このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

書評(平成18年03月01日)

『公事宿事件書留帳 無頼の絵師』
(澤田ふじ子著・幻冬社)

  このシリーズは大好きで、ここまでの第10集の『釈迦の女』までも全て読んでいる。つまり今回はシリーズ第11作目である。
 今回は「右衛門七の腕」、「怪しげな奴」、「無頼の絵師」、「薬師のくれた赤ん坊」、「買うて候えども」、「穴の狢」の6作品がおさめられています。

 「右衛門七の腕」の中の右衛門七は、作品の中でも書かれていますが、シリーズのかなり以前の別の話の中で登場しており、今回久しぶりに再登場です。その時の話自体は、博打や女遊びにあけくれた右衛門七が、自分が妻子をそのように放ったらかし状態にしていた時、自宅(長屋)が火事に遭い、妻と娘・息子を焼死させてしまい、悲嘆にくれた彼は、京から姿を消してしまう、という決していい話ではない。右衛門七が7年ぶりに京に帰ってきて、祇園の居酒屋「よろず屋」で、さてこれからどうしようかと考えながら飲んでいた所、助松という男にからまれ、いざこざがあり、そこにこの「よろず屋」と関係があったお信が現れ、再開という展開である。

 右衛門七が、京に帰ってきた頃、主人公田村菊太郎の恋人お信が、料理茶屋「重阿弥」の仲居をしていたが、団子屋「美濃屋」を開きはじめたばかりであったが、右衛門七は、その「美濃屋」で働くことになり、その同じ建屋の奥に住むことになります。そしてこの第11集を通して、何度も登場することになります。

 そして最後の話「穴の狢」では、これまた右衛門七が、話の中心になります。美濃屋で、やせ細った怪我や青あざのある子が、蜆の佃煮を買いに来たのに同情したお信と右衛門七は、佃煮の他に団子をただで10串与えます。その行為が要らぬおせっかいだと怒鳴り込んできた男と口論しているうちに、男が以前賭場で見知った権三という男だと思い出しますが、権三の方でも右衛門七のことを思い出し、ひとのこと説教などできるか、お前も同じ穴の狢と言われ、心に傷のある右衛門七は気勢を殺がれてしまいます。権三に殴打され怪我を負わされます。
 美濃屋に現れ事件を知った田村菊太郎は・・・・。

 まあこの程度の紹介でやめときましょう。次回の話では、右衛門七に子供ができてたりして・・・。



円空巡礼
(後藤英夫・長谷川公茂・三山進著・新潮社(とんぼの本))

  円空に関しては、最近「円空鉈伝」という本を読んだことがある。それからまた関心が増し、この本を七尾市立図書館で見つけて借りてきた。
 「円空鉈伝」では、円空の謎に満ちた部分を想像でカバーしたフィクションであったが、こちらは、著者の3人とも円空に魅せられ、彼が彫った像を全国各地を廻って調査し、円空の研究をしている人である。

 私もかなり魅せられた一人に入るのかもしれない。彼は江戸時代初期の人物である。天台密教の修験者として活動したようだが、若い時期は、禅宗寺院にいたとか、真言密教をおさめたという説もあるようだ。

 円空の像は、近畿以東の日本各地に現在4千体以上残っているのが確認されているそうですが、非常に様々は像が残されています。木の素材の形そのままを利用したもの、立木そのままで像を削りこんだもの、荒削りのもの、かなり丹念に彫られたもの、掌に乗るような小さなもの、大男の身長もあるような大きなもの・・・・非常に様々です。

 その多くは仏像ですが、かならずしも各仏像の原則にしたがうのではなく、彼の自由奔放な創意で独特なものも数多くあるようです。また柿本人麻呂や、当時の天皇など歴史上の人物も彫ったようです。

 石川県には、円空仏は能登の民家に一体確認されているらしい。彼の活動は白山修験とかなり関係していたらしいが、もしかしたら石動山にも来たことがあるかもしれない。円空仏が無いのは、石動山が2度にわたって焼けたからではないか。

 まあそんなことはどうでもよい。彼の足跡も興味もあろうが、とにかくまず色々な円空仏を、関連本で見ることをお薦めする。その何とも言えない表情に、あなたも惹きつけられるかもしれませんよ。

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