このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

書評(平成18年07月23日)

『あくじゃれ 瓢六捕物帖』
(諸田玲子著・文春文庫)

   諸田玲子さんの本は、読もう読もうと思いつつ今まで読むことがなかった。今回読んだ作品は、予想通りの出来。十分楽しませてくれた。この作品を端緒に、他の作品もどんどん読んでいこうと思っている。
 いつものように、また粗筋を少し。

 色男で、粋で頭も切れる目利きの瓢六が、賭博をやっている時に手入れで捕まり、小伝馬町の牢屋敷に放り込まれた。江戸ではここ数年、悪評の高い武家や商家が強請(ゆすり)にあう事件が頻発していた。この強請に瓢六が何かしら絡むと考えている北町定町廻同心・篠崎弥左衛門は、彼に犯行を吐かせようとするが、同じ頃、若い女性が木場の横川の川原で殺される事件が起こる。彼女は、自分が昔使っていた岡引の娘・おみちであったのだ。

 作次郎という貧弱な男が容疑者として牢屋敷に入れられた。彼は彼女が殺された時、連れていた子供を家に泊めて面倒を見ていたので、疑がわれたのだ。取調べを受けたが自白しない。弥左衛門は、彼が下手人に違いないと取調べを続けるが、瓢六は、彼の犯行でないと確信し、牢屋敷に来た弥左衛門にその考えを述べる。

 弥左衛門は、こしゃくな瓢六の余罪を調べるついでに、彼の素性も調べるよう源次ら手下に命じる。そんな折、吟味与力の菅野一之介に呼ばれ、瓢六の素性はすでに知れていると言い、その驚きの素性を教えてから、菅野は、何と彼を牢屋から期限を切って出し、おみち殺しの捜索に協力させるように命じ、弥左衛門は不承不承、瓢六とコンビを組み捜査に当たることになる。

 瓢六は長崎生まれで、古物商「綺羅屋」の倅で本名は六兵衛。唐絵目利で、阿蘭陀通詞の楢林家の稽古通詞見習いをしていたという。楢林家では、ゆくゆく養子に迎え、跡を継がせるつもりでいたという。蘭医学も齧っており、本草学や天文学の知識もあるという。そもそも江戸に出てきたのも、幕府から和蘭書籍和解御用(阿蘭陀語の翻訳を司る役所)の一人に推挙されたため出てきたという。

 篠崎弥左衛門は、堅物のまじめ一本槍の同心で、捜査も尋常なやり方であるが、瓢六は、牢屋敷に入れられた様々な人間や、彼の幅広い人脈を使って独自の情報を仕入れ、捜査に役立てる。おみち殺しのみならず、その後も次々と成果を挙げ、北町の捜査の切り札となっていく。

 ところで、その瓢六の扱いだが、最初の事件のみならず、その後の事件にも協力したのは、与力の菅野が彼の能力を惜しいと思い、彼の吟味をわざと遅らせ、牢屋敷預けの状態を続けたのであった。北町が月番の月に、日限を切って彼を出所させ、その後も弥左衛門を目付けとして彼に捜査の協力をさせたからであった。・・・・・

 この作品は、シリーズ化され、この後「こんちき」他何作かあるようだ。キャラクターもなかなかいい。上に書いていないが、他にも瓢六にぞっこんの芸者のお袖、(牢)名主の雷蔵、弥左衛門の姉の政江・・・ユニークな面々が色々登場する。次作以降も常連として登場してくるのだろう。
今度はどんな展開を見せてくれるのかワクワクする。次作品以降も読み続けてたいと思っている。

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