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書評(平成19年01月13日)

『まず「書いてみる」生活』(鷲田小彌太著・祥伝社)

   副題まで含めて書くと『まず「書いてみる」生活—「読書」だけではもったいない』
 (鷲田小彌太っ著・祥伝社(祥伝社新書))である。

 この本を読んでみると、定年やそれをあと十年ほどで迎える人たちを主な対象として書いた本のようである。定年になって時間ができると、何か執筆してみたいと衝動にかられる人が多いとのことだが、いざ何か書いてみようと思うと、難しい。何か書くための技術がいるとわかる。
 本書は書くための技術、心構え、ちょっとしたコツが書かれた奥義書と書かれている。

 文章を書くには、確かに練習がいると思う。私も実は生きているうちに何か1冊くらいは書いてみたいという気がある。
 このブログやHPの製作なども、言ってみればその練習のようなものだ。文章は本当に上手くなりたいと思う(その割には、ここのブログの本の紹介はかなり推敲がいい加減だが、今後少しずつ改善していきたいと思っている)。そう思っている割には、時々昔書いた文章を見て恥ずかしくなり、直せる時は、こっそりと修正したりしている。 <(^^;;

 他には、新聞や雑誌への投稿も時々しながら、文章を書く練習をしている。字数が限られた中で書くのは、この著者も言っているが、本当に文章を書く練習になる。

 特に新聞への投稿などは、せいぜい八百字か千字内で言いたいことを述べねばならない。書きたい事がある時は、本当に字数の少なさを恨みたくなる。私の場合は、一度パソコンで思いつくまま殴り書きのように書いてみて、一度読み直し、さらに何度も字句などを減らしたり付け足したりと推敲、誤字脱字も訂正して、送信するという事が多い。

 この著者は、文章を書くのにあたって、パソコンがいかに便利かを解いている。私と考えが非常に近いのがわかった。ただしこの著者は、新聞への投稿で、自分の書いたものが載ったからといって自分の文章が上手いと思うな、とも忠告している。
 
 私は、新聞には5,6回投稿しているが、1度を除いて(あるテロの脅威の可能性について指摘した文章だったので、それを実行されぬよう没にした可能性が高い)、他は皆採用された。
 この著者は、新聞社というものは、読者に投稿させているが、実は新聞社の主旨にあったものしか載せず、うまく投稿者を利用しているのだと言っている。ただしそれを逆手にとって、新聞社や雑誌ごとに、その主旨にあった文章を書いてみて、自分の文章力の実力を測る方法もあることも述べている。

 著者は言います。「書くことを趣味とする生活は、人生の悦びを教えてくれ、充実した後半生を約束してくれます。書く生活は、ただ余生を送る生活とは違います。ハードな作業であり、常に緊張を強いられます。だからこそ、何かを書き上げたときの喜びは大きく、自分自身の力強い支えになるのです。 」
 
 私は、受験浪人の時、駿台予備学校のかなり上位のコースにいた。このコースからは東大など最難関の大学に進む者が多数おり、私からみても天才秀才と思えるような逸材が溢れていた。自分でどうしてこのようなクラスに入れたのか不思議な位だったので、そういう天才秀才と自分を見比べ、自分は生涯コツコツと何かを積み上げ、彼らに多少とも比肩できるようになるしかないと思ったのを覚えている。
 
 それで大学に入っても、他の生徒とは違い、かなり真面目に多数の本を読んで勉強したつもりだし、それ以後もずっと読書など勉強を欠かさぬよう続けてきた。しかし、この本の副題にあるように最近読書だけでは、もったいないと思うようになってきた。何か本格的なものを書きたい。

 別に作家になって印税で食べていけるくらい稼ぐなどということは考えていない。この著者も言うようにそんなに甘くないし、日本で印税で食っていける作家もごく少数だということは知っている。自分にベストセラー作家になるほどの才能があるなどとは思っていない。

 それでも「書いてみる」生活は、著者が言うように一向に儲からず赤字であっても、充実した生き方ができるように思う。自分の存在が自分を表現するものではなく、書いてこそ初めて自分が表現され、書かれたものが自分の分身なのである。一度書かれて公になったものは自分とは独立した分身で一人歩きする。賛辞もあるかもしれないが、批判や責任を伴うからそれは怖い気もするが、著者も言うように、冷静に対応すれば、逆に非常に喜ばしいことかもしれない。

 著者は、ともかく早い時期から書く練習を行い、時期が来たら、ともかく書いてみようといっている。書くための材料を集めて、下準備に完璧を期しているといつまで経っても書けないという。私もそんな気がする。
 
 この本を読みながら、自分と同じように考える先人がいて、なおかつその人はかなりの著書をものにしているので、何度も頷いて読み終えた。そしてこの著者を1つの目標として、よーーし頑張ろうという気になった源さんでありました。

(この本は中能登町鹿島図書館から借りてきた本です)

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