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書評(平成18年09月30日)

『ニュートリノ天体物理学入門
〜知られざる宇宙の姿を透視する〜』
(小柴昌俊著・講談社BLUEBACKS)

  著者は2002年に、あのノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんである。私は、以前にもこの人の本(『心に夢のタマゴを持とう(講談社文庫)』を紹介した。また他にも幾つか小柴さん自身が書いた記事・本など読んだこともある。

 小柴さんのノーベル賞受賞理由は天体物理学、特にニュートリノの検出に関する先駆的貢献によるもの。同年にあの田中耕一さんも受賞し、同時に2人の日本人の受賞ということで話題になったのは皆さんもご記憶のことだろう。

 さてこのニュートリノだが、難しい。私は科学雑誌「ニュートン」のファンで(定期購読はしていないが)、毎月お隣の町・中能登町鹿島図書館へ行って読んでおり、特にこの素粒子&天体物理学、分子生物学などの記事などは、じっくり読むようにしている。

 今までに何度もニュートリノの記事を読んできたが、はっきりいっても、いまだによく理解できていない。また反応の仕方や種類など色々あるうえに、まだ理論上のニュートリノも多く、頭の中で整理がついていない。「ニュートン」は科学雑誌では一番わかりやすく書いている方だと思うが、それでも完全には理解できていない。

 今回は小柴さん自身が書いたニュートリノの入門書に挑戦してみた。理解は半分くらいだろうか。
  小柴さんを、私は非常に尊敬しているが(嘘でなく本当です)、ただどうも、彼の本は、素人がわかるよう書こうという配慮はあまりないようだ(嫌味で書くのではありません)。
 今回の本は、中学生と大学生の二人の孫娘に読んでもらい分からないところを指摘してもらって、わかりやすく書き直したとあるが、孫娘も難しくて質問のしようがなかったのではと思いたくなった。彼の記述には、小難しくて説明するのは長くなり面倒くさいとか、無理だという意識あるのだろう。何の説明もなくて専門用語を用いて、「これこれこうだから、こうなる」と、説明の中抜けが多すぎるのではないか、と思うような記述の仕方ですましているようなところがある。

 まあ田中さんと違って、メーカーにいて、お客など、相手にわかるよう説明しようという訓練をしてきた方ではない。教える立場の時も、東大の優秀な生徒ばかり相手にしてきたから、仕方ないことだろう。それで小柴さんの業績の価値が下がる訳でもない。またそれだからこそ、研究に邁進できたと言えるかもしれない。

 半分くらいの理解だが、それでもチンプンカンプンの人と比べれば、今までの努力もあって数倍の事は理解できたと思うし、また著者が言いたい大略は理解できたと思う。
 今までも科学物は結構読んでいたのだが、昨年までは読んでもあまり採り上げなかった。今後もこういった関連の本はどんどん読んでいき、ここでも出来るだけ採り上げるようにしたいと考えていいる。  

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