドライバーに強ければ、事故を促進する要因になること間違いない。

 最大の恐怖は、自分自身が超高齢化社会の真ん中に近づいている、冷厳な事実にある。五十の坂を超え、初老の域に達し、自ら老いを感じる場面が増えてきた。「キレやすい」「怒り出すとコントロールが利かない」人物にならないよう自制・自戒できるか。正直なところ自信はない。

 日本の高齢化率は内閣府「平成28年版高齢社会白書」によると26.7%という。筆者自身、公共の場で「キレやすい」「怒り出すとコントロールが利かない」人物を見かける機会が増えたと感じる(特に都バス乗車時)。筆者が高齢者年齢に達するころ、高齢化率は三割前後になっているらしい。周囲に増え、自らもそうなるかもしれない。気が重いことだ。

 ともあれ高齢ドライバーによる交通事故の危険——しかも固有の危険——は確実に存在する。交通事故には至らずとも、トラブルの危険は更に大きい。本稿はその実例の一つを示すものである。読者諸賢も警戒されるとよかろう。





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