このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
『驚異の耳を持つイルカ』 (森満 保著・岩波科学ライブラリー) |
私は、動物の中で特に好きな動物を5つほどあげろ、といわれれば猫、犬、かもめ、ペンギンなどとともに、イルカをあげるだろう。 あの笑っているような顔は、なんとも可愛い。我家から、「のとじま水族館」が30分ほどで行ける距離にあるので、年に最低1回は行っているだろう。そして水槽の中のイルカや、イルカショーを必ず見てくる。 イルカショーでは飼育員が、合図して芸を演じさせている。しかし実は人の声はイルカの耳に届いていないそうだ。聞こえる周波数域が全然違い、人が聞こえる範囲(20ヘルツ〜2万ヘルツほど)は低くて聞こえず、6万ヘルツあたりの超音波が一番よく聞こえるそうだ。人の耳では逆に聞こえない周波数域だ。つまりイルカが交信できるのは、人間には聞こえない超音波なのだ。 イルカは海表面から数千m近い深海まで素早く移動し、数百気圧の真っ暗闇という極限状況下でエサを捕獲するため、深海の物凄い水圧でも絶え、なおかつ急激な水圧の変化にも対応できる独特の形態とメカニズムをもつ耳を進化させた。 その一つがおでこのように見える頭部の部分にメロン体といわれる部分があり、ここから超音波を発し、獲物などに反射して返って来た音を、下アゴを中心とした付近で聞き取るという能動ソナーの機能だ。こうもりなどと同じ、エコーロケーション(反響定位、音源定位)という用いているのだ。 イルカは、水圧に耐えるために耳介(耳たぶなど)はなく、外耳道(耳の孔)の痕跡も両目の後ろ付近に見られるが、少しくぼんでいる程度で孔は開いていない。 また人の場合、自分の声を、録音テープなどで聞く場合と、自分の話し声を同時に耳から聞く場合とでは、違うよう声のように聞こえるが、耳から入る気導音と自分の頭の中の骨などを伝って聞こえる骨導音が合成された音であるが為であるのは、皆さんもよく承知だろう。 イルカの場合、骨導音などが合成されると、エコロケーションが出来なくなるなどの理由で、内耳と中耳が一体となった鯨骨が、頭蓋骨から完全に遊離した形となっている。その構造によって、自らが発した音圧の高い非常に高い超音波で、自らの聴覚器官を傷める事もなく、高度なエコーロケーションで餌を獲るのであった。 しかしこの驚異の機能を持つ、聴覚機関の構造が、内耳などを寄生虫から守るため隔離ができていないのだ。人間の場合は、内耳などが堅い骨などによってしっかりガードされており、中耳炎などにはかかるが聴覚神経がやられるなど殆どない。 それに対してイルカの場合、時には寄生虫の反乱のような異常発生によって、イルカの命とも言うべき耳をやられてしまう。耳をやられたイルカは餌を獲ることもできなくなり、極度の飢餓・脱水状態となり、泳ぐ力もうせ(イルカは24時間泳いでいないと沈んでしまう)、最後の憩いを求めて波静かな砂浜へ集団上陸を行う。 目次を参考に書く。 1 イルカが不思議な耳をもつ理由 2 耳で餌を捕るイルカ—エコーロケーション 3 驚異の耳の作り—耳は頭についていない 4 イルカの鳴き声と餌捕り用の探査音 5 イルカの耳は下顎にある 6 集団上陸イルカは耳が聞こえない イルカに興味のある人は、一度読んでみることをお薦めします。 (この本は中能登町カルチャーセンター飛翔内の鹿西図書館で借りてきた。) 最後に、本の裏に書かれてあった著者紹介を転記しておく。 森満保[モリミツタモツ] 1931年鹿児島県川内市に生まれる。白和幼稚園、平佐西尋常高等小学校入学・平佐西国民学校卒業、県立川内中学入学・川内高校卒業と、在学中に校名が2度も変わる激動の第2次世界大戦、絶望の敗戦、そして戦後の飢餓と大動乱の中で育った。1956年九州大学医学部卒業。1961年同大学院修了、医学博士取得。同年九大医学部助手・講師、1965〜68年ドイツ・ハンブルグ大学に留学、1972年九大助教授、1977年宮崎医科大学耳鼻咽喉科教授となる。1996年同大学長となり、2001年任期満了退官、現在は同大学名誉教授 。以前は人の難聴の新治療や手術法の研究、教育が本業で、集団上陸イルカの耳の研究は副業だったが、最近は使う時間数が逆になった。 |
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