このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





不振に理由あり〜〜スカイマーク新千歳便





■羽田−新千歳便の大不振

 先の記事では批判の対象としたスカイマーク羽田−新千歳便であるが、実際に参入した後どうなったかといえば、極端な不振に陥っているという。五月の連休まではそれなりの数字を残したものの、羽田−新千歳便に参入する四社中の最下位であり、連休後の搭乗率は五割を切っていると報じられている。格安運賃を維持するためには高水準の搭乗率確保は必須であり、経営面では相当苦しい状況にあると推測される。現に、減便が行われるという報道も見られている。





■不振の理由

 スカイマークが設定した運賃は、日航や全日空の最も安い特割運賃よりもさらに安い。東京−大阪間の航空大躍進に見られるように、格安運賃は交通機関の魅力を構成する要素の一つとなることは間違いない。しかも、利用者なかんずく道民は価格に敏感だ。しかし、羽田−新千歳便では格安運賃が魅力と受け止められていない、といえる。

 スカイマーク 新千歳空港に着陸するスカイマーク機

 その理由について、筆者は偶然にも感じとる機会を得られた。上の写真は筆者が新千歳空港に行った際、撮影したものである。本命はこの後にやってくる日航機の着陸風景で、スカイマーク機の着陸はなにかの資料に使えればいい、という程度の気持で撮ったものだ。

 スカイマーク機は、着陸後ターミナルの前につけず、離れた場所に駐機した。それゆえ拡大写真がないのだが、よくよく考えてみれば無理なアングルであっても、こちらの写真を撮っておいた方が資料的価値はよほど高かった。利用者はタラップを降り、バスに乗り換えて、ターミナルビルに向かったからである。

 ボーディングブリッジで乗降できるのが一般的な状況である今日、タラップ乗降というのは不便だ。新千歳空港ターミナルビルのつくりはコンパクトで、ボーディングブリッジ経由で降機すればごく短時間で外に出られる。しかし、タラップ乗降でバス乗換では平均的に 5分ほどロスするだろう。たかが 5分程度のロスとはいえ、そもそもタラップ乗降・バス乗換という二重の物理的バリアもある。

 筆者は詳細を承知していないものの、羽田空港でも似たような状況なのであろう。羽田空港ターミナルビルは実に広い。タラップ乗降ではないとしても、最端部の搭乗口を割り当てられれば、ひどく長い距離を汗にじませて歩くか、動く歩道の退屈な小旅行を味わう羽目になる。

 いくら運賃が安くとも、安いには安いなりの理由がある、と利用者に認識されてしまえば、安さとその代償との比較考量にならざるをえない。同じ格安キャリアでもエア・ドゥはここまで不利な扱いをされてはいない。その差が出た、ということではないのか。同じスカイマークでも神戸便が好調なのは、空港そのものが新規開業であるため、不利な扱いを受けずにすんでいるからではないのか。

 需給調整規制が撤廃されたといっても、完全な自由競争が展開されているわけではなく、どこかに「見えざる手」が働いているように思われる。そもそも、巨大なインフラを必要とする交通事業に完全な自由競争などありえるはずがない。スカイマーク新千歳便の意外なまでの大不振は、「破格の低価格運賃を提供しさえすれば客がつく」という発想がただの幻想にすぎないことを示唆するものであろう。利用者は、低価格運賃を期待しつつも、提供されるサービスに対しても厳しい目を持っている。

 その意味においてスカイマークは市場を読み誤っており、しかも簡単に方針転換できず自縄自縛におちいっている可能性が高い。鹿児島便を捨てることは簡単でも、「格安運賃提供」という戦術を捨てては会社としてのレゾンデートルを失いかねないからだ。所詮は自業自得ともいえるが、スカイマークの不振と迷走はまだまだ続きそうな予感がする。





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