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航空減便の周辺





■プレスリリース

 全日本空輸(平成20年 8月 6日)と日本航空(同 8月 7日)は、相次いで路線見直しを発表した。「燃油価格が高騰する中……徹底的な見直し」( 日本航空 )、「1バレル=950ドルと見込んでいたドバイ原油価格は、2008年 7月度平均で約 1.4倍の1バレル130ドル台……2008年度の燃油比も前年比 400億円以上となり、約3000億円を超える見込」( 全日本空輸 )と、いずれも航空燃料高を前面に出している。

 具体的な路線見直しの内容は下表のとおりである(国内線のみを表示)。

動向\会社日本航空全日本空輸
増便羽田−松山
羽田−宮崎
成田−福岡
伊丹−新潟
中部−札幌
羽田−佐賀
減便関西−札幌
関西−福岡
関西−那覇
小牧−熊本
羽田−関西
羽田−大島
関西−女満別
関西−千歳
関西−沖縄
中部−松山
千歳−仙台(AirDoコードシェア化)
鹿児島−沖縄(SNAコードシェア化)
休止関西−仙台※
関西−花巻※
関西−秋田※
神戸−鹿児島※

花巻−那覇(季節便)
仙台−那覇(季節便)

関西−函館
関西・伊丹−福島
中部−福岡

福島−那覇(JTA)
高知−那覇(JTA)
長崎−沖縄(SNAコードシェア化)




■コメント

 報道の偏向を指摘する以前に、広報・宣伝が巧くない点に驚かざるをえない。このたびの「見直し」は両社ともスクラップ・アンド・ビルドであり、増便を行う路線があるにも関わらず、この点を伝えているマスメディアは少ない。休止路線対応に神経を遣いすぎ、前向きの話題を強調し損なっている観がある。また「休止」であるはずが「廃止」と報道されている点も厳しい。前者は運行再開の可能性があるのに対し、後者にその含みはなく、読者に与える印象がまったく異なる。

 特に日本航空における季節便の運行とりやめまで「廃止」と報道されてしまったのは、痛恨のミスリードであろう。これこそ素直に「休止」と伝えられるべきであり、そうならなかったのは、情報の出し方になんらか問題があったからではなかろうか。

 全日本空輸・日本航空とも、関西空港発着の減便・休止路線が集中していることも着目されている。ことに日本航空は休止路線が多いだけに、一見すると話題性が大きいようにも見える。しかしながら、この点を強調するのは少々ばかげていると指摘せざるをえない。なぜなら、※を付した路線は伊丹空港発着の路線が残るからである。

 関西圏における空港問題を横に置くとすれば、地域間を結ぶ路線の存廃と、関西空港の安定経営は、まったく別次元の問題である。関西圏から仙台に行く航空路線がなくなれば、それは確かに困るだろう。ところが現実には、関西−仙台間の路線(わずか日に片道 1便)がなくなるだけで、伊丹−仙台間は残る(こちらは日に片道 6便)のである。

 よってこれは、関西空港の経営を云々する以前に、日本航空の空港選択について論評を加えるべきなのである。ごく率直にいって、日に数便しかない路線の発着地を複数の空港に分散させるとは、非効率極まりない選択と断じざるをえない。首都圏−関西圏ほど太い需要があれば話は別だが、需要が細ければ「選択と集中」が生命線である。それは無論、関西空港だけが対象ではなく、神戸−鹿児島間にもあてはまる事象なのだ。関西圏のどの空港を選択すべきか、ここでは敢えて言及を避けるが、日本航空の選択が上手でないことは確実である。

 ちなみに全日本空輸は、関西圏三空港での発着を特定空港に集約する傾向が認められる。さらに、需要が細い区間では無理に直通便を維持せず、乗継便を駆使しており、賢く効率的な運用を行っていると見受けられる。

 もう一点全日本空輸の「賢い」断面を指摘するならば、減休止対象便を他社へ移管したうえでのコードシェア化である。自社では採算がとれない便も、賃金体系が異なる他社が運行すれば採算がとれる、ということか。利用者にとってはサービスが残ることじたいがありがたい一方、賃金水準を落としこむ要因がまた一つ増えるわけで、社会全体で見れば悩ましい状況である。





■注目点

 このプレスリリースで重要なのは三区間ある。一つは関西・伊丹−福島間で、日本航空は関西圏と福島を結ぶ路線をまったく休止してしまう。全日本空輸の路線が存続するとはいえ、ボンバルディアCRJ だから輸送力がおおいに後退する。関西圏と福島の結びつきの弱さが透けて見える事象である。

 もう一つは伊丹−新潟間で、関西圏発着でこのたび唯一増便となる区間である。地域間の交流が伸びているからこそ増便がなされるわけで、その背景を的確に分析できるならば、関西圏経済活性化のヒントになるかもしれない。地域間の結びつきの強さがわかる断面といえる。

 最後は中部−福岡間で、日に片道 4便ある路線を運休するとは、かなり思い切った大鉈ふるいである。全日本空輸に完敗した、あるいはN700系のぞみとの競合に劣後した、との見方も一応できる事象ではある。ところが、小牧−福岡間をやはりボンバルディアCRJ で存続させる(日に片道 5便)という、なんとも興味深い取捨選択を行っている。敢えて器を小さくして成功するかどうか、全日本空輸や新幹線との共存共栄はできるのか、注目を要する区間である。





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