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書評(平成18年08月29日)

『日本は国境を守れるか』
(小川和久著・青春出版社)

  私のWebSiteをよく見ている方はお気づきかもしれないが、私は海や船に対して非常に興味がある。さらには進んで、海防や日本の国境問題に非常に興味がある。
 
 日本は、島国国家でありながら、昔から一度も海洋国家であったことがない。同じ島国とはいえ、イギリスなどとは大違いだ。アメリカや、ソ連、中国などの方が、海に感心が深く、対策が進んでいる感じがする。
 江戸時代末期に開国したとはいっても、それ以降も、日本の一般人は、海というものに対して無関心すぎる考えている。日本は、食料やエネルギー、資源のかなりの割合を輸入に頼る貿易立国であり、輸出入の総トン数の9割以上を船舶に頼る国でありながら、海に対して非常に無関心過ぎる。周りを海で囲まれながらこの有様は平和ボケした、馬鹿以外のなにものでもないと思う。

 この本は、テレビなどでも顔なじみの小川和久氏が、海上保安庁を中心に日本の国境警備のあり方を、他国の国境警備隊や国際情勢などと比較・鑑み、氏の提案を延べた本である。

 これを読むと、日本の国境警備の有り方が、いかにお粗末か、よくわかる。世界の沿岸警備隊などと比較した場合、アメリカに次ぎ世界第2位の巨大な組織でありながら、法整備の不備、自衛隊との不和・連携のまずさ、海上保安庁の武器に対する認識の低さ、などからその力を活かしきれていない。

 海上保安庁が不審船に対して、自衛隊と連携で、強い態度に出たのは、1999年3月に起きた能登半島沖の北朝鮮の不審船(日本船籍を偽った船)の追跡事件が最初で、威嚇射撃を行っている。あの時、この七尾海上保安部からも、小型巡視艇が追跡にあたった。
 あの事件の数年後、2001年12月の奄美諸島沖の不審船追跡劇と船の自爆の事件もあった。あの教訓が、では活かされているかというと、あまり変わったようにも思われない。

 小川さんは、改めて不審船、密航、麻薬、海賊、海洋上の国境問題など、海洋国家日本が直面する脅威を述べて、法制の整備、海上保安庁の装備の改革などを提案、また自衛隊と比べグローバルに活動できる海上保安庁を「国境警備隊」としてフル活動させ、日本の国際的信用を高めながらの、今以上に国境警備を充実していこうという、専門家らしい鋭い意見をて提案しています。『現代版海国兵団』といえば大げさかもしれないが、日本人に警鐘を鳴らすいい本だと思う。
 日本の国境警備問題・国防問題などに興味のある人には必見の本です(興味のない人にもできれば読んでもらいたいのだが)。  

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