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空港アクセス鉄道が成立しにくい理由
鉄道(モノレール)がアクセス交通手段となっている空港を、以下に列挙してみる。
千歳
仙台(建設中)
成田
羽田
中部
伊丹
関西
福岡
宮崎
那覇
日本最初の空港アクセス鉄道、東京モノレール。追い抜きがないとはいえ、快速の設定は利用者の心をくすぐるヒットだ。平成16(2004)年撮影。
三大都市圏の空港は全て網羅されていることがわかる。そのほかの空港も、主要路線が集まる需要の多いところが揃っている。そのなかで、宮崎は例外的な存在といえる。需要が多いとは決していえないが、後背地があまりに広大であることから、アクセス鉄道整備と幹線鉄道高速化を併せて具体化させた珍しい事例である。
それでは、なぜ地方空港では鉄道によるアクセスが成り立たないのか。利用者の絶対数が少ない、という点がまず考えられる。確かにもっともな理由であるが、例えば山口宇部空港のように、至近距離に鉄道駅が存在するというのに、鉄道がアクセス交通として利用されていない事実を、どのように理解すればよいのだろうか。
山口宇部空港の全景。駐車場はマイカーで一杯である。草江駅とあわせ、平成16(2004)年撮影。
JR西日本宇部線の草江駅。このスケールではわかりにくいが、写真左奥に空港のアンテナが見える。
駅から空港までは徒歩10分もかからないが、連絡はまったく考慮されていないに等しい。
これは逆に考えてみるとわかりやすくなる。鉄道によるアクセスが成り立つ空港の条件とは、いったいなんだろう。
千歳空港は、鉄道アクセスが成立しうる典型例である。まず利用者の絶対数が多いうえに、利用者の大部分が札幌を発着地としている。勿論、恵庭や苫小牧や室蘭などを発着地とする利用者も確かに存在するとしても、最も多数を占めるのは札幌発着の利用者である。つまり、千歳空港と札幌との間には、鉄道アクセスが成立するほどの需要が存在することになる。
南千歳を出発する快速「エアポート」→「スーパーホワイトアロー」。日本最初の「本格的な」空港アクセス鉄道である。平成17(2005)年撮影。
他の空港についても同様のことがいえる。一般的にいって、空港は都心から離れて立地することが多い。それゆえに、空港−都心間には旺盛な需要が存在するのである。
ところが、地方空港ではそうはいかない。地方空港も立地は郊外という点は同じだが、地方都市は都心の集積性が低く、利用者の発着地が薄く散らばる傾向にある。さらに利用者の絶対数が少ないこととあいまり、太い需要を擁する明確な線が成り立ちにくい。
例えば松本空港では、松本市内へのバス路線こそ今でも存続しているものの、県都長野市に直通する路線は廃止され、松本インターで松本−長野間の高速バスに乗り換える形になっている。つまり、松本市内からは空港までのバス路線が成立するほど需要が集積しているが、長野市内からはさほどの需要集積はない、ということだ。
松本空港で出発を待つシャトルバス。行先は松本インターで、そこで長野行の高速バスに乗り換えなければならない。平成15(2003)年撮影。
これは実は、交通分析における基礎中の基礎ともいえる。需要が分散する「散村型地域」では鉄道は成立しにくく、需要が集中する「都市型地域」では鉄道が成立しやすい。それだけのことで、当然といえば当然にすぎない。
詰まるところ、空港アクセスには自動車が最も適合していると考えなければなるまい。利用者の発着地が相当程度集積されてはじめて、バスアクセスが成立し、場合によっては鉄道アクセスが成り立つ可能性もある、ということなのであろう。
成田空港第2ターミナルに待機する長野行空港タクシー。細かく分散する需要に対しては、小さな「器」が適合する。平成13(2001)年撮影。
日本の国土は可住地面積の比率が低く、限られた可住地では人口密度が高いため、一般論として鉄道が成立しやすいといわれている。それでも過去の歴史において、多くの地方鉄道が撤退してきたという事実は厳然と残る。空港アクセスに鉄道が成立しにくいのは、その相似形といえよう。
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