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書評(平成18年09月19日)

『インフルエンザ大流行の謎』
(根路銘国昭著・NHKブックス)

 最近、こういう分野に非常に興味がある。猛威をふるうウイルスとか他の病原菌などの動向が非常に気になるのだ。素人がこういう事知っても、碌に役立たないと考えるかもしれないが、テレビなどの薄っぺらな知識で色々判断するより、じっくり本で読んだ方がいいと思うのだ。
 
 ニュースなどで、禄に知識もなく、いい加減な知識で、情報を判断し、出鱈目な解釈の噂話をすることなどは慎みたいと思っている。所詮素人で医者や学者のような知識は無理だが、出来るだけ判断の基となる知識は正確に仕入れておきたい。

 この本は、タイトルからわかるようにインフルエンザについて書かれている。著者は、元WHOインフルエンザ呼吸器ウイルス研究センター長、元国立感染症研究所呼吸器系ウイルス研究室室長であった方で、専門はウイルス生態学、ワクチン学とある。
 
 著者は専門用語を出来るだけ排するように心がけたようだが、やはり初めての人には多く専門用語が出てくると思うかもしれない。私も比較的こういった本を多く読んできた方だが、何度か用語を調べたりした。それでもやはりそいう配慮が無い本と比べると良い本だ。前の方の頁を観ながら、何度も用語の意味を確認しながら読むと、役に立つように思う。

 私は特に、インフルエンザの命名法の説明が良かったと思う。今まで、インフルエンザの型名を、新聞などで、非常にいい加減に聞いてきたように思う。
 例えば、 A・ブタ・アイオワ・15・30(H1N1) などと書いてあっても、これからは適当にみず、意味を思い出して情報を読むようにしたい。
 上記の型のところに書いてある最後の、H1N1は抗原型だが、これも最初のH1は血球凝集素(ヘマグルチニン)の抗原の型、N1はノイラミニターゼ(NA)の抗原の型、最初のAも型を現わすものでA型,B型,C型とあり、ウイルス粒子を構成するタンパク質のうち、M1蛋白とNP蛋白の抗原性の違いなどに基づくことを知った。とてもこんな数行では説明できないので、これを読んでいる人はチンプンカンプンだろうが、とにかくこれらの知識を得れば、こういう型名を聞いてもある程度のことが想像つくようになるのだ。

 インフルエンザの歴史で、スペインインフルエンザ(スペイン風邪)発生以来、インフルエンザウイルスが色々変異することにより、ワクチンなどで対応する人間との間でいたちごっこしてきた話も興味深い。またインフルエンザウイルスが、鳥からブタ、人へどのように伝染して、流行が起こるかなど興味が尽きない。

 最近はパンデミック(大流行)というような、人の命を多数奪うような脅威なインフルエンザというのはないが、危険が減ったというより今か今かと出番を待って待機しているというのが言いえている状態だと思った。血球凝集素の種類は、鳥からH1〜H15まで15種類採取されており、またノイラミターゼの種類も、N1〜N9までの9種類採取されているらしい。よってその組合せでできる種類は膨大である。それに対して、今までに人間が経験しているのはH1、H2、H3しかないのだ。NAもN1とN2しかない。

 鳥インフルエンザに罹病した人は、今のところ他の人間に感染したことはなく、鳥から直接人間に感染した例だけのようだが、このインフルエンザが人の中にはいり、変異して人に感染するインフルエンザになったとすると、パンデミックが起こる可能性が高いという。その時、スペインインフルエンザの時のような猛威を揮い、人口を減少させるほどのパンデミックが起こるかもしれない。本当に怖い話である。

 この本を読んでいると、やはり新しいウイルスの発生源は、アヒルなどの鳥やブタなどの家畜、人間が、一緒になって住んでいる人々が多くいる中国が大半のようだ。もうすぐ北京オリンピックだが、その時運悪く、新たな型のインフルエンザが発生してパンデミックが起こるということにならねば良いが。気になる。

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