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書評(平成18年12月09日)

『(公事宿事件書留帳)雨女』
(澤田ふじ子著・幻冬舎)

  『雨女』(澤田ふじ子著・幻冬舎)公事宿事件書留帳シリーズ第13作品

 収録作品は「牢屋敷炎上」、「京雪夜揃酬(きょうのゆきよそろいのむくい)」、「幼いほとけ」、「冥府への道」、「蟒(うわばみ)の夜」、「雨女」の6作品。このうち「冥府への道」と「蟒の夜」は、話の内容が続いており、考えようによっては前編と後編の関係ともいえる。

 まず巻頭の「牢屋敷炎上」から紹介。
 ある凩(こがらし)の吹く夜、姉小路神泉苑の近くで火事が発生。火は強風に煽られどんどん延焼。六角牢屋敷ま火の手が迫り、囚人を解き放つことになった。当時のお定めでは、お解き放ちの際、言い渡された起源までに戻れば、罪一等が減じられることになっていた。囚人の伝蔵は、お解き放ちの際、身寄りが無いので、牢屋敷に飛び火するのを防ぐ手伝いをしようと屋根にあがるが、牢番たちに邪険に当たられ追い払われる。

 あてもなく彷徨うが、彼の姿を見てお解き放ちされた囚人とわかると、人々は家に入って表戸を閉めたりした。そんな時、柳馬場通りで、幼い男女が諍(いさか)うのに出くわした。聞けば、母親が熱にうなされ、夫の名を呼びながら寝ているという。父親は大津に出稼ぎに行っており、父親を呼びに行くために、兄が妹を残して行きたいが、妹が心細く思い一人で留守を預かれないという。伝蔵は、妹と一緒に留守を守ることになるが・・・・

 第2話は「京雪夜揃酬」。古手問屋の笹屋の3代目の主の安次郎は、昔は打つ、飲む、買うと遊んだ時期もあったようだが、今ではその才覚で同業の中では京でも指折りに数えられる商人となっていた。ただ妻とは仲がうまくいっていなかった。店を大きくする契機となった大投機の際、妻の実家から多額の金を借りたため、利子を付けて返金はしたが、頭があがらなかった。今では遊びは控え、居酒屋へ飲みに行く程度だったが、それでも妻からは他所の女のもとに通っていると勘違いされたりしていた。

 ある日の朝、店を開けて家の前に出ると、野菜の入った籠が置かれてあった。不審に思って最初の頃は、手をつけずに腐るまでそのままにしていたが、その後も数日ごとに家の前に置かれた。食べてみると新鮮で美味しいものばかりだった。誰が持って来るのか突き止めようと、手代と小僧に見張らせたがわからなかった。ある日、暖かそうなドテラが届けられ、妻は安次郎の他所での女からの贈り物だと思い込み、離婚するといいだした。・・・・

 第3話は「幼いほとけ」。三条木屋町の料理屋「重阿弥」からの帰り道に、菊太郎と源十郎は、3人のならず者に尾行され、途中で襲われる。菊太郎は、脇差で突きかかってきた男を峰うちにすると、他のものは逃げた。菊太郎は、その者を担いで鯉屋まで戻ったが、こっそりと彼を追ってきた者がいたので、家に入った後、覗き窓から覗いてみると、それは何と7つくらいの男の子であった。・・・・・

 第4話は「冥府への道」。ある春の真夜中、室町三条の呉服問屋「富屋」に盗賊の村雲の松五郎一味が15人ほどで強盗に押し入り、主人や奉公人を多数殺して、5千八百両余りもの金を奪い、悠々と千両箱を担いで引き上げ消え去った。京の東西両奉行所は、大騒動となり、奉行所の全ての者を動員して探索に当たった。盗賊を逃がすまいと、京の7口全てに、警固の者が配され、菊太郎の異腹弟鐵蔵も長坂口に配された。

 そんな長坂口に、小汚い男が、筵に覆った古樽を大八車に載せ通ろうとした。調べると何と樽の中は座棺となっており、老いさらばえた老婆の死体があった。鐵蔵たちは、盗賊の仲間で、樽の下に盗まれているお金が隠されている可能性もあるとして、奉行所まで引っ張ていき調べるが、死体のほかには何も無い。男に事情を聞こうとするが、ただ畏れてばかりで答えようとしない。牢屋敷に居れ、拷問にかけてでも吐かせようとの奉行所の動きを知り、菊太郎は何か違和感を覚え、行動に出る。・・・・

 第5話は「蟒の夜」。菊太郎の進言で、京中の空屋敷を調べた奉行所の者達は、夷川通りに面した元・筆屋だった空き屋敷の井戸の中から5千両を見つけた。盗賊が隠したものに違いなく、菊太郎と福田林太郎は、その筆屋の向かい側の昆布屋「根津屋」に居候や手代として入り、盗賊が現れるの監視していた。そんなある日、店に手紙が届き開けてみると、娘を預かったとの誘拐しの内容だった。・・・・・・

 第6話は表題と同じ「雨女」。ある雨の日の夕暮れ、菊太郎とも馴染みの泥鰌売りをしている独身の岩三郎が、長屋に帰って来て、井戸の釣瓶を手繰っていると、木戸門の板庇の下でびしょ濡れの女が、喘ぎながら崩れ落ちた。岩三郎は、彼女を抱えて彼の部屋に入れた。・・・・・

 今回は、ちょっと前振りの粗筋を詳しく書きすぎたかな?? 
 今までのシリーズと比較しても、人情味に溢れた作品が多かったように思えます。

 このコーナーは「源さんの書評」というタイトルだが、こんな下手糞な文章なので、最近ではさすがに「書評」と言うには恥ずかしくなってきました。コーナーのタイトルも「本の紹介」程度のものに変えようかとも考えています。
 こんな文章でも、興味が沸いた方、澤田さんのファンの方など、今回も絶対お薦めですよ。 

(この本は七尾市立中央図書館(ミナクル3F)から借りてきた本です)

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