このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

書評(平成18年06月20日)

『 ことばおじさんの気になることば』
(NHK出版・生活人新書/NHKアナウンス室ことば班編)

  NHKのお昼の番組「お元気ですか日本列島」及び「ラジオほっとタイム」の人気コーナー「ことばおじさんの気になることば」で採り上げられた話を抜粋して本にしたものだ。私は、この本をNHKのHPから購入依頼した。編者は、NHKアナウンス室ことば班編となっている。

 このコーナーは、全国の視聴者から寄せられた言葉の疑問に、‘ことばおじさん'こと梅津正樹アナウンサーがわかりやすく答えたものだが、読んでみて改めて思うのは、何が正しいかを示すというより、時代を経ることによる言葉の変化を通して、一種の日本人論、日本若者文化論を述べていることである。

 最近の若者がよく使う「フツーに○○」という使い方について
 「何かしらマイナスの感情を抱いた時に使われることが多いようです。本音を隠すワザとして「フツーに」は重宝されているのでしょう。
 相手を傷つけることや深入りされることをひどく嫌う「まさつ回避世代」らしいですね」
とコメントしたり、また
 「なにげに」という若者言葉に対して、たとえば「なにげにかわいいね」という使い方の例をあげ、
 「ストレートに「かわいい」と主張するのでなく、「なにげに」を加えることで、相手との間合いを測りながら主張する、今どきの若者の姿が見えてきませんか?「なにげに」は仲間同士の会話を円滑に進めることが出来る便利な言葉なのでしょう。」
とコメントしたりもしている。
 このような随所に述べられるコメントを通して、若者の世代の、仲間内の人間関係や、相手との微妙な距離感を非常に気にする傾向を、非常にうまく指摘しています。

 前半部では、私も「今時の若けえーもんは、ほんとに言葉が乱れているよなー」と言いたくなる内容が大半でした。しかし後半からは、私も、自信喪失。ある言葉に対して正確な使い方・意味を知らずに、誤った言い回しなどをごく普通に、慣用句のように無意識に使っていたことを思い知らされたりもしました。

 たとえば「気がおけない」「情けは人の為ならず」「憮然として」などという言葉や、「物語のさわりをきかせる」という文の「さわり」」などという言葉の意味は、完全に意味を取り違えていました。
 また「○○を立ち上げる」という言葉は、何の疑問も感じずによく使ったりもしていました。「コクる」なんて言葉は使ってませんでしたが、「事故る」ぐらいなら私も使ったことがあります。私も今時の若者の傾向が幾分かあるようです。

 また次のような言葉の不思議さ指摘した箇所も面白かった。
 「〜ぶり」と「〜目」の使い方では、私自身は正確に使っていましたが、よくよく考えたら慣れて使用しているものの、用法を文法的に考えると非常に難しいものであることを指摘され、意表を突かれた感じです。「〜ぶり」は、いわゆる「数え」でなく「満」で数えるのに用いる。
 それに対して、「〜目」は、「数え」の数え方と同じで、数字の後について、初めから数え進んでひと区切りをつけたその区切りまでの数を現わすのに用いる。ただしどこを基点として考えるかによって同じ「〜目」でも違う。たとえば左からA、B、Cの2人が並んでいる時、(3人見える位置から見て)左から2人目と、Aさんから(見て)2人目とでは、指す人物が変わってしまう。

 この私の紹介を読んで、興味の沸いた方もいることでしょう。
 そういう方は、この本を買うのもいいでしょう。そこまでする気の無い人は、NHKのHP「気になることば」のコーナーにも、今までの話が載せられて公開されているので、ちょっと覗いてみるのもいいと思います。

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