このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

書評(平成18年04月18日)

『分子生物学入門』
(丸山工作著・講談社ブルーバックス)

  この本は、実は私が確か社会人になった頃、かれこれ20年ほど前に買った本である。私は、高校時代はもともと理系で、大学は文系に進んだが、某大手電機メーカー時代を経て、いままた技術屋として働いている。
 といっても高校時代は、生物学は学んだが、生物Ⅰのみで、受験科目として選択したのは、化学と物理であった。

 高校時代、昔、化学メーカーに勤めていたことがある教頭先生から、あなたは化学者に向いているといわれ(煽てられ)、化学者を目指した時期もあった。私は、不器用なだけに、逆に、あることが出来なかったり、わからなかったら、何度も繰り返し試したり、考えたりする。つまり数学的才能・理系的才能があるというのではないのだ。数学の宿題で難問が出ると、数時間考え続けたりして、要領の悪い男であったと自分でも思う。ある意味でそのように非常に鈍重な性格が、化学者には向いていると教頭先生はいいように見てくれたらしい。

 また化学好きは、その高校時代の化学担任の浜田教頭先生が、確か元旭化成でナイロンの開発などに従事していた京大出身の非常に優れた(かつ、教え方や実験の非常に上手い)先生であったのが、大きく影響していたと思う。その先生は、私が高校卒業すると同時に、某高校の校長として転任する予定であったが、その引継ぎの徹夜作業中、学校で脳溢血で殉職されてしまった。私の思いで深い恩師の一人となっている。

 それに対して、生物学だが、高校の生物の授業にはあまり興味を持っていなかった。しかし大学に入って以降、DNAやバイオテクノロジーに非常に興味が沸きだし、色々と読むようになった。今でも図書館においてある科学雑誌「ニュートン」などで、そういった関連の記事をよく読む。

 また現代教養文庫のM.B.ホーグラント氏の『遺伝子のはなし』と『DNAの解読』を読んだのも、大きく影響したかもしれない。また最近の生物学は、生物学と言っても、化学に近い操作というか扱いがされるようになってきたためかもしれない。

 あるいは私は、DNAの発見者、ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックにも非常に興味があり、開発の物語を書いた本も、2,3読んだりしている。この2人と、DNAのX線解析を行ったモーリス・ウィルキンスの3人は、私が生まれた1962年のノーベル生理学・医学賞を受賞している。何か、そこにも(因縁といえば大げさだが)縁(えにし)を感じているせいかもしれない。

 ハハハハ、最近は本の紹介というより、本を読む動機の話の方が多くなってしまっているなあ(苦笑)。とにかく最近、この分野には非常に興味を持っていて、そういった本も年に数冊必ず読んでいます。
 
 この本は、20年くらい前の古い本だが、入門書としては、今でも十分通用すると思う。なぜ今頃読んだかといえば、買った頃、6,7割まで読んでそのままにしてあったので、最後まで読んでみようと思ったのだ。古いといっても、生物学の専門家でなければ、関係ないことだろう。

 副題は「誰にでもわかる遺伝子の世界」だが、本当にわかりやすい。なおかつ、この厚さの本のこのような入門書にしては、他と比べてもかなり詳しく書かれている本である。著者は、この本の著者紹介によると、1930年生まれの東大出身で、東大、京大、千葉大などで教鞭をとられていた方のようだ。現在は、この本の改訂版だろうか、同じブルーバックスから『新分子生物学入門』という本を出されているようだが、機会があったら読んでみたいと思う。

 皆さんにもお薦めしてもいい本ですが、でも、今ならわざわざ絶版になっているかもしれない古い方を捜し求めて読まなくとも、新しい方を読んだ方が、いいでしょうね。色々と最新成果が書かれていることでしょうから。この先生が書かれた本なら、そちらの本もきっとお薦めの本だと思います。私は勿論まだ読んでいませんが、是非お薦めしたいですね。 

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