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『点と線』(松本清張著・新潮文庫) |
松本清張の『ゼロの焦点』に引き続き、『点と線』を読んだ。この『点と線』は、『ゼロの焦点』と同じ時期(昭和32、3年)に書かれたらしい。続けて読んだせいか、比較すると似た点が多く見つかった。殺人の方法に青酸カリを使っている点(『ゼロの焦点』で2人、『点と線』でも2人青酸カリで殺害)、犯罪の主犯に、妻の地位にあるものが大きく関わっている点など。 いつものように、少し粗筋を書く。 九州博多付近の海岸で発生した心中事件。男は××省の課長補佐という人物。当時進行中の××省汚職事件で、疑惑の課の実務者の中心人物であったため、動機つけもすぐ着き、心中事件として処理された。しかし40代の老練の鳥飼刑事だけは、男の所持品の中に「お一人様」と記された食堂車の受取書があるのを見つけて疑問を持つ。心中した二人は、東京駅では一緒に特急電車に乗るところを目撃されていながら、なぜかその受取書はお一人様なのだ。 東京の警視庁の方から、汚職事件との絡みで若手の三原刑事が福岡へ出張してきた。三原刑事は鳥飼刑事と面談し、鳥飼に現場を案内され、彼が抱く疑問点などを聞く。 東京へ帰った三原刑事は、鳥飼刑事と同様心中に疑惑を抱き捜査を行う。手がかりはなかなか見つからなかった。ある日、三原は東京駅の13番ホームに立って15番ホームの方を長時間眺めていた。そしてある事に気づく。電車がひっきりなしに出入りし、13番ホームから15番ホームの方は、ほとんど見通す事が出来ないのだ。彼は駅員にダイヤを確認し大きな疑惑を抱く。 それは聞き込みでは、心中した二人が、東京駅で15蕃ホームに停車の特急電車に乗り込む際、13番ホームの方に立つ知り合い3人によって偶然目撃されたというのだが、13番ホームから15番ホームを見通せるのは、一日のうち、たったその前後の4分間しかないのだ。 これは偶然なのか、それとも緻密に計算されて仕組まれた必然なのか・・・・・ これを契機に、捜査は新たな展開を迎える。そして捜査が進む中である一人の容疑者が浮かびあがる。しかしその人物は、心中したとされる二人が殺された時間、北海道出張のために、九州とは反対の北海道に向かっていたという。裏をとりアリバイを崩そうと、北海道にまで出向いたりするが、アリバイは鉄壁に近く、なかなか崩せない。 三原刑事は、鳥飼刑事に手紙を出し、これと目星をつけた容疑者への捜査の押しを決して緩めることなく、最後まで粘り強く捜査を頑張るよう、返信で励まされる。 そして・・・・・ 列車や飛行機に時刻表を駆使したほぼ完璧に近い完全犯罪、今ではよくあるパターンの推理小説だが、これが発表された当時は、日本ではほぼ初のアリバイ破りの推理小説だったらしい。解説者も言うように、一部無理な展開もあるが、鉄壁に思える犯人のアリバイ崩しは、かなりワクワクし、スリリング感がある。 自分として一つ不満だったのは、九州と北海道という日本の反対側の地域をキーポイントとするアリバイ崩しなのに、刑事が飛行機という手段に気づくのが非常に遅いことだ。もし疑問を抱いたなら、犯人が飛行機を使ったものと想像するのが当たり前のはずなのだが。この点については、ホント‘この刑事アホじゃないの'と思ってしまった。 まあ小説の中の刑事の通り、思い到らなかったということで許しておこう。 それ以外は、私としては非常に、出来がいい推理小説であるように思えた。 やはり清張の代表作の一つといわれるだけはあると思います。 |
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