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書評(平成18年04月04日)

足引き寺閻魔帳』
(澤田ふじ子著・徳間書店)

  私は、かなりの澤田ふじ子ファンのつもりだが、実は今まで手をつけなかったシリーズが2つある。この「足引き閻魔帳」シリーズ及び「真贋控帳」シリーズだ。といっても別に特に理由があった訳ではない。ただ何となくである。
 この本は勿論、当シリーズ第1弾である。同シリーズとしては、他にも確かもうすでに第3、4弾あたりまで書かれていたはずだ。
 
 読んでみたら、やはり面白かった。皮肉な言い方をすれば、池波正太郎の「藤枝梅安」の仕掛人シリーズを、澤田さんが舞台を京都にして書いたらこうなったというような感じだが、決して真似ではない。
 足引き寺という設定もなかなか面白いと思う。澤田さん独自の色合いが出ている上に、彼女の特徴でもあるいつもの痛快な裁き(ここでは仕置きといった方が良いだろうか)は、このシリーズでも、冴を見せている。
 
 足引き寺であるが、京都に約2千もあるといわれる寺の中で、怨みを抱く相手の足を引っぱり、ひそかに誅伐を加えてくれる“足引き寺”があるとい噂が、庶民の中で、ささやかれていたが、この小説の中に出てくる京都・堺町綾小路にある東山知恩院の末寺で、檀家もない地蔵寺が、実はそれだった。

 住職の宗徳は、京都西町奉行所の与力黒田長兵衛の次男でもとの名というか俗名は黒田小十郎。兄の黒田大十郎は父のあとをついで、西町奉行所の与力をしている。彼も若い頃に何も落ち度が無ければ、今頃は与力か同心の婿養子をしていたろうが、若気の至りというか、正義感が逆に災いして、北野新地の遊女を足抜けさせ、その際、彼女の紐として暮らしていたならず者に瀕死の重傷を負わせてしまった。

 その事件が公となり、父長兵衛が京都庶民の模範とならねばならぬ立場から、十年の遠島を申し付けられ、4年前やっと隠岐島から戻ってきたのであった。戻ってきた時には父長兵衛はすでに他界していたが、すぐ父の遺言で、兄大十郎の命で、この寺の住職とさせられたのであった。

 話は、足引き寺のことにもどるが、願主にかわって誅伐を加える闇の仕事師は、この宗徳のほか3人と一匹であった。他は、宗徳と幼友達の西町奉行所同心の蓮根左仲。その手先を務める羅宇屋の与惣次、町絵師のお琳の4人、それに宗徳が飼いならしている紀州犬の豪である。まあだいたいこういう設定のもとに話が進められていく。

 今回のシリーズ第1弾は、「地蔵寺の犬」、「唐橋屋の賊」、「冬の刺客」、「比丘尼坂」、「吉凶の駕籠」、「通夜の客」、「閑吟の鐘」の7作品収められている。そろそろ疲れてきたし、今回は前振りを書くのは辞めておこう。
 面白いことだけは確かである。次作品以降も勿論、読むつもりである。機会があったら、またそれらもここで紹介したい

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