このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

書評(平成18年09月20日)

『ペンギンの世界』(上田一生著・岩波新書)

 先日はイルカに関する本を読んだが、今度はペンギンである。私の好きな動物の一つである。
 ペンギンとは、皆さんもご存知の通り、海を潜り泳ぐことが出来る鳥である。

 私の家から車で30分ほどで「のとじま水族館」に行ける。一年に最低一回は行く。確かマゼランペンギンとフンボルトペンギンがいたはずだ。行った時はじっくりとペンギンたちを観察して楽しんでくる。私が好きな理由も、単純に可愛いというか愛嬌があるからだ。しかし野生のペンギンの生態は、この本を読んでもよくわかるが、苛酷な世界だ。 

 よく南極のペンギンの生態などがテレビにに映し出されるが、あれはこの本によれば、自然の苛酷な部分は惨いので見せていないようだ。本当の南極のペンギンのコロニーの雪の下には、ゴロゴロとペンギンの死体が重なって埋まっており、人間が歩くと、雪の下に血が滲み出し赤くなるという。この箇所などを読み、ペンギンの極寒生活の厳しさがよくわかった。

 またペンギンというと南極周辺の動物と勘違いしている人々もいるようだが、南極から赤道直下まで南半球の広い海域に棲息する鳥である。この本では、勿論、フンボルトペンギンのような暖かい海に棲息するペンギンについても述べている。 

 解剖学的な体の仕組みの説明の中で、羽などの保温機能や、脚部の対向流熱交換システムなどが出てきて興味深かった。ただペンギンの生物学的な研究は、まだ色々分かっていない点が多いらしい。餌をとる方法について説が色々あるようだが、今だによくわかっていないようだ。説の一つにイルカと同じようなエコーロケーションをしているのでは、というのもあるようだが、疑問が多いらしい。

 他にもペンギンが、昔本当に鳥として空を飛んでいたのか、とかペンギンの名の由来、ペンギンと人との接触の歴史、現在のペンギンの保護団体の活動なども書かれています。

 著者は、あとがきや略歴によると、ペンギン会議という団体の研究員で、数多くのペンギンに関する本を書いたり、翻訳しているようだ。この分野の専門家らしい。NHkのペンギンの取材にも何度か同行した事もあると書いてあった。私は知らないが有名なのかもしれない。
 ペンギンが好きな人には、格好な本ではないでしょうか。岩波新書のために、カラー写真が無いのがちょっと残念に思うかもしれませんが、それを十分補ってあまるだけの魅力でペンギンの世界を述べた本であると思います。

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