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書評(平成19年01月19日)

『図解 ジャンボジェット機を楽しむ
−最新ハイテク機ダッシュ400のすべて
(講談社カルチャーブックス)

 (執筆者は、柳田 邦男、前田荘六、原田秀樹、弓野克彦、村田和彦、山村明好、畠中真実ほか )

 今から10年以上前に書かれた本である。ジャンボジェット機については大して詳しい訳でもない私には関係ない事だ。ジャンボについてとにかく色々知りたかったので、図書館から借りてきて読んでみた。この本は、通称ジャンボジェットこと、ボーイング747シリーズの400型を中心に説明されている。この本では、後継機種として将来500型が作られるようなことも書かれているが、インターネットで調べてみると、いまだ500型はないらしい。つまりボーイング747-400がいまだ最新ということのようだ。

 この400型は、同じジャンボシリーズの機種とはいえ、かなりハイテク化された事がよくわかる。デジタル時代を受けて、今まで計器が沢山コックピットを覆ったタイプから、42個の計器が6枚のCRT画面に集約された。ジャイロも機械式から、リング・レーザー・ジャイロに変更された。その他多くの装備品にマイクロコンピューターが駆使されているそうだ。エンジンも主要部分は電子化が進み、コンピューターによってコントロールされ、かなり効率よくなったようだ。

 その他、主翼の先に上向きにちょっと折り曲げられたウイングレットと呼ばれる部分が、主翼の先でおこる翼端渦を拡散し抵抗を弱くし、燃料消費量を約3%よくしたとか、主翼付け根のフィレット(膨らんだ整形覆いの部分)の機体の揚力を高めることに役立った事なども書かれている。また水平尾翼に燃料タンクを設けることによって、燃料(ケロシンという灯油の一種)の最大搭載量が215.5klも増え、航続距離も飛躍的に伸びたそうだ。

 ライン整備のマイクロコンピューター化では、例えばCMS(Central Maintenance System)が装備され、飛行機自体が各種システムの監視及び装備品の自己診断ができるようになり、的確かつ迅速な整備処理ができるようになった。他にもACARS(Aircraft Communication Addressing and Reporting System)により、航空機の不具合状況などを地上に電波で送信する機能をもったマシーンを搭載することにより、飛行機中に発生した不具合情報がリアルタイムで地上で把握でき、到着後速やかに整備処理を実施することが可能になったそうだ。

 最近のようなテクノジャンボは、上記のようなシステム装備を搭載のための、1つの装備品が、複数の装備品とデータ授受を実施しており、単一システムだけ考えて整備するのでなく、不具合発生時の詳細な関連システムの情報を収集する必要性が高まったとのこと。
 マイクロ・コンピューター化により不具合化を特定するに当たり、ソフトウェアの散在が重要になった。しかしソフトウェアはどこのメーカーも秘密で公開しないので、従来以上に航空会社と航空機メーカーとの一体となった総合整備が必要となったそうだ。

 このように兎に角ハイテク化は凄く進んだようだ。今では大型旅客機ののオートパイロット機能は当り前の然の装備となったが、この本では全日空の前田荘六という機長がいいことを書いています。
 安全性の確保のために手順化(マニュアル化といってもいいだろう)は、手順化だけでは事故を回避できないということになりかねない、なぜなら「手順化」は「人を自動化」してしまうから、と指摘している。パブロフの犬のようにある条件に条件反射するように、1つの方法を自動的に選ぶということであろう。二人のパイロットが、同時に戦略あるいは戦術に偏らないようにすることが重要だと指摘する。

 戦略とは「先」のことを考えて危機に陥らないように方策を立てること。一方戦術とは、「今」のことに目を向けて「業務」を手落ちなく実施することだ。レッセフェールの安全性機能をを有効に活かすかどうかも、戦術と戦術の適度な兼ね合いでの実施にかかっている。
 パイロットは、自分自身を良く知って、腕と考え方がしっかりしていることが大事で、腕は「科学観」に考え方は「哲学観」に左右される、というのもなるほどと思った。

 この本は、2時間ほどで読める手軽な本だが、単なるガイドブックではないと思う。いろんな職種の方も参考になるのではないだろうか。マン・マシン関係のほか、マニュアルというものに対する考え方、整備などのあり方など。例えば火力発電所の整備マンの方は、飛行機整備ほどエンジンの定期点検細かくやっているのだろうか。航空機のメンテを参考に、見直すこともできるのではないだろうか。

 私は、こういう本が好きで実はかなりよく読む。数年前までこういう本は、あまり紹介してこなかったが、今後はどんどん紹介していこうと思う。
 
(これは、中能登町鹿島図書館から借りてきた本です)

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