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『日暮し』(宮部みゆき著:講談社) |
この本は以前、上巻を読んだ後、下巻は途中まで読んで中断しそのままにしてあった本である。それを今回は、もう一度上巻の最初から読み、何とか最後まで読み通したのであった。 どうしてこんなことになったかというと、この本は『ぼんくら』の続編の本であるからだ。『ぼんくら』も勿論読んだことがあるのだが、登場人物はある程度思えていたが、ストーリーはほとんど忘れていた。 この『日暮し』では『ぼんくら』の時の登場人物(動物)が、半数くらい再登場する。町奉行所ぼんくら同心こと井筒平四郎・その妻、政五郎親分、平四郎の甥で頭脳名跡・超美形少年の弓之助、記憶力抜群のおでこの三太郎、佐吉、烏の勘九郎、湊屋総右衛門、その妻・おふじ、葵、久兵衛、お徳などなど。 その上『ぼんくら』の方で書かれいた事件・鉄瓶長屋の事件なども今回深く関わるので、ある程度覚えていないと、何か置き去りにされたような感じがするのである。 といっても、また『ぼんくら』まで読み返す気にはなれないので(この本は図書館で借りて読んだこともあり)、今回は最後まで読んでみた。読み通してみれば、それなりに読めた。 上巻の方は、ちょっと最初のうちは、『ぼんくら』の時のメンバーが出てくる短編シリーズの観もあった、つまりこの本の中で幾つかの事件を解決していく単なるシリーズものの捕物帖かな、と読みながら思ったりもした。 しかし下巻の方に差しかかると、実はこの本の上巻に出てくる全ての事件が、下巻の方の本編の事件の伏線となっていて、湊屋総右衛門の囲い者のようになっている佐吉の母・葵殺しに関わってくるということがわかるのである。 葵殺しの犯人の動機に思いをめぐらし、下手人を探すがなかなかわからず、事件は混迷する(といっても、今回は私は葵殺しの犯人は、下巻のはじめあたりで想像がつきましたが)。弓之助は、事件に関係する人々の複雑に利害・憎悪などを一度脇に置き、まっさらに戻して考え直すことを平四郎に提案、今までの思い込みなどによる推理を検討しなおす。 今回も、本編の事件では、弓之助の推理が冴え、最後は弓之助が採った手段で葵奥様殺害事件も解決。また平四郎や弓之助を取り巻く、様々な悩みや問題を抱えた登場人物も、事件解決後それぞれ道を見出し、ハッピーエンド的(ハッピーエンドまで告げてはいないが)というか、皆の上に光明が差したような終わり方になっている。 宮部みゆきの作品ではよく見受けられるが、複雑な事件が輻輳する展開でありながら、隅々まで(おそらく)周到な構想のもとに、それらの話がうまく織り込まれ纏められた構成となっており、ストーリーテーラー宮部みゆきの力量を十分感じさせてくれるすばらしい作品となっています。 ぜひ皆さんにもお薦めしたい本であります。 |
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