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書評(平成17年05月06日)

『心に夢のタマゴを持とう』(小柴昌俊著:講談社文庫)

 小柴昌俊さんは、2002年に「天体物理学、特にニュートリノの検出に関する先駆的貢献」によりノーベル物理学賞を受賞した人である。同じ年、島津製作所に勤めるサラリーマン技術者・田中耕一さんも、ノーベル化学賞を受賞したので、そちらの方が注目を集めた感があり、小柴昌俊さんの業績が少し霞んだ感じもあるが、小柴さんの業績も勿論すばらしいものである。 
 
 といっても、私こと源さんが彼の業績を理解できているかというと、否である。といって是でも私は元・理科系の勉強をしていた人間である。科学雑誌(例えばNewtonなど)が好きで、それらを毎月読んでいる。でも、素粒子とかニュートリノ、クオークといったものは、幾ら読んでもなかなかよくわからない性質のものだと思う。
 
 それでこの本を読んでみた動機は、実は小柴さん自身の本を読めば少しはわかるかな、と思って読んでみようと思ったからである。 
 
 しかし本は、150頁ほどで、文字も読みやすく大文字にした文庫本の上、収録された話は、小柴さんの神奈川県立横須賀高等学校(旧横須賀中学校)の創立90周年記念と横須賀市立諏訪小学校(旧・尋常小学校)創立百周年記念で行われた2つの公演のものであり、内容はそのためわかりやすいが、個々の事柄についてはほとんど詳しくは述べられていない。 何となく小柴さんが、岐阜県神岡のカミオカンデやスーパーカミオカンデを使ってどういう事に取り組んでいたかがわかる程度の内容である。 

 私としては、当初の目論見は達せられなかったが、小柴さんの人柄や、タイトルにある小柴さんの主張「心に夢のタマゴを(常に3つか4つは)持とう」は、よく理解できた。そうすることによって情報が氾濫する現代において、自分に必要な情報を適切に取捨選択でき、自分の仕事に活かせるというのは、当たり前の事で凡庸な言葉に思えるかもしれないが、人生を有意義に生きていく上での重要な心構えであると思う。 皆さんもよかったら読んでみてください。 
  
講談社文庫 200211月25日初版発行 ¥400-(税別) 

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