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書評(平成18年08月09日)

『半次捕物控 〜泣く子と小三郎〜』
(佐藤雅美著・講談社)

  佐藤雅美氏は、私が特に好きな作家の一人である。この半次シリーズも、この「泣く子と小三郎」で既刊は全て読んでいることになる。
 舞台となる時代は、‘デワボン'こと水野出羽守が幅を利かせていたころで、別シリーズ「八州廻り桑山十兵衛」と重なり合う。半次シリーズの中でも(「影帳」)、一度桑山十兵衛が登場したりもする。
 
 前々回(巻)から、蟋蟀(こおろぎ)小三郎が半次に何かとつきまとういやな存在、小説の中では準主役のように登場している。今回も、全ての話で彼が絡む。
 そして今回は、何と小三郎が、越前丸岡藩の国元に妻がありながら、半次を仲人(身元保証人)とし、チヨ(千代)という内縁の妻までもつことになる。半次を連れて正式に申し込みに彼女の家を訪れてみれば、チヨは子供3人を持つ親であった。その後、小三郎は、チヨに尻にひかれ気味で様相も少し変わるが、生まれもっての性格は変わらない。半次は、彼を疫病神だと敬遠しようとするが、蟋蟀小三郎の方は、半次を福の神と信じ、半次が嫌がるのもかまわず、家に押しかけたりして、彼から金蔓を見つけようとする。
 
 (話は前後するが)今回は第1話からその他にも、大久保恒次郎という少年が登場する。彼はある武士から三縁山増上寺の立雲院という塔頭(たっちゅう)の洞海という納所(なっしょ)坊主に預けられた子で、寺では沈念と呼ばれていた。洞海から召使のようにこき使われ、洞海が修行に出かけるといって姿を消すと、塔院の正式な坊主でないとの理由で、寺から追い出され門付までしていた。それを蟋蟀小三郎が、立雲院の所化から事情を聞いて引き取り、半次に預けた。沈念は、某藩の島流しになった大久保某の息子であるとのことだが、いまいち身元がはっきりしない。背後にお家騒動の気配が見え隠れし・・・・

 「御奉行の十露盤」、「お姫様の火遊び」、「天網恢恢疎にして漏らさず」、「疫病神が福の神」、「小三郎の無念」、「泣く子と小三郎」、「伊豆の伊東の上品の湯」、「ちよ女の仇」の8話からなる。

 今回も、佐藤氏の独特なコミカルチックなタッチで、半次と蟋蟀小三郎の名?コンビぶりを描いています。佐藤ファン、半次ファンには必読の一冊です。

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