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観客不在のキックオフ
■浦〜和レッズ!(ドドンガドンドン!)
Jリーグ最後のチャンピオンシップは1勝1敗の五分に終わり、延長戦でもなお決着がつかず、PK戦を制した横浜Fマリノスが2年連続優勝を飾った。手に汗を握る白熱した試合だった。
私は浦和レッズを応援していたので、この結果そのものは残念に思っている。しかし、三都主がフリーキックを決め、中西が退場して数的有利に立った時点で、第2戦は1−0で終わり、延長戦でも点が入らず、PK戦の結果負けてしまうだろうという直感が働いたこともまた、告白しておかなければなるまい。
その理由はうまく示すことができない。ただの直感である。横浜は、強いチームというよりもむしろしぶといチームで、守りが実に堅く、肝心な試合を落とすことがない。中澤などは、ヴェルディ時代と比べて顔つきがすっかりよくなり、今や名実ともに日本を代表する選手に育っている。横浜のしぶとさに合理的な理由を与えるとするならば、この一文が的確であると確信している。
【スポーツナビ】横浜FM強さの理由(横浜FM1−0鹿島)
要するに、横浜は心技体ともに最盛期の選手が揃ったチーム、浦和はこれから最盛期を迎える上り坂のチーム、という差が出たのだろう。延長戦でエメルソンが退場を食らったあたり、まだまだ若いというか青いというか。
PK戦には「運試し」の要素もあるが、勝利の女神は若いレッズ・イレブンにほほえむことはなかった。それはおそらく必然で、勝利を目指して緻密に試合を構成した者たちには栄光を与え、まだ若く伸びしろがある者たちには挫折と目標を与えたのであろう。浦和レッズは、優勝を逃したことでまた強くなる。このたびの結果は残念なことだが、だからといって落胆する必要はないとも思っている。
■サポーターに対する配慮のなさ
試合じたいはおおいに盛り上がったチャンピオンシップであったが、スタジアムに来場したサポーターに対する配慮が著しく欠けていたことを指摘しなければならない。それはキックオフが遅すぎるという点である。
前後半90分できっちり決着する試合であれば、19時半キックオフであってもかまわない。だが、延長戦がありえる展開で、しかも優勝表彰式が必ずある以上、19時半はあまりにも遅すぎる。埼玉スタジアムから最寄の浦和美園駅までは徒歩約20分を要する。しかも浦和美園駅は階段幅が狭く、臨時ホームを駆使してさえなお、利用者の流れをさばくには時間がかかってしまう。このたびのチャンピオンシップや国際試合のような6万人級動員試合では、試合終了から概ね1時間半ほどかけないと、利用者の流れはひかないのだ。
国際試合で19時半キックオフだと、試合終了時刻はだいたい21時半。そこから1時間半かかると既に23時だから、神奈川・千葉・東京西部に帰るにはかなり厳しい時刻である。しかるに、チャンピオンシップのPK戦が終わったのは22時半。これでは「今日はどこかに泊まれ」あるいは「試合を最後まで見るな」のいずれかを強要しているに等しい。まさに「究極の選択」ではないか。
埼玉スタジアムの冬の夜は、底冷えがきつく、実に寒い。どちらのチームの応援であれ、スタジアムに敢えて足を運ぶような観客は大事にするのが筋であろう。試合終了後の余裕ある行動を考えるならば、日中開催が当然の配慮ではあるまいか。
現状の19時半キックオフという時間設定は、おそらくTV放送に配慮してのことに違いあるまい。放映権料が大切な収入源である以上、おざなりにするわけにはいかないにしても、生身の観客はさらに大切にしてしかるべきであろう。暖房の効いた茶の間の視聴者、冬の夜の寒さに耐えてスタジアムに通うサポーター、どちらを大事に遇するかという選択を求められれば、答はおのずと明らかであるはずなのだが。
そして、この配慮のなさは観客も認識している可能性を指摘しなければならない。この試合の観客動員数は59,715名、埼玉スタジアムでのJリーグ公式戦最高動員記録60,553名(平成13(2001)年10月13日/浦和−横浜F戦)に届かなかったばかりか、チャンピオンシップ第1戦の64,899名(12月 5日/横浜国際競技場)から大きく引き離されてしまったのである。
サポーターはチームの応援団であると同時に、試合の観客であり、いいかえれば厳しい選別眼を有する消費者でもあろう。第1戦と第2戦の観客動員数を見れば、サポーターの行動原理は決してファナティックなものではなく、合理的な裏づけがあると考えられる。かような観客を措くようなキックオフ時刻の設定は、一考を要する問題といえるだろう。
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