このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

書評(平成18年07月21日)

『凍れる河』
(オリヴィエ・フェルミ著:檜垣嗣子訳・新潮社)

  インドの最北部ジャンムー・カシュミール州にあるザンスカール谷あいの村人との暖かい交流を描いた作品である。非常に綺麗な写真が沢山掲載されており、なおかつ、それに細かい説明書もされ、思わず魅了されてしまう。(ワールド・プレス・フォト賞受賞作品 )

 オリヴィエとその妻ダニエルは、旅行で知り合ったザンスカールのタハンという小さな集落に住むロブサン一家と交流する。何度か行動を共にし、ロブサンをつれ、インドの平原に行った際、ロブサンは今まで全く知らなかった世界に驚く。そして自分の息子を、外の世界を見せるために学校にやる決心をする。
 ロブサンの息子モトゥプは、ザンスカールの北方にあるラダックの町レーにある学校にやることにする。授業料などの援助はオリヴィエ夫妻が援助する。
 ロブサン、モトゥプ、オリヴィエ夫妻、他同行者は、凍ったザンスカール河に沿って歩き、約150km離れたレーに向かう。そして無事レーにモトゥプを送り届ける。モトゥプは、学校で大いに学ぶ。
 2年後、モトゥプは休みの期間を利用して帰郷し家族と再会する。そしてまた学校が始まるので、レーに戻ることになるが、モトゥプの成功を見たロブサンは、今度は妹のディスキットも、学校にやることにする。よって今度の旅は、父親のロブサン、モトゥプとディスキットの兄妹、オリヴィエ夫妻、それにロブサンの親戚などとの旅となる。
 零下20度とか30度とかの極寒の中、貧しい装備で、旅をする姿が写真などとともに紹介されている。8歳とまだ幼いディスキットだが、弱音も吐かず、忍耐強く歩き続け、なおかつ時には極寒の中、薪拾いをするなど、本当に感心する。

 またかなり粗筋をかなりくわしく書いてしまったが、この本はとにかく、写真をじっくり見つめて、その説明の文章も勿論読み、そして再度じっくり写真を見てください。ザンスカールという厳しい環境に生きる人々の姿に、きっと感動するはずです。
 またこの本は、モトゥプとディスキットという兄妹の成長に、平和な日本で、安逸に生きている自分の人生を振り返らせ、反省させてくれるました。(この兄弟は、学校の成績優秀で、(この本が出版された時点では)兄は外交官に、妹は医師になるのを目ざしているとのこと。今はどうなったのだろう?)
 文章量というか、本のボリュームですが、特に読書家でなくとも2時間もあれば十分読める本だと思います(読むのが速い人は一時間もあれば読むかも)。もしこの本を、どこかで見かけたら、立ち読みでもいいから、読むことをお薦めします。

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