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『新分子生物学入門』 (丸山工作著・講談社BLUE BACKS) |
この本は、今年4月に読んだ
『分子生物学入門』(丸山工作著・講談社BLUE BACKS)
の改訂版である。比較してみると、同じ図や、文章があまり変わっていないところもあるが、全体的にみるとガラッと変わったという感じだ。 改定前の本は1985年に書かれたものだが、その後分子生物学は、飛躍的に進歩した。いまではヒトゲノムのDNAの全塩基配列も読み終えている(2000年6月)。この本はそんな最新の成果も沢山盛り込まれている。頁数も少し増えている。でも難しさはない。改定前よりわかりやすくなった感じがする。 参考に、目次というか各章のタイトルを書いておく。1.クローン生物、2.男と女、3.人間のゲノム、4.タンパク質とは、5.DNAとは、6.DNAのできかたと読まれ方、7.遺伝子暗号、8.タンパク質をつくる、9.オペロンの仕組み、10.体ができる、11.ウイルスの分子生物学、12.遺伝子工学、13.発がん遺伝子、14.移動する遺伝子、15.免疫遺伝子の秘密、16.遺伝子の進化、17.ヒトはいかに進化したか、18.バイオテクノロジーの現在と未来、巻末・分子生物学を理解するためのキーワード、勉学案内(参考図書) 各章のタイトル名も改定前とほとんど同じであるが、それでも今回の改定本は、より分子生物学の基礎知識ガイドブックとでもいうような感じになっている。どこから読んでもいいような、かなりガイドブックを意識した改定ではなかろうか。私は、今後もガイドブック代わりに使うつもりでいる。 今回は、今年4月の改定前の本を読んだ時と比べると、自分自身かなり知識が増えているので、興味を持った箇所は前回とちょっと違う。改定前の本の内容をかなり忘れ、読んだはずの内容にまた感心していたという部分もある。とにかく、ちょっと面白く感じた箇所を幾つか少尉介してみたい。 たとえば、男と女を決めるのは、かならずしも性染色体ではないという話。性染色体がXXであっても、男であるものがいるという。またY染色体は、生きるのに必要なく、性染色体はX染色体1本の先天性異常の女性も、2500人に一人の割合でいるという(ただし不妊だという)。 また物理学者で著述家でもあり、あのビッグバンの提唱者で有名なジョージ・ガモフが、アミノ酸一個にDNAの塩基配列が対応しているのではないかと1966年に予言したという。ガモフは20世紀最大の預言者かもしれないと思った。 またウイルスの起源に関する言及も興味深かった。ウイルスは、生命の原始的なものではなく、細菌がもっとも退化して寄生生活に適応した特殊なものという考えや、ウイルスは、自然に起こる遺伝子組み換えで機能する転移するDNA(トランスポゾン)に由来するものかもしれないという考えなども面白かった。 またアミノ酸と対応する3塩基配列をコドンといいますが、これは今まで全ての生物に共通の暗号のようなものだと思っていたが、これがミトコンドリアでは違うというのだ。例えばミトコンドリアでは、AGAとAGGを普通のアルギニンの暗号としてではなく、停止信号と解読する。AUAは普通イソロイシンと読むが、ミトコンドリアは、メチオニンと読むという。またAUAとAUUは、AUGのかわりに開始信号となっているという。簡単にというか、卑近な例えで言うなら、漢字で「手紙」は日本では、便り文の意味であるが、中国ではトイレットペーパーの意味だというのと似ている。ちょっと卑近過ぎたかな?? 動物や人の進化も、分子生物学の方面から研究がなされ、大分変わってきているという話なども面白かった。 とにかく非常に簡潔な本です。分子生物学に関する何らかの事柄に関して、ちょっと調べたい場合にも便利な、入門者には最適な本ではないでしょうか。 |
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