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書評(平成18年04月15&16日)

コミック判プロジェクトX挑戦者たち
 ②執念が生んだ新幹線
 老友90歳・戦闘機が姿を変えた』
(NHKプロジェクトX製作班)

 本の紹介といっても、コミックだ。
 以前同シリーズの「リーダーたちの言葉」をやはり図書館から借りてきて読んだ。あの本はあまりプロジェクトの経緯は詳しく書かれておらず、リーダー達の言葉に重点を置いていたが、今日借りてきたのは、テレビで放送された内容を逆にもっと詳しくしたような本である。

 私はあの番組が大好きだった。内橋克人氏の著書に「匠の時代」という本があったが、ああいう開発などに努力した技術者たちの話は、読んでいてとても感銘を受けるものである。

 現在、プロジェクトXの跡継ぎ番組?としてNHKで放送している「プロフェッショナル 仕事の流儀」はどうも面白くない。何か力みすぎていて、空回りしている感じがする。

 どこが、プロジェクトXと違うか、と考えてみると、どうも出演者達はカッコつけすぎなのではなかろうか。カメラを意識しすぎなのである。現在活躍しているプロのためもあろうが、その辺が、プロジェクトXで脚光を浴びた人物たちと、正反対に近いのだ。

 プロジェクトXで、特に感銘を与えた人たちは、どちらかというとスポットライトをあたることなど期待せず地道に業績をあげて、人知れず巷間に暮らしている人々だった。
 勿論その筋の人たちの間では知られた人であったにせよ、一般の人にはほとんどそれまで知られていなかった人たちである。カッコつけようなど、全く考えなかったことだろう。

 現代は、老若男女とも、どうもカッコつけること、や目立つということに価値観の力点を置きすぎである。こういう精神風土では、本物の人間は絶対に生まれてこないし、世界から尊敬される日本人は出てこないと私は思う。勿論、将来の日本も危うくするだろう。
 このプロジェクトXに登場するような人物が、これからの日本に真に必要な人間であることを示し、同時にそのような人々を元気付ける意味でも、プロジェクトXは、もうちょっと続けて欲しかった。

 話が、本の内容からちょっとそれてしまった。でもこの話は何度も再放送していたからテレビで見た方も多かろう。私も、新幹線開発の話は大好きなので、何度も観たし、何度も関連本を読んできた。
 主な登場人物を下記にあげよう。
 三木忠直(みきただなお):元海軍技術少佐。爆撃機「銀河」や特攻機「桜花」を設計。戦後は平和技術を求めて、鉄道技術研究所に入社。新幹線の車両を設計 
 河邊(かわなべ)一(はじめ):元陸軍の通信技術のエキスパート。レールからの低周波の信号で新幹線の速度を自動制御するATCシステムを開発。
 松平精(まつだいらただし):海軍で戦闘機「零戦」の神道問題を解決し、新幹線においても独自の研究で高速化に伴う神道問題を克服。
 十河信二(そごうしんじ):国鉄総。広軌高速鉄道の建設に執念を燃やし、捨て身の政治活動で新幹線事業を牽引。
 島秀雄(しまひでお):新幹線の生みの親といわれる国鉄の技師長。

 まあ興味のある人は、読まれたらいかがだろうか。 


『足引き寺閻魔帳−女狐の罠−』
(澤田ふじ子著・徳間書店)

   この本は、澤田さんの足引き寺閻魔帳シリーズの第2弾である。

 主な登場人物は、変わらない。足引き寺のメンバーは、足引き寺である地蔵寺の住職・宗徳。その幼友達の西町奉行所同心の蓮根左仲。その手先を務める羅宇屋の与惣次、町絵師のお琳の4人。それに宗徳が飼いならしている紀州犬の豪である。

  収められた話は「足許の首」、「女狐の罠」、「なさけが仇」、「噂の烙印」、「闇の梯子」、「真贋の瀧」、「果ての空」の7作品である。
 感想だが・・・・実は・・・・本音というか、率直な意見をいうと、あまり新鮮味がなかったような感じがした。 何か、もっと新しい展開があってもよかったのでは、と思うのだが・・・・・

 ちょっと新たな展開といえば、足引きの仕事師のメンバー4人と一匹のうち、地蔵寺の住職の宗徳と、町絵師のお琳の2人が、お互い意識始めたことだ。第一弾ではそんな話は出てこなかったが、この第2弾によると、お琳は以前から慕っていたことになっている。他は最後の「果ての空」で地蔵寺が火事で燃えてしまったことだろうか。まあすでに第3弾、第4弾と出ているわけで、次弾以降は、建て直したか、他の寺にでも移って継続していくのだろう。

 第2弾の話は勿論、第1弾と異なるのだが、私が第2弾で感じた目新しい展開といったら、それくらいしか浮かばないのだ。
 澤田さんの本でこのような厳しい感想を書くのは、私としてはちょっと珍しいことかもしれない。ファンではあるが、感想も自分の心に忠実でありたい。

 この本を全体として見た場合、悪い作品とはいわないが、第2弾という観点から見ると、どうしてもこのような感想が出てくるのだ。
 シリーズ第3弾に期待したい。

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