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書評(平成17年11月03日)

第51回書評
『高瀬川女船歌〜篠山早春譜』
(澤田ふじ子著:幻冬社)

 澤田さんの大ファンなので、もちろんこのシリーズは第1作から全て読んでいる(これで4作目である)。こちらをちょっと紹介すると

 今回は、この本全体を通して藤蔵という人物が登場する。京都の裏店の長屋に住まいし数珠屋の下請け仕事をする夫婦者だが、主人公の宗因と同じく元武家らしく、宗因は自分の居酒屋に船曳きの弥助とともにあらわれた時、親指のつけねに出来たクチナワ(剣術の練習で出来るたこのようなもの)で、すぐに見抜いてしまう。宗因は訳ありにみえるこの者を、角倉家の船曳き人足に雇ってもらうよう周旋する。

 巻頭の作の事件で、藤蔵は剣術の練達のほどを垣間見せる。宗因は、元武家でありながらが、このように隠れて暮らそうとする姿に、敵持ちではないかと想像したりするが、そうでないことなど解る一方でさらに謎が深まる。その後藤蔵は、徐々にその正体を明かしていくことになる。そして宗因と一緒に色々な事件を解決していく。

 私は「こりゃまたこのシリーズに登場するキャラクターの常連が増えることになるのかな」と思ったが表題作でもある巻尾の「篠山早春譜」では、藤蔵は、怪しい武家姿の者どもに長屋の周辺や木屋町界隈を探られ、身を船小屋に隠すが・・・・

 どう?興味持ちました? 一読お薦めしますよ!



第52回書評
『横向きに座る大国主命〜出雲と能登の神々〜』
(円山義一:医療法人社団生生会)

 今回紹介する本は、マイナーな本なので、おそらくインターネットで購入は難しいかもしれない。
 著者は、円山義一さんといい、私が住む七尾市にある円山病院というところの会長さんだ。この本も、円山病院が属する医療法人社団・生生会から発行されている。(七尾市近辺の方ならば、七尾市サンライフプラザ内の本府中図書館にあります)

 この病院は実は私の母がよく行く病院で二週間に一回くらいの割合で通院し、薬をもらっている。
 そういう関係から買った訳ではないが、たまたま図書館の郷土関係の棚でこの本を見つけて読んでみたら、面白くなったのである。そして著者名をあらためてみたら、母がよくいく病院だったというだけである。

 私自身、能登と出雲の深い関係については、実はかなり前から、できれば本でも書いてみたいというくらいの興味があり、似た観点から書かれたこの著作を手にして、読んでみて、思わず「やられた」という感じた。と言っても、私は、なんだかんだと自分に言い訳をして、なかなか本腰を入れて調べなかったからでもあるが・・・・

 著者は大正11年生まれだからもう80歳を越えていらっしゃる。地元では、かなり流行っている病院なので、今では著作など悠々自適の生活を送っているのかもしれない。巻末にあげられた参考本のリストを見ても、私とくらべものにならないくらい読んでいるようで、史料の参照記事も豊富である。また能登のみならず出雲など現地取材の成果も、ふんだんに述べられている。

 今では私も、この本を参考に、自分のHPの色々なコンテンツを訂正しようと考えています。
 マイナーな本ではありますが、私は隠れた名著だと評したいです。



第53回書評
『図解 誰も教えてくれなかった「古代史」の真実』
(関裕二著:PHP研究所)

 この『図解 誰も教えてくれなかった「古代史」の真実』(関裕二著)は、PHP研究所から出ている見開きB4サイズの95ページほどの本である。

 私は、古代史がそれほど詳しくないので(でもかなり興味あり)、このタイトルを見て、最新の研究成果でも書かれているのかと思って読んでみたのである。

 でもどうやら、予想とは内容は大分違っていた。そもそも著者一人によって書かれたものであり、説もかなり独自説が強い。独創的とか、斬新といえば聞こえは良いがかなり想像に過ぎない推論を断定的に述べている。

 第1章の「日本人」とはいったい何者か、とか第2章の日本人の宗教は何か、という箇所では、うーんそうかもなー、とかなり唸らせるような推論もあるが、第3章ここまで分かってきた邪馬台国とヤマト建国の謎、は一見タイトルを読むと最新の考古学甲斐の研究成果の紹介のような感じを受けるが、内容は邪馬台国や卑弥呼、ヤマト朝廷の関係を、独自の見解でこれが真実と断定している。また第4章聖徳太子はなぜえらいのか、と、第5章東大寺はなぜでかいのか、も同様、独自の説が真実と断定している。

 古代史は文献他資料が少ないだけに、不明なことばかりで謎ばかり多い。それだけにこのような推論をもとにした説を各々色々展開できる面は多い。よって真実は過去というブラックボックスによって詳細にわかることは永遠にあるまい。あまり一つの説に固執せずに、こいつ面白いこといいやがるなー、という程度に読んで色々比較して、自分なりに古代のロマンに思いをはせるのがいい楽しみかたではないだろうか。



第54回書評
『歴史地図で読み解く三国志』
(武光誠著:青春出版社)

 
今日は、やっと台風の影響が去り晴天で行楽日和だったが、特にどこへ出かけることもせず、一日中読書などして家にいた。午後を過ぎてからは、この本を寝っ転がって読んでいた。
 
 以前は「三国志演義」フリークに近いくらい、凝っていた時代もあったが、10年ほど前から次第に遠ざかり、ここ数年は「三国志」関係の本から遠ざかってしまっていた。昨日鹿島町図書館でこの本が目に留まり、久しぶりに借りて読んでみることにしたのだ。

 三国志に詳しいと言っても、実は正史「三国志」と「三国志演義」の違いをあまり認識していないだけに、久しぶりに「三国志」の頃を勉強し直してみようと思ったのだ。

 200ページほどのボリュームだったが、新書サイズで半日4時間ほどで読めた。書かれていることは知っていることもあったが、初めて知ったことも多く、参考になった。

 例えば、武将の一騎打ちなど三国志の時代には、ほとんど行われることなどなく、あれはのかなり後の中国の戦いが反映されたものだということも、読んでみればなるほどそうかもな、と思った。しかし一騎打ちという日本の中世の戦いに似た戦いのありようが、日本で人気が出た一因でもなかろうかと想像した。

 また当時の国際状況、三国志時代の中国と日本との関係などや、当時の豪族・宦官・外戚・知識人層などの説明も、認識しなおしたことが多かった。
 ここ数年三国志関係の小説を読んでいなかったから、またこれを機会に近々読んでみようかと思っている。

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