このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





設計思想がそもそもおかしい





■停電時に使えない太陽光発電

 東日本大震災なかんずく福島原発事故により、首都圏への電力供給は極端に逼迫した。そのため一時、計画停電が実施された事実は周知のとおりである。筆者宅は、東京23区内では数少ない計画停電地域に引っ掛かっており、一日に二度も停電になった日すらあった。

 筆者は当初、たとえ停電があろうとも、日中ならばなんとかなる、と考えていた。なぜならば、筆者宅では太陽光発電を装備しているからである。

太陽光発電パネル
筆者宅屋根上の太陽光発電パネル


 発電能力は最盛期で 2.7kWほど。曇天で 1.0kW程度でも日常利用の電力は充分賄えるし、 2.0kW程度あればエアコン一機を回してもほぼ対応できる。だから、日中停電になろうとも拙宅は停電を免れる、と考えていたからだ。

 ところが、この考えは甘かった。太陽光発電は停電すると機能しない、所謂「使えない」シロモノなのであった(※ただし近年開発されたシステムには停電時にも機能維持可能なものもある)。

 太陽光発電は、電力売買とセットになっている。発電した電力は家庭内で優先的に使用され、余っている時間帯には東京電力に売電する。逆に発電した電力だけで家庭内の電力を賄えない時間帯には、東京電力から買電する。太陽光発電を整流し、電力売買の切替を行うのがパワー・コンディショナーである。

パワー・コンディショナー
筆者部屋の一隅にあるパワー・コンディショナー(晴天・午前)


 パワー・コンディショナーを動作させるため、外部電力が供給されている。即ち、停電になるとパワー・コンディショナーの機能が停止してしまう。たとえ太陽光発電パネルが全力で発電していようとも、パワー・コンディショナーが止まっていると電力が遮られ、家全体が停電におちいる、というわけだ。

 停電時に太陽光発電を使用する方策もいちおう存在する。そのためには自立運転モードに切り替えなければならない。その手順がまた面倒なうえ、パワー・コンディショナーの専用コンセントから延々とコードを引かなければならない。

 次回停電時には自立運転モードで切り抜けよう、と考え面倒くさい準備を終えた頃には、計画停電が終了していた。神経を逆撫でにされた気分で、癪である。

自立運転モード用コンセント
パワー・コンディショナーの専用コンセント


 筆者は今回初めて、デジカメを通じてこの専用コンセントの姿を確認した。部屋の隅に面しているから肉眼で確かめるのはそもそも困難だ。停電時最優先の電力使用は一階台所にある冷蔵庫で、二階の部屋からは何本も延長コードをつながなければ電力が通じない。まったくもって「使えない」システムではないか。





■設計思想がそもそもおかしい

 パワー・コンディショナーが前述のようなカラクリになっているのは、なんとなく理解できないわけではない。

   ・時々刻々変動する発電量を整流し
   ・家庭内の電力使用状況をモニターし
   ・電力売買をコントロールする

 ためにはパワー・コンディショナーは外部電力によらざるをえない、という判断だったのだろう。しかしながら、そのために、太陽光発電が(事実上)自立運転不可能となったのは、かなり重大な欠陥と指摘せざるをえない。東北地方の被災者と比べれば天地の開きがあるとはいえ、計画停電の迷惑を被った身としては、声を大にして主張したい。

こんなバカげた設計思想ゆえ
福島原発事故が起こるのだ!


 と。福島原発においても、巨大な発電量を擁しながら、外部電力を喪失することで激甚事故を惹起したではないか。

 一事が万事である。専門の蛸壷に安住し、設計全体を俯瞰する能力が低い。現実にありうる状況を想定できない。使い勝手を考慮していない。日本の高度成長を支えた電気技術は、古今未曾有の危機に直面して、その思想の脆弱さ(あるいは思想性のなさ)が顕在化したといえよう。





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